半導体不況からの脱出、11月には確実に前年比プラスになる!
昨年7月からマイナス成長に変わって以来、半導体不況になったといわれているが、基本的には作りすぎによる在庫調整にすぎない。その前は半導体不足が長い間続き、一部の流通チャネルやユーザーが二重、三重に発注していたために在庫の山が積み上がっていた。半導体不況といっても在庫調整の期間が1年近く続いただけにすぎない。過去の半導体産業の歴史から見ると大したことではない(図1)。
最もひどかった時期はITバブルといわれた2000年だった。2000年をピークに谷が丸3年も続き、2004年にようやく2000年の販売額を超えた。回復に4年間もかかった。それに比べると今回の不況はもう回復が見えている。すでに半導体製品も製造装置も連続して前期比を超えてきており、前年比でプラスになる時期さえ見えている。ズバリ11月だ。
なぜか。これはデータの読み方だけで言える。今回の不況のどん底が2022年11月から始まっているからだ。図2に示すように今回の不況では2021年12月をピークに徐々に販売額は下がってきたが、2022年6月までは前年比でプラスだった。7月から10月まではわずかなマイナス成長になり、前年との差では20~30億ドルのマイナスにすぎなかった。ところが、11月になると2023年5月まで100億ドル(約1.4兆円)規模のマイナスがずっと続いてきた。つまり底を這いつくばっていた。
ところが、6月、7月には前年と比べマイナスは再び30億ドルと急に減少したのである。年成長率とは常に1年前との比較である。1年前の11月はマイナス100億ドルとガクンと下がった。今年の回復傾向から見て、このマイナス100億ドルになったほどの差は、今年後半でもあり得ない。在庫調整が進み、またエッジAIやコンピュータAI、クラウドAI、さらに生成AIとけん引役が登場してきたこともある。これらを考えると昨年の11月ほど決してひどくはならない。むしろ前年との比でみるとプラスに必ずなる。
このことはある意味、数字のマジックかもしれない。成長率はあくまでも前年比でしか見ていないからだ。もちろん、前回2021年12月のピーク値まで回復するにはもう少し時間はかかるだろう。このため前年よりプラスになったからといっても景況感が大きく変わるという実感はまだ伴わないだろう。しかし、回復するのは時間の問題であって、24年には前回のピーク値を上回る月が出てくるだろう、と信じている。
基本的には半導体は成長産業であり、不況の底が来ても、実は前のサイクルのピークよりは必ず上にきている(図1)。つまりシリコンサイクルといっても正弦波ではなく、上向きの直線に沿ったサインカーブを描いている。すなわち、底が来ても、直前のピークではなくその前のピーク値よりも確実に上なのだ。だから成長曲線に乗ったシリコンサイクルになっている。これが半導体産業の最大の特長である。