WTAのルール変更で、スコートから伸びる健康的な美脚は、過去のものになるのか。
女子テニス協会(WTA)が2019年シーズンの競技規則を一部変更することを明らかにした。
主な変更は2つある。
ひとつめは、妊娠・出産を経てツアーに復帰する選手に配慮した規則になったことだ。
これまでも、WTAでは、怪我などの医学的理由、妊娠、出産でツアーから離脱していた選手が復帰するときには、スペシャル・ランキングを適用していた。新しい規則下では、怪我や妊娠、出産から復帰する選手に配慮して、スペシャル・ランキングの適用回数や期間が延長される。
これまでは、スペシャル・ランキングが適用されるのは8大会までだったが、12大会まで使えるようになった。また、子どもの誕生から3年後まで、スペシャル・ランキングが適用できることになった。養子を迎える時にも、2年間、スペシャル・ランキングの制度が使えることなどが盛り込まれている。
出産後にツアー復帰したセリーナ・ウィリアムズ(米国)と、ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)の存在が、規則変更のきっかけとなったようだ。
もうひとつの規則変更は、テニスのスコート、ショーツ、ドレスの着用なしに、圧縮機能のあるレギンズや太ももの長さのショーツを身に着けることが認められるようになったことだ。
今年の全仏オープンで、セリーナ・ウィリアムズが「キャットスーツ」と呼ばれる体全体をぴったりと覆う黒いウェアを着てプレーした。セリーナは出産後に血栓症になったため、圧縮機能のあるウェアを身に着けることによって、血栓症の再発を防ごうとしたのだ。
しかし、対戦相手はこのウェアが競技規則に則っているのか疑問の声をあげ、フランステニス連盟のベルナール・ジウディセリ会長が「選手は試合と場所に敬意を払わなければならない」と発言。こういった反対意見が出て、議論になっても、セリーナのウェアが規則違反なのかどうかは、はっきりしていなかった。だが、今回の規則変更で、WTAの試合では「キャットスーツ」スタイルは規則として認められたことになる。
トップ選手のウェアは機能的か、勝利に貢献するか、が重要だ。テニスのスコートが今のような短い丈になったのも、ロングスカートでは動きにくいという理由からだったという。もしも、圧縮機能のあるレギンズが最良のパフォーマンスをするのに役立つことが科学的に証明されれば、一気にテニスウェアのトレンドは変わるかもしれない。
そうなれば、短いスコートから伸びる健康的な美脚という画は、過去のものになるだろう。一方で、従来からのスタイルが好パフォーマンスにつながると考える選手もいるかもしれない。それとも、観客なしでは成り立たないプロスポーツであるがゆえに、スペクテイターを意識して、美脚を披露するスタイルは続くのだろうか。