『ONE PIECE』ゾロの「三刀流」がどれほど難しいか、摸造刀で実験してみた!
『ONE PIECE』のコミックス第100巻が発売された。カバーのイラストは、笑顔のルフィの手前に、ゾロとサンジ。この3人が揃うと、それだけで嬉しくなりますなあ。
作中では、ルフィに止めを刺そうとするカイドウに、ゾロが「そいつはウチの船長だ!! まずはこっちの頭を先に潰して貰おうか!!」と立ちはだかる。相変わらず熱いゾロ! 筆者はこれを読みながら、第1巻のゾロ初登場のシーンを思い出した。
それは、第3話。悪名高い賞金稼ぎのロロノア・ゾロは、海軍に捕まって広場で磔にされ、公開処刑を待つばかりだ。
幼い女の子が、ゾロにおにぎりを渡そうとしていると、海軍大佐の息子がそれをグチャグチャに踏みにじって、彼女を追い出した。ゾロは、一部始終を見ていたルフィに、泥にまみれたおにぎりを自分に食わせろと言う。そしてバリッバリッと砂音を立てながら全部食べると、女の子に伝えてくれるよう頼んだ。「『うまかった』『ごちそうさまでした』…ってよ」と。
なんてスバラシイ伝言! このシーンで、筆者はゾロにむんずと心をつかまれ、以来ずっと応援しております。
そこで今回は、『ONE PIECE』100巻をお祝いし、ゾロの「三刀流」について空想科学的に考察してみたい。
◆摸造刀をくわえてみた!
ロロノア・ゾロといえば、三刀流。両手に2本の刀を握り、口に1本をくわえて戦う。
ゾロが三刀流になったのには、理由がある。子どもの頃は二刀流だったが、自分がどうしても勝てなかった幼馴染のくいなが不慮の事故で命を落としたため、その刀をもらい受け、3本の刀を使うことにしたのだ。じーん…。
いちいち胸を打たれてしまうが、刀を口にくわえて戦うなど、実際にできるのだろうか?
そこで筆者は、日本刀の通信販売で「模造刀」を購入した。銘は正宗、送料込み1万850円である。
届いた刀を箱から取り出した瞬間、筆者はゾロになりきった。模造刀とはいえ、充分かっこいい。敵の5人や10人、蹴散らせてしまえそうだ。
ところが、鞘を払って構えると、想像したよりずっと重い。
量ると、980gもある。プロ野球選手のバットが平均850gというから、それより重いのだ。
こんなモノを、ゾロは口にくわえていたのか。そのうえ、敵を斬ったり、敵の剣を受け止めたり、くわえたまま会話したり……。
うーむ、ゾロになりきっていたはずなのに、実験する前から腰が引けてきた。
が、おそるおそる、ゾロのように刀を横向きにして、柄を歯で噛む。そして、刀を支えていた手を放すと……、あだだだだだだっ、歯が折れるぅ!
あわてて口から離したが、まだ歯茎がズキズキする。くわえたまま会話するなんて、とても無理。振り回すなど、考えただけで恐ろしい。
――以上、実験終わり。1万850円を投じた実験は、1秒ももちませんでした~。
◆ゾロはモーレツに歯が丈夫!
構えているだけでも苦しい状況で、戦っていたゾロ。恐るべき剣士である。
いちばんダメージが大きいのは、口の刀で敵の刀を受けたときだろう。想像してもらいたい。バットを口にくわえ、それを別のバットでぶっ叩かれるという事態を!
プロ野球選手の打撃は1tもの衝撃だという。さらにテコの原理で、歯にかかる衝撃は増大する。筆者の歯列の幅を計ると4cmで、敵の刀を受ける点から口までの距離は70cmほどだろう。その場合、歯が受ける衝撃は、距離の比に反比例して、なんと17.5t! それほどの衝撃を受けたら、歯など1本も残るまい。
総入れ歯になりたくなかったら、ゾロは両手の刀を巧みに操って、なんとしても口の刀に敵の刀が当たるのだけは防がねば……って、いや、それは本末転倒か。何のために刀をくわえているのかわからないもんね。
実際に、ゾロはこの刀をどう使っているのだろう?
初めて三刀流を披露したシーンを確認すると、ゾロは口の刀で敵の刀を同時に2本も受け止めている。
これは本当にすごい。2本の刀が当たった瞬間、ゾロの歯は17.5tの2倍、すなわち35tの衝撃を受けたはずなのだから。
それで平然としていたからには、ゾロの噛む力は35tを超えたはずだ。これほどの咬筋力があれば、厚さ9cmの鉄板が食いちぎれる! ゾロは、噛みつきで戦っても充分強いのだ。
◆三刀流はキケンすぎる!
口でくわえる3本目の刀が両手の2刀に加わったとき、攻撃力はどれほど増すのだろうか。
筆者は歯の安全を考え、今度は軽い木の棒で試してみた。
口の棒はゾロに倣って右方向に伸びるようにくわえ、両手にも1本ずつ棒を持って、振り回してみる。
すると、うわっ、ちょっと油断すると、右腕が口にくわえた棒に当たってしまう。これが刀だったら、切れているところだ。
そうならないように気をつけて、再び振り回すと……あうっ! 右手の棒で、口の棒を叩いてしまった。軽い木の棒とはいえ、じいい~んと歯茎に響く。もしこれが真剣だったら……。
これらの自滅を避けるためには、右手の刀は、口の刀と平行に振るしかないだろう。首の構造上、口の刀はほぼ水平にしか振れない。
ということは、右手と口の刀は水平に動かすしかなく、縦に動かすことができるのは、左手の1本のみ。これでは、きわめて単調な攻撃しかできないのでは……?
――などと思うのは筆者がど素人だからで、ゾロはモノが違った。
「三刀流剣技 其ノ壱 虎狩り」は、両手の刀を口にくわえた刀の後ろまで振りかぶり、垂直に振り下ろす技。三刀流には当然、縦の動きもあるのだ。
しかし「虎狩り」にしても、両腕をくわえた刀の刃の直前まで持ってくるわけで、素人が使うにはあまりに危険だ。
もし初心者が三刀流を使うなら、3本目の刀は足につけたほうがいいのではないだろうか。
刃を上に向けて、柄を太股に縛りつける。これなら、自分の刀で自分を斬ることもないし、膝蹴りの要領で股を上げれば、敵の股間を下から斬り裂くといった攻撃も可能だろう。
足なら左右に2本つけられるから、おおっ、四刀流にすることも可能だ。
――というわけで、もしあなたが三刀流を目指しているなら、筆者は四刀流をおススメします。三刀流ができるのは、たぶん研鑽を積んだゾロだけです。