北朝鮮で児童の死亡率が減少も「出産拒否」で人口相殺か
北朝鮮における5歳未満の児童死亡率が、近年になり大幅に減少していることがわかった。
国連児童基金(ユニセフ)と世界保健機関(WHO)などが、8日に発表した「2015年児童死亡率動態報告書」によると、2015年における北朝鮮の5歳未満の児童死亡率の推定値は、1千人あたり25人で、1990年の43人、2000年の60人に比べ大幅に減った。
また、1歳未満の乳児死亡率と新生児死亡率も、顕著な減少傾向を示している。
こうした事実は、大変喜ばしいことである。
ちなみに、2000年の児童死亡率の数値が高いのは、90年代半ばからの「苦難の行軍」と呼ばれた食糧難の影響だろう。この時期、多くは300万人、少なくとも数十万人とも言われる餓死者が発生。生き延びた子供たちも発育に大きく影響を受けており、「アジアの強国」として知られた北朝鮮スポーツにもかなりの影響を与えたと言われている。
もっとも、児童死亡率が改善しているにも関わらず、北朝鮮の人口は大きくは伸びるどころか、いずれ減少に転じる可能性が高い。
国連経済社会局(UNDESA)が7月29日に発表した「世界人口展望2015年度版」よると、北朝鮮の人口は現在2520万人で当面の間は増加を続けるが、遠からず減少に転じると予想されている。
理由は、少子高齢化にある。総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)が7%を超えると「高齢化社会」となるが、北朝鮮はすでに12.5%に達している。参考までに、日本は23%で「超高齢社会」となっている。
発展途上国では一般的に、合計特殊出生率が高い数値を示しており、国民の平均年齢は高いまま保たれている。ところが、北朝鮮では閉鎖的な社会での子育てをきらい、人々が子供をたくさん持とうとしないのだ。
北朝鮮の少子高齢化に対しては金正恩氏も危機感を持ち、国家や党の幹部たちに「子作りに励め」とハッパをかけてきた。
しかし、いくら正恩氏が声高に叫んでも、肝心の女性らが「出産拒否」で抵抗しており、状況はなかなか変わらないだろう。
北朝鮮の少子高齢化が解消されるには、大幅な改革開放が必須であると考えられる。