アニメファンでなくとも楽しめる?:この秋注目のアニメ映画「空の青さを知る人よ」とは
オリジナルアニメ映画「空の青さを知る人よ」が、先週10月11日に公開されました。
「なつぞら」の山田天陽役で話題になった吉沢亮氏がアニメ声優に初挑戦し、「名探偵コナン から紅の恋歌」にもゲスト出演した女優の吉岡里帆氏が今度はメインヒロインとして出演、さらに中高生を中心に幅広い支持を集めるシンガーソングライターあいみょん氏が主題歌を務める本作は、アニメファン以外からも多くの注目を集めています。
そんな本作は、一体どのような作品で、果たして普段はあまりアニメをみないという人でも楽しめる作品なのでしょうか。
※核心的なネタバレはありませんが、気になる方はご注意ください。
「空の青さを知る人よ」とは
埼玉県秩父市を舞台とした「秩父三部作」アニメの三本目にあたる本作は、周りを山に囲まれた郊外の町を舞台に様々な人間模様が交錯する、切なくも瑞々しい群像劇です。
三部作ではありますが、「尾道三部作」と同様に、三本はそれぞれ独立した物語になっているため、これ以前の作品を観たことがなくても十分に楽しめる内容となっています。
メインキャラは、キービジュアルにも描かれている男女、31歳と17歳の姉妹(右下・左上)と、かつて夢を叶えるために町から出て行った姉の同級生であり元恋人(左下)、そして時を超えてやってきた18歳当時の姿をした姉の元恋人(右上)の4人です。
4人と書きましたが、そのうち2人は31歳と18歳の姿をした同一人物(左下・右上)となります。
時を超えてやってきた過去の自分と現在の自分が同時に存在する世界と聞くと、「君の名は。」以降特に多くなった”時間SF”的な要素も含んだ映画かなと、少し身構えてしまう人もいるかもしれません。
しかし二人が同時に存在することは確かに重要ではあるものの、「それは何故?」といったことを小難しく考えなくとも、本作を楽しむうえで支障はないのでご安心ください。
アニメファンでなくとも楽しめる?
それでも、普段あまりアニメをみないという人にとっては、いきなり映画館に行くにはハードルが高く感じるかもしれません。
しかしそんな人でも、理屈を抜きに楽しめる本作の魅力に、生々しい登場人物たちの姿があります。
人生のままならなさや不満を、生まれた場所や環境、家族といった自分以外の所為にしてしまったり、夢半ばでくすぶっていることの保身に、諦めて達観しているふりをしたり、でもそんな自分が格好悪いということを何より自覚して苦しんでいたり。他のアニメどころか実写の作品でもなかなか描かれない、しかし多くの人が身に覚えを感じてしまうであろうリアルで等身大な葛藤に悩む登場人物たちの姿は、もはや普段アニメをみるみないにかかわらず、強く共感し、本作に感情移入できる魅力であると思います。
生々しいと聞くと、負のイメージもあるかもしれませんが、そんなともすればグロテスクにも映ってしまいそうな人間の生々しさを描きながらも、しっかりとエンターテインメントとして楽しめる後味のよい作品になっているのは、これまで本作を含めた秩父三部作で様々な人間模様を描いてきたクリエイター陣「超平和バスターズ」の手腕あってのことだと思います。
本作の魅力が琴線に触れた人は、それをきっかけに、過去作である「あの花」こと「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」や「ここさけ」こと「心が叫びたがってるんだ。」を視聴してみるのもいいのではないでしょうか。