世界的なポピュリズムの流れは後退し、新たな局面に移行か
11日のフランスの国民議会(下院)選挙の1回目の投票の結果は、マクロン大統領の新党「共和国前進」グループが全議席の約7割に当たる400議席を超える勢いとなっているようである。
このフランス国民議会選挙は5年に一度実施され、大統領選の翌月に毎回行われている。577議席全議席を1選挙区1人選出の小選挙区制で改選する。1回目投票で過半数を得た候補者がいない場合、得票率12.5%以上を獲得した候補者が2回目投票に進むことになる(日経新聞電子版の記事より)。
極右、ルペン党首の国民戦線(FN)は1~5議席と伸び悩んでおり、5月のフランス大統領選挙でマクロンと争ったルペン氏の勢いは急速に後退している。
11日にはイタリアの約1000の地方自治体で首長を選ぶ地方選の第1回投票が行われた。ベッペ・グリッロ氏率いる反ユーロ政党「五つ星運動」の候補は、ジェノアやパレルモ、パルマ、ベローナなどで低迷し、25日に予定される上位2人による決選投票に残れなかったようである(ブルームバーグの記事より)。
英国は昨年6月23日に行われた国民投票でEU離脱を選択した。このブレグジットが「大衆迎合主義」と訳されるポピュリズムの流れと言えるのかはさておき、自国優先主義、アンチグローバルという流れのひとつの象徴的な出来事と言えた。
昨年11月8日に投票が行われた米大統領選挙でのトランプ氏の勝利がその流れを加速させることとなる。
自国優先主義は欧州では反EUとなり、反イスラムは反移民ともなり、これらを極右政党が掲げ、ポピュリズムと呼ばれた。この流れがユーロ圏にどれだけ及ぶのかが注目された。
この流れの行方をみる上で注目されたのが、今年3月15日のオランダの議会下院の選挙であった。ルッテ首相が率いる中道右派の与党「自由民主党」が8議席減らすものの32議席を獲得し、第1党の座を維持した。これを見る限り欧州でのポピュリズムの流れ、つまり反ユーロの流れの勢いは懸念されたほど大きくはならなかった。
それがフランス大統領選挙のマクロン氏勝利と今回のフランス国民議会選挙の結果でより鮮明となった。イタリアについても、地方選の結果を見る限り、ポピュリズムの流れが後退しつつあることを示すものとなる。
6月8日の英国の総選挙では、メイ首相の保守党が議席数を減らし過半数割れとなり、ここで打って出て政権基盤を固めようとのもくろみは崩れ去った。これも自国優先主義の流れに疑問を抱く国民も多いことを示したものではなかろうか。
米国では次から次と問題が生じ、トランプ政権に対する期待はすでに懸念に変わりつつある。トランプ政権は地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」を脱退する方針を打ち出しているが、これが国際的な批判を浴びている。トランプ氏は政権を立て直せるのか、いずれ大きく躓く懸念もある。
自国優先主義、ポピュリズムの流れの勢いは明らかに後退しつつある。これはある意味、リスクの後退ともいえるが、その後始末がこれから起きることも予想される。それが米国や英国の政治の行方にも影響してくる可能性がある。どのような展開となるのかは予想しづらいものの、新たな変化が訪れる可能性も意識しておいたほうが良いのではなかろうか。当然ながら、これが世界の金融市場にも大きな影響を与える可能性がある。