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今年の試合は面白くなった?!新ルール導入後7日間で確認できたMLBが想定した通りの変化とは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ピッチクロック導入で大幅に試合時間が短縮されている。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLBの狙い通りの効果をもたらしている新ルール】

 すでに本欄でも報告しているように、MLBは今シーズンから導入される新ルールをすべてのオープン戦で適用し、試合を実施している。

 全チームがオープン戦に突入した2月25日から1週間が経過する中、新ルールは試合時間を簡素化し、より活発な試合展開にしたいというMLBが期待したとおりの効果をもたらすとともに、どうやらファンの支持も得られているようだ。

 とえりあえず、ここまでの各種データを示しながら現状を報告してみたい。

【ピッチクロックにより平均試合時間は2時間38分に】

 まずピッチクロックに関してだが、確実に試合時間の短縮に繋がっている。

 MLBは昨年9月の新ルールの説明記者会見で、ピッチクロックを試験導入したマイナーリーグのデータを示し、2021年の平均試合時間は3時間4分だったのに対し、ピッチクロックを導入した2022年は2時間38分に短縮できたと報告している。

 そこで3月3日までに実施された全110試合(3月1日に行われたレンジャーズ対ドジャース戦とパドレス対レンジャーズ戦は天候不良のため7回コールド試合になり対象外)の平均試合時間を確認してみたところ、MLBが示したデータとまったく同じ2時間38分だった。

 ちなみにメジャーリーグにおける昨シーズン公式戦の平均試合時間は3時間6分だったので、まさにMLBが想定した通りに推移していることが明らかになった。

 さらに平均試合時間を日別でチェックしてみたところ(2月24日は2試合だけだったので省略)、2月26日以降からわずかながら減少傾向にあるのが確認できた。これは、選手たちが徐々にピッチクロックに適応し始めていると考えていいのではないだろうか(別表参照)。

(筆者作成)
(筆者作成)

【最短時間は2時間4分に対し最長時間は3時間16分】

 またここまでの最短試合時間は、2月27日に実施されたダイヤモンドバックス対カブス戦の2時間4分で、最長試合時間は、3月1日に行われたレッズ対アスレチックス戦の3時間16分となっている。

 ピッチクロックの下では、両チーム入り乱れての激しい乱打戦にならない限り3時間を超えることはなく、全110試合中11試合に止まっている。つまり9割の試合が3時間未満で決着しているのだ。

 ただしオープン戦は同点の場合でも9回で終了するルールなので、レギュラーシーズンに入れば平均試合時間が多少伸びる可能性はある。それでもオープン戦の実施状況を見る限り、大幅な時間短縮は確定的だ。

【多くのファンがピッチクロックを支持している?】

 ピッチクロックに関しては、2月25日のブレーブス対レッドソックス戦でピッチクロック違反により三振を宣告され、そのまま試合が終了するというハプニングが起こっている。日本でも報じられているので、ご存知の方もおられるだろう。

 ただ選手たちは前述通り、徐々にピッチクロックに適応しているようで、違反者数は確実に減少している。MLB関連のデータを専門に発信している「Codify」のツイートによれば、30試合スパン(最初だけ35試合)で1試合当たりの平均違反者数を見ると、1.97→1.47→1.40と推移しているという。

 またピッチクロックに対するファンの評判も、まずまずと考えて良さそうだ。スポーツ専門サイト「The Score」のトラビス・ソーチク記者がTwitter上でアンケート調査を実施他ところ、4543人の投票者のうち8割以上がピッチクロック導入を肯定的に捉えている。

【牽制制限で盗塁実行数と成功率も大幅に上昇】

 さらに牽制球の制限とベースサイズの拡大で、オープン戦での盗塁を狙う場面(以下、盗塁実行数)も大幅に増えている。こちらもまさにMLBの想定通りだ。

 昨年のオープン戦における1試合当たりの盗塁実行数は1.53だったのに対し、今年はここまで2.38に上昇しており、ほぼ1.5倍に増えている。

 それに伴い盗塁成功率も上昇しており、昨年のオープン戦が73.0%だったのに対し、今年は80.5%にアップしている。

 ここまでの傾向を確認する限り、MLBの新ルール導入は、MLBが目指した方向で試合を変化させている。後はMLBが期待するように、ファンが新たな試合スタイルを受け入れるかどうかだ。

 今後はファンの動向にも注目していきたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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