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大谷翔平の新エージェントが選手会と接触しようとするワケ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
エージェントの登場で新ポスティング制度交渉が新たな展開に(写真:ロイター/アフロ)

 大谷翔平選手と契約を結んだことが明らかになったばかりのCAAスポーツのネズ・バレロ氏が早くも動き始めようとしている。MLB公式サイトが現地8日に報じたところでは、近日中に選手会とミーティングを行う予定だという。

 同サイトでも解説しているのだが、まだ大谷選手がMLBと契約していない段階でバレロ氏が選手会と話し合いを行う理由は、未だ合意に達していない新ポスティング制度について相談するためだ。現在同制度について交渉に当たっているのはMLBとNPBであり、選手会は部外者と思われるかもしれないが、実は最終的に新制度が有効になるには選手会の承認が必要になってくるのだ。

 すでに米メディアから新制度の交渉状況について報じられているように、10月31日に旧制度が失効していながら新制度が合意できていないのは、選手会の影響だと言われている。MLBとNPBの間では新制度が大筋合意しているのだが、大谷選手に関しては新制度はなく旧制度を適用させるという特例措置を設けることに関して、新労使協定では大谷選手よりNPB球団(日本ハム)の方が巨額の金額を手にできてしまうことに選手会が不服を申し立てているためだ。

 今回予定されているミーティングでは、バレロ氏から選手会に大谷選手の意向をしっかり伝えることが目的になるはずだ。その内容まで把握しているわけではないが、「大谷選手は早くMLBに挑戦したいと考えている。どんなかたちでもいいから早期に新ポスティング制度が成立してほしい」的なものになると思われる。そうなれば選手会はあくまで選手の希望を優先するしかないので、選手会はこれまでの主張を取り下げることになるだろう。

 またミーティングの内容は選手会を通じて新制度の交渉を担当しているMLB関係者に伝達される予定らしいので、大谷選手の意向とそれに伴う選手会の見解も彼らに届けられることになる。そうなれば新制度はすぐにでも合意できる環境が整うわけだ。

 元々選手会も大谷選手の意向を確認したいこともあり、早い時期に彼が米国人エージェントと契約することを期待していたようだ。まさにバレロ氏の登場で、懸案事項が一気に解決することになりそうだ。大谷選手の夢が着実に現実に近づこうとしている。

 ところで大谷選手に関してAP通信も興味深い記事を配信している。このオフに大谷選手がMLB挑戦を表明した場合に、新労使協定下で各チームが支払える契約金額を紹介している。以下、高額順に列記する。

1.レンジャーズ : 353万5000ドル(約4億円)

2.ヤンキース : 325万ドル(約3億7000万円)

3.ツインズ : 324万5000ドル(約3億7000万円)

4.パイレーツ : 226万6750ドル(約2億6000万円)

5.マーリンズ : 174万ドル(約2億円)

6.マリナーズ : 157万500ドル(約1億8000万円)

7.フィリーズ : 90万ドル(約1億円)

8.ブルワーズ : 76万5000ドル(約8700万円)

9.ダイヤモンドバックス : 73万1250ドル(約8300万円)

10.オリオールズ : 66万ドル(約7500万円)

11.レッドソックス : 46万2000ドル(約5200万円)

12.レイズ : 44万500ドル(約5000万円)

*上記以外のチームはすでにプール金を使い切っており、30万ドル(約3400万円)しか支払えない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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