外国人との意思疎通の手段の実情をさぐる(2020年公開版)
日本に在住している外国人には日本語が分からない・あまり理解していない人が少なくない。日本の人々は外国人に対してどのような手段で意思疎通を図っているのだろうか。文化庁が2020年9月に発表した令和元年度版の「国語に関する世論調査」(※)の結果概要から確認する。
次に示すのは外国人と接する機会(挨拶程度や、店で買い物をする際のやり取りなども含む)がある・時々あると回答した調査対象母集団のうちの28.9%に対し、その外国人とどのような意思の疎通を図っているかについて、複数回答で答えてもらったもの。外国人に対する具体的な設定は無い。
近所に住んでいる、行先の店で働いている、仕事でやり取りがあるなど、外国人と接する機会は人それぞれなのであくまでも全体的な傾向としてとの形となるが、もっとも多い回答値だったのは「身振り手振りを交えて話す」で51.3%。次いで「英語などの外国語を使って話す」が44.7%、「やさしい日本語で分かりやすく話す」が43.7%。大きく値を落として「特に気を使うことなく日本語で話す」が23.4%。例えばコンビニで買い物をする際にレジの人が外国人だった場合、多くは「やさしい日本語で分かりやすく話す」か「特に気を使うことなく日本語で話す」だろう。
これを年齢階層別に再計算したのが次以降のグラフ。まずは話すのがメインの選択肢。
「接することはあるが話すことはない」は少数だが70歳以上ではやや高い値となる。コンビニなどで遭遇しても言葉を交わさずにやり取りするパターンだろうか。また「特に気を使うことなく日本語で話す」も年が上になるに連れて高い値を示しており、相手の外国人への配慮まで気が回らない、あるいは配慮しなくてもよいような状況での機会が多いことがうかがえる。しかし「やさしい日本語で分かりやすく話す」も年が上になると値が高くなり、配慮をする人も多くなるようだ(40代以降はほぼ同じ値だが)。
他方、「英語などの外国語を使って話す」は年が若い人ほど高い値が出ている。外国語を使わないと意思疎通ができないような場面に遭遇し、逃げずに対応することが多いのだろう。意思疎通といっても簡単な挨拶程度かもしれないが。
続いて話すのがメインではない選択肢。
「筆談」はぶれが大きいが年齢階層別の傾向は特に見られず少数派。「スマホなどの翻訳ツールを使う」は16~19歳では3割強が行っている。最近は便利で高性能な翻訳ツールも多数出ているので、気軽に使う人も多いのだろう。50代までは2割台を維持するが、60代以降は急速に値が落ちる。デジタルツールを使いこなせているか否かの問題と思われる。
「身振り手振りを交えて話す」も16~19歳の値が一番高く63.9%。30代まで値は漸減し、40代で再び上がり、後は落ちていく。30代はイレギュラーなのかもしれない。「スマホなどの翻訳ツールを使う」同様に若年層ほどよく行うと判断してよさそうだ。
外国人との意思疎通は相手と自分の状況によって可能な方法が変わってくる。あくまでも臨機応変に、無理をせずに、そしてお互いが不快にならないようにということだろう。もっともこれは相手が外国人に限った話ではないのだが。
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※国語に関する世論調査
令和元年度版は16歳以上の男女に対して個別面接調査方式で行われたもので、調査の有効回答数は1994人。有効回答の属性別構成比は非公開。
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