米国国防総省ジョイントAIセンターの中将「縦割りの組織文化とスピードが米軍のAI活用における脆弱性」
アメリカ国防総省のジョイントAIセンター(JAIC:Joint Artificial Intelligence Center)のディレクターのマイケル・ゴーエン中将は2021年3月に開催されたPotomac Officers Club AI Summitに登壇。アメリカの軍事におけるAI(人工知能)について語った。
「縦割りの組織文化がアメリカ軍の脆弱性」
ゴーエン氏は「我々の一番の脅威は陳腐化してしまうことです。ペンタゴンの駐車場まで歩いている間にiPhoneをチェックすれば、欲しいサービスはどんなものでも手に入れることができます。様々なデータによって、指先だけで個人の嗜好に合わせたサービスや商品、情報を見つけることができます。でもアメリカの国防総省のネットワークはそうではありません。私たちがiPhoneで何でも好きな情報やサービスが簡単に入手できるような状態でなければ、国防としてのAI技術の競争力を失ってしまいます」と語った。
またゴーエン氏は中国軍のAI技術活用を事例にあげて「中国は2030年までにAI技術において世界のリーダーを目指しています。中国との軍事競争に勝つためには、国防総省は、あらゆるデータにアクセスしてAI技術を活用してもっと組織もデータも統合されていかないといけません。しかし現時点で国防総省の内部は、組織の文化的な違いから縦割りで必要で重要なデータが統合されていません。そこが私たちアメリカ国防総省の脆弱な部分です。戦争で戦うために必要なものとAI技術の開発に必要なのはデータです。そのため国防総省では各ユニットでデータ戦略を担当するCDO(chief data officer)のポジションを設置して、各組織からのデータへの容易なアクセスを可能にしています」と課題とその対応も指摘していた。
「スピード力のあるところに負けてしまいます」
ゴーエン氏は「最新のAI技術について私たちが予見することができても、敵に予見されてはいけない。AI技術の発展とAIの軍事への活用によって、将来の戦争の在り方が変わることは経済の在り方も変わることです」とAI技術の軍民両用の重要性も訴えていた。さらに「AI技術は軍事においても陸海空などあらゆるドメインでのコアな技術になります。技術力の発展による優位性は、大国の優位を失うこともあります。小さい集団や国家が大国を破ることもありえます。ゆっくりのんびりと開発やオペレーションをしているようでは、スピード力のあるところに負けてしまいます。今の国防総省のスピードでは不十分です」と国防総省のAI技術開発のスピードの重要性も語っていた。
さらに「AI技術を活用してインフラを構築することによって重要なのは、あらゆるデータから点と点を結んでいき、コマンドコントロールに活かして、アメリカの統合軍がAI技術を活かした正確な判断を下すことができるようになることです」と語っていた。