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日経平均が前回過去最高値を付けた1989年と現在で物価の面であった意外な共通点

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 2月22日の日経平均株価は1989年12月29日につけた過去最高値を上回ってきた。日経平均が前回過去最高値を付けた1989年の消費者物価指数をみると物価の面で現在と意外な共通点があった。

 1980年代のいわゆるバブルは、金融緩和や円売り介入などから資金が余剰となり、それは設備投資には向かわず、株や土地に向い典型的な資産インフレを引き起こしたとされる。

 そこで1980年代当時の消費者物価指数(除く生鮮)を確認してみたところ、1986年から1988年にかけての消費者物価指数は1986年が前年比0.4%、1987年が同0.4%、1988年が0.6%となっており、物価は低迷していたことがわかる。

下記「消費者物価指数」の11ページより

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

 だからこそ日銀は政策金利を1986年から1987年2月に向けて引き下げ、当時とすれば2.5%という低金利に設定し、それを1989年5月まで据え置いたのである。

 ところが1989年に入り、4月からの消費税導入の影響が加わり、数値上では4月が前年比2.5%となるなど2%を超えてきたのである。結局、1989年の消費者物価指数(除く生鮮)は前年比2.4%の上昇となった。ただし、これは消費税の影響が当然ながら大きかった。いわはせ見かけ上の2%台だったといえる。

 注目すべきは翌年の1990年の消費者物価指数(除く生鮮)となる。この年の4月以降、つまり消費増税の影響がなくなっても前年比2%を超す上昇が継続していたのである。つまり本格的な物価上昇が起きていた。1990年の消費者物価指数(除く生鮮)は前年比2.7%の上昇となっていたのである。

 参考までに直近の消費税の引き上げがあった2014年4月の1年後の2015年の消費者物価は3月が前年比2.2%だったのに対し、4月は0.3%増に落ち込んでいた。これは単純に消費税の影響分がなくなったためであった。

 そして最近の動きをみると、2022年の消費者物価指数(除く生鮮)が前年比2.3%となり、その1年後も勢いは継続し、2023年の消費者物価指数(除く生鮮)は前年比3.1%となっていた。原材料価格の高騰などにより一時的な物価上昇と見込んでいた向きにとっては予想外の事態となっていたのである。

 つまり1989年当時と現在では、消費者物価指数(除く生鮮)が予想以上の高止まりとなっていたのである。あくまで数値の上であり、別途要因があった可能性もある(もう少し詳細に調べる必要もあるか)。

 当時の日銀の金融政策と現在の金融政策が、結果として異例の緩和から脱する、脱しようとしているなど似通っている面も含め、興味深いといえよう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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