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老後の生活費、どうする? 独身世帯でますます減る公的年金への信頼

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 稼ぎが減るであろう老後に備え、どのような備えや目算を立てているか……

公的年金・就業収入・私的年金が支え

老後の生活を支えるお金をどのように手配するか。その内情は人それぞれ。将来に備えて、あるいは考えている生活費の収入源について、その実態を金融広報中央委員会の「知るぽると」が2014年11月に発表した「家計の金融行動に関する世論調査」から探る。

ズバリ老後の生活費をどのような収入源で補うか、その考えを尋ねた結果が次のグラフ。単身・二人以上世帯双方ともトップは「公的年金」となっている。

↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答)(2014年)
↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答)(2014年)

二人以上世帯の方が「公的年金」への依存度が高い。これは受給額が大きい厚生年金を対象としているのが主な理由。また夫婦二人分ならば、単純計算で世帯当たりの受給額が大きくなり、やりくりもしやすくなる。

第二位には「就業収入」が。こちらは単身世帯の方が6.7%ポイント高い。配偶者の就業収入に頼ることも出来ず、「公的年金」の不足分は自らの手で稼ぐ次第。一方第三位の「企業・個人年金、保険金」は老後を迎える前の備えを利用するものだが、やはり雇用事例や老後に至るまでの金銭的な余裕の比較で、二人以上世帯の方が高い値を見せる。実際、金融資産を持たない世帯も、夫婦世帯は3割強だが、単身世帯は4割近くに達している。

「公的年金」がメインで、「就業収入」「企業・個人年金など」が補完、余裕がある人は「金融資産の取り崩し」も併用。一人身ほど自らの手で稼ぐ傾向が強いなど、世帯構成によるお金周り事情の違いがすけて見えてくる。

単身世帯では公的年金への傾注度が減る一方

これらの動向をデータが取得可能な2007年以降の推移で見たのが次のグラフ。

↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答)(単身世帯)
↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答)(単身世帯)
↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答)(二人以上世帯)
↑ 老後の生活費収入源(3つまでの複数回答)(二人以上世帯)

・単身世帯では「企業・個人年金、保険金」への傾注が増え、「公的年金」が減っている。「就業収入」は高い水準を維持

→「公的年金」への期待低下、それを補完するために自ら働こうとする意志の高レベルでの維持

・二人以上世帯では「就業収入」「企業・個人年金、保険金」への傾注が増加

→収入の減退不安、それを補完するために自ら働こうという意志の高まり

・2011年以降の「金融資産取崩し」回答者急減

・2013年における「企業・個人年金、保険金」「金融資産取崩し」の下落と、単身世帯における「その他」の急増化。

2011年に発生した「金融資産取崩し」への回答者の急減は原因を特定できないが、単身・二人以上双方の世帯で生じていることから、景気悪化、そして震災による被害の回復のために、老後に備えていた金融資産の漸次取り崩しを行い、将来まで維持できそうにないとの考えが急速に広まった可能性が高い。

2013年に限ればこの数年間続いてきた傾向のいくつかが、変化を示す兆しが見受けられる。単身世帯における「企業・個人年金、保険金」の減少化への動きは、そこまで備えとして蓄積する余裕が無くなってきたことの表れか、あるいは非正規雇用者の増大で企業年金制度を適用できない人が増えたことによるものなのか。今データだけでは判断が難しい。

老後の生活を支える収入源としては、「公的年金」に依存期待をしながらも、単身・二人以上世帯それぞれが各個の事情や思惑に従い、対策を練り実行していることがうかがえる。特に二人以上世帯で「就業収入」への傾注が継続して高まりを示す状況は、現時点でも大きな社会問題化している失業率・雇用市場との関係も深いことから、今後の動きを見据える必要がある。少なくとも現状では、高齢者の労働への参加意欲は、さらに上昇しそうである。

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※2015.02.16. 記事タイトルのミスを修正しました。ご指摘ありがとうございました。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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