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佳子さまが醤油アイスの味に興味津々 倉吉で垣間見えた「女の子」の素顔 

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
倉吉を訪問された佳子さま(提供・杉原圓さん)

■11月の秋篠宮家 その中で注目したい存在

 今月は、立皇嗣の礼、秋篠宮さまのお誕生日(11月30日)、そして眞子さまがご結婚についてお気持ちを発表されるなど、秋篠宮家のニュースが相次いでいる。

 何かと注目度が高まる秋篠宮ご一家だが、その中でも若い世代から支持されて変わらぬ存在感を放っているのが、次女の佳子さまだ。

 早いもので佳子さまが成年皇族になられて、もうじき6年になる。さまざまな公務で触れ合った人びとに聞いてみたところ、佳子さまの知られざる素顔が浮かび上がってきた。

■佳子さま 地方でのひとつの出会い

 皇室の方々は地方公務に赴いた折、その土地に暮らす人びとの声に、耳を傾けるように努めてこられた。

 平成28年、第2回全国高校生手話パフォーマンス甲子園に出席するため、鳥取県を訪れた佳子さまは、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている、倉吉白壁土蔵群へ足を運ばれた。

 その時に案内したのが、倉吉町並み保存会の元会長、杉原圓(まろし)さん(当時、78歳)だった。

 杉原さんに佳子さまの第一印象を伺うと……

「とっても素敵なお嬢様でね、言葉遣いも丁寧で、こちらのほうが恐縮しましたよ。『よく倉吉にお越しになりました』と申し上げると、佳子さまがニコッと笑ってくださってねぇ」

 当日は、鳥取県知事や市長など地方の重鎮たちが、佳子さまの周りをズラリと囲んでいた。そして少し離れたところから、町の人たちが佳子さまを一目見ようと取り囲み、大変な人垣ができていたという。

 杉原さん自身は、ずっと神奈川県横浜市で会社員をしていたが、69歳の時に妻の実家がある鳥取県倉吉市へ移住。町内の人と交流する中で、杉原さんはその実直な人柄を評価され、町の要職を頼まれるようになった。

 佳子さまが訪れた時には、倉吉街並み保存会の会長として、情緒あふれる古い町並みをご案内するという役割を担っていたが、この思いがけない大役にずっと緊張していたという。

 この時、佳子さまは21歳、杉原さんは78歳。年の差、実に57歳も離れており、まるでおじいちゃんとお孫さんのような雰囲気。

 大人たちの中で、笑顔を絶やさずにご自分の立場を果そうとする佳子さまのご様子に、杉原さんはできるだけこの地を楽しんでいただけるようにしたいと思ったという。

■女の子としての素顔が分かる 佳子さまの会話

 杉原さんが案内している時、佳子さまがひとりの女の子としての素顔を見せられた、印象的な会話があった。

印象的な会話1 「このお人形は?」

 倉吉市の伝統工芸、張り子で作った人形である、はこた人形のお店の前を通った時、佳子さまが近くで見てみたいと関心を示された。

 はこた人形は、230年以上前から伝わる厄除けのお守りで、張り子の人形は全国的にも珍しく、山陰地方では倉吉でしか作られていない。

 お店の中で、人形をご覧になった佳子さまは、

「このお人形は、ここで作っているんですか?」

 と驚いていらっしゃった。

 というのも、前の晩に泊まられたホテルに、はこた人形が飾られていたのだという。

 佳子さまは幼い頃から手芸がお好きだったので、一体一体丹精込めて手作りされた愛らしい人形のことが気になっておられたのだろう。20代の女の子らしい一面が垣間見える。

印象的な会話2 「アイスクリームの味は?」

 明治10年に創業した老舗お醤油屋さんの前で、杉原さんが「このお醤油屋さんではアイスクリームを販売しています」と説明すると、佳子さまはこんな質問をされた。

「それはどんなお味がするのですか?」

 杉原さんが「甘くて、醤油の香りがするアイスクリームなんですよ」と説明したところ、佳子さまは興味津々なご様子で、その味を想像されているようだった。

 この日、残念ながら佳子さまは召し上がる機会がなかったのだが、後で鳥取県の平井知事が秋篠宮邸に醤油アイスクリームをお送りしたという。

■佳子さまのご訪問が 地元の人びとの希望に

 筆者が取材に行った時、杉原さんから「コーヒーを飲もう」と誘われて、倉吉白壁土蔵群の裏通りを入ったところにある、レトロな喫茶店に入った。

 そこにいたのは、90歳のママさん。出されたコーヒーは、コクと深みがあり、その美味しさは驚くほどだった。

 「厳選されたコーヒー豆をたっぷり使っていますね」と言うと、ママさんはわが意を得たりとばかりに、「コーヒー豆はケチってませんよ」と満面の笑みを浮かべて話してくれた。

 地元を愛するママさんにとっても、佳子さまが町を訪問された日のことは、忘れられない出来事だったという。

 日本にはさまざまな地域で古き良き文化を守り続ける人たちがおり、佳子さまをはじめ皇室の方々のご訪問は、人びとの誇りとなっていつまでも語り継がれているようだ。

(2020年11月16日発売『佳子さまの素顔』河出書房新社より加筆・修正のうえ転載)

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。西武文理大学非常勤講師。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)などがある。

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