スズキからVツイン・カフェレーサー登場。「SV650X」が狙う先にあるものとは!?
SV650がベースのネオレトロ仕様
スズキからネオレトロな外観にVツインエンジンを搭載した新型ロードスポーツモデル「SV650X ABS」(以下SV650X)が登場した。
ベースは一昨年にデビューした「SV650 ABS」(以下SV650)で、水冷V型2気筒645ccのエンジンをスチール製トラスフレームに搭載する車体構成は共通としながら、外観を今流行りのカフェレーサースタイルで仕上げたものだ。
▲SV650X
具体的なベースモデルとの違いは、ヘッドライトカウルやセパレートハンドル、タックロールシートを新たに装備するなど、よりカスタムテイストを強調している点。渋く抑えたグレーメタリックのカラーと燃料タンクの「SUZUKI」の文字などにレトロ感が漂う。
ロケットカウル風デザインにこだわり
一見地味に見えるデザインだが、よく見るとディテールにスズキのこだわりが見て取れる点にも注目したい。
丸型マルチリフレクターヘッドライトを囲むようにセットされたヘッドライトカウルは、サイドパネルとつながった一体感の中で往年のビンテージレーサーを彷彿させるロケットカウルに見える視覚的なギミックになっている。
また、シートもライダー側に昔懐かしいタックロールを採用し、リヤ側とは色合いや素材の質感もくっきりと分けることでシングルシート風に仕上げている。それでいて、変にシートカウルに丸みをつけてクラシック風に見せるなどの小細工をしていないところも潔い。
スズキ伝統スタイルへのオマージュも
個人的には90年代に異色の直4ネイキッドとして一時代を築いたバンディット250/400シリーズにだぶるところもあって、特にロケットカウルにセパレートハンドルを採用した「バンディット400リミテッド」を思い出す。
▲バンディット400リミテッド
エンジンの造形を際立たせるスチールトラスフレームや、ネイキッドであってもモノショックを採用するなど、既成概念にとらわれない自由で斬新な発想にも共通点を感じる。
その意味ではSV650Xはスズキの伝統的スタイルの再現ということもでき、スズキ流のネオレトロへのオマージュともとれるわけだ。
熟成されたVツインの魅力
さらにエンジンは国産モデルでは今や希少となったVツインである。
ベースモデルの新型SV650のメディア向け試乗会でも感じたが、開発コンセプトに「原点回帰」を掲げているとおりバイク本来の操る楽しさを求めたモデルであった。
その根幹にあるのがVストローム650やグラディウス650などにも採用されている熟成された水冷V型2気筒エンジンである。Vツインらしい歯切れのよい鼓動感と滑らかな回転フィールを併せ持っているのが特徴で、軽量スリムな車体と粘りのある低速トルクにより、街乗りからワインディングまでそれこそ自由自在に乗りこなすことができた。
▲SV650
加えて発進時に回転数を自動的に少し上げてトルクを補ってくれるローRPMアシスト機構や、ワンプッシュで始動が可能なスズキイージースタートシステムなどの良心的かつ実用的な装備も付いている。
そして、さらに「X」ではヘッドライトカウルによる若干の空力向上とセパハンによる適度な前傾スタイルによって高速走行も楽になっているはずだ。
研ぎ澄まされたコンセプト
ちなみにSV650Xの「X」とは「Extra(エクストラ)」を意味していて、ベースモデルのSV650に特別なエッセンスを盛り込んだということだ。
その前身は2016年の東京・大阪モーターサイクルショーに参考出展された「SV650 RALLY CONCEPT」で、当時のコンセプトはカフェレーサーとオンロードラリーの融合ということで、70年代の4輪ターマックラリー車を彷彿させる大きな2灯フォグランプが印象的だった。
▲SV650 RALLY CONCEPT
それが2017東京モーターショーではコンパクトなLEDタイプとなり、今回の市販化に際してフォグランプはオプション設定となっている。
そうした経緯から私自身、発表当初は「X」はオンとオフのクロスオーバーを意味するものと勝手に思い込んでいたが、今回の製品化デビューでクリアになった。おそらくはユーザーの声なども反映したものと思われるが、「ネオレトロ&カフェレーサー」にテーマを絞ったことで、かえってブレがなくなりすっきりとした。つまりコンセプト自体も研ぎ澄まされたわけだ。
リッターVツインスポーツの可能性は!?
SV650に続く「X」の投入により、スズキもいよいよネオレトロ路線に踏み込んできたわけだが、そこで気になるのはスケールアップ版の可能性。そう、スズキにはVストローム1000やかつてのTL1000S/R、SV1000シリーズに搭載されていた、これまた定評のある1000ccの水冷Vツインエンジンが控えている。これを放っておく手はないだろう。
世界的な温故知新ブームの波に乗せて、個人的にはリッターVツイン搭載の国産ネオレトロ&カフェレーサーをぜひ見てみたい。それが現実となるか否かは、SV650Xの成功いかんにかかっているだろう。