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【英ブレグジット】メイ首相、「EU離脱協定案可決後に辞任」と発言 総選挙の可能性も?

小林恭子ジャーナリスト
21日、EU首脳会議に出席したメイ首相(中央)(No. 10 Flickr )

 欧州連合(EU)からの離脱交渉を巡って、下院議員からの支持を取り付けようと苦心してきたメイ首相は、27日、与党・保守党平議員との会合の中で、EUと英政府が昨年11月に合意した離脱協定案が可決されたら、辞任すると述べたという。英メディアが報じた。

 

 首相は辞任時期を特定しなかったものの、BBCのローラ・クエンスバーグ記者によれば、5月頃になる見込みだ。

 英国は2016年6月、EUから離脱するかあるいは残留加盟するかの国民投票を行い、離脱派が残留派を僅差で上回り、離脱が決まった。

 これを受けて残留運動を率いていたキャメロン首相が辞任し、引き継いだのがメイ首相だ。

 「ブレグジット(英国のEUからの離脱)を何としてもやり遂げる」と宣言した首相は、2017年1月、「EUの関税同盟からも単一市場からも出る」とし、離脱強硬派の姿勢を示した。

 同年3月、離脱を規定するEUの基本条約第50条が発動され、EUとの2年間の交渉期間が始まった。今年3月29日、離脱が自動的に実現するはずだった(21日のEU首脳会議で、延長が決定された)。

 しかし、どうやって離脱するかで交渉が難航し、昨年11月、ようやくEUと英政府側は「離脱協定案」に合意したものの、これを下院で承認する段階になって、緊急措置(「バックストップ」)を巡って混乱状態となった。

 EUと英国は離脱を2段階に分けて交渉することになっており、現在は第1段階。ここで離脱条件を決める。第2段階は長期的な通商関係について決めてゆく。

 バックストップとは、第2段階の交渉で長期的な通商関係について合意がなかった場合でも、英領北アイルランドとその地続きとなるアイルランド共和国との間に厳格な国境検査を敷かないための方策だ。これを避けるために、一時的に英国をEUの関税同盟に入れ、北アイルランドはさらに単一市場の一部の規則を守る。EUと英国の両方の合意があって抜け出ることができる。

 保守党内の欧州懐疑派はこの措置が「永遠に続く可能性」を問題視し、ほかの英国の地域と別格に扱われることを嫌う北アイルランドの地方政党「統一民主党」(DUP)も反対した。

 政府の協定案は今年1月と3月中旬に、それぞれ大差で否決された。

 3度目の採決を狙うメイ首相は、保守党議員の取り込みに必死だ。

 27日、平議員の組織「1922年委員会」に出席したメイ首相は、政府の離脱協定案への支持を求め、もし可決できるのであれば、「保守党と英国のために、(以前に約束していた時期よりも)早く辞任することも、辞さない」と述べたという。首相は、これまで、次の総選挙(2022年予定)前に辞任すると述べていた。

 しかし、現状では3度目の採決が実現するかどうかも不明だ。というのも、下院議長が「一度否決された動議は同じ会期内に再度採決にかけられない」を繰り返し、けんせいをかけているからだ。

 また、たとえ採決に出たとしても賛成票が足りないと見られている。メイ政権が頼みにしていたDUP党首は、この日、政府案を「支持しない」と表明した。

 同日夜、下院は離脱条件についての採決(8提案)を行い、いずれも過半数に達しなかった。来週月曜日(4月1日)以降、どの提案を再度採決するかの絞り込みをする予定だ。

 複数の提案で採決する方式を発案したオリバー・レトウィン議員(保守党)は、「今日、過半数が取れる提案が出るとは思っていなかった。議論を続けよう」と呼びかけた。

 今後の予定を今、予想することは難しい。しかし、下院が行き詰まりの中で苦しむ中、解散・総選挙が一歩近づいたのではないか。

 キャメロン前首相の側近だったクレイグ・オリバ―氏は、「総選挙の可能性が見えてきた」と語っている(BBCラジオ4「ワールド・トゥナイト」にて)。

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊『なぜBBCだけが伝えられるのか 民意、戦争、王室からジャニーズまで』(光文社新書)、既刊中公新書ラクレ『英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱』。本連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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