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梅雨どきの心身不調「6月病」、気をつけたいサインと予防対策は

海原純子博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授
写真はイメージです。(写真:イメージマート)

毎年この時期になると「6月病」という言葉が企業人事総務の方たちの間でささやかれるようです。よく知られている5月病と共に、医学的に見ると「適応障害」の状態をさします。適応障害とは、環境の変化などのストレスを受けてから3か月以内に起こる心身の不調を言います。気分の落ち込みやイライラだけでなく、不眠や食欲不振、めまいや耳鳴り、頭痛、胃腸障害など様々な体の症状を起こすこともあります。

今年の6月病の特徴は

今年の特徴としては、コロナ禍明けで生活のパターンが変化し勤務の体制が変わるなど環境の変化が大きく、加えて気温の日内変動が大きく大雨などの影響もあり自律神経が不安定になることで、体調不良を訴える方の声を聞くことが増えています。

新入社員が6月で退職することになったと困惑している人事の方や、昨年まではリモートを併用できたが今年は毎日出社となり、大雨の日に通機関の混乱もあって疲労しモチベーションが低下したという方もいました。またこれまでかなり忙しい業務をこなしてきた方がこの時期適応できずに体調を崩すようなこともあります。過剰適応してきた方が気象の変化に適応できないという場合もあります。一方、ここ数年は体調が安定していたのに、台風が近づいてきた日から喘息が起こり出勤できなくなったということもあります。低気圧による自律神経障害と気温変化に対する不適応が要因でしょう。今年の6月病は、通常の適応障害対策に加え気象変化に対する対策も併せて行った方がいいと思われます。まず6月病の症状についてまとめてみます。

6月病の症状

気分のサイン

・楽しいと思えることがない

・イライラする

・やる気が出なくて何をするのもおっくう

・集中できない

・おこりっぽくなる

体調のサイン

・睡眠の質の低下

・食欲の低下や下痢など胃腸症状

・朝起きられない

・めまいや耳鳴り

・頭痛や肩こり

行動のサイン

・動作がのろくなり出かけるのに時間がかかる

・忘れ物やミスが多い

・外出がおっくう

こうした症状、特に気分の変化が起こり睡眠の質や食欲が低下して2週間以上継続するような場合は適応障害の可能性が高く、心療内科などを受診する必要もあります。そうなる前に予防対策を立てておくことが必要です。

今年の6月病対策

すでにお話ししたように不安定な気候対策も必要です。というのは6月病いわゆる適応障害の要因はストレスによる自律神経の乱れがかかわるのですが、気象の変化もまた自律神経に大きな影響を与えるからです。気象の変化による不調を起こしやすい方は内耳の気圧を感じるセンサーが敏感に反応しすぎて自律神経のバランスを崩すとされているので、気象情報を確認して台風や低気圧が近づいているような場合は特に対策を十分にとる必要があるでしょう。

1.自律神経調整の呼吸活用

吸う息の2倍の長さで息を吐く呼吸からスタートする鼻呼吸で交感神経をリラックスさせることで自律神経のバランスを整えます。吸う息の長さの2倍からスタートし数を数えながら吐く息の長さを3倍、4倍ほどの長さにしていくと呼吸が深くなりリラックスします。特に鼻からの呼吸は有効ですが難しい方は吸う息だけ鼻からにしてもいいでしょう。

2.太陽の活用

朝太陽の光を浴びると14~16時間後に脳の松果体から睡眠を誘導するメラトニンが分泌されます。自然な睡眠のリズムを作るためにも朝窓を開け太陽を浴びる習慣をこの時期大事にしてはいかがでしょう。少し曇った日でも太陽の光は有効ですから梅雨時晴れ間を活用してください。

3.ストレッチや軽い運動の活用

ストレッチや軽い運動は血液循環を良くしてストレスからの回復に役立ちます。体を動かすことは気分の改善に役立ちます。運動習慣をつけるためにスマホの歩数を記録しておくなども有効でしょう。

4.お風呂の活用

暑くなるとシャワーだけで済ませる方も増えますが、特に忙しかった日などは週に何回か曜日を決めてお風呂にゆっくり入ると自律神経の調整に役立ちます。入浴剤やボディーシャンプーに天然の香りを使った製品なども使うとアロマテラピー効果で鼻細胞から脳の辺縁系に刺激が伝わり自律神経の調整に役立ちます。

5.週末の活用

土日の使い方を上手にすることは6月病予防に重要です。普段の起床時間より2時間以上遅くならないように起きて適度に体を動かしたりすると、いい週末がスタートできます。私もなるべく週末は早めに起きて近くを散歩してから部屋の掃除などをするとそれ以後の一日がたっぷり使えて心にゆとりができます。土曜はパソコンは早めに閉じると早めに眠くなります。生活リズムを乱さないためにも週末の2時間以上の寝坊は避けたいものです。

6.耳マッサージの活用

気象の変化に敏感で不調を感じる方は気圧変化を感じる内耳の過敏さを軽くする対策として耳の周りのマッサージが有効とされています。耳たぶを軽く引っ張ったりマッサージしたり、耳の周りを温めるなどをしてはいかがでしょう。特に台風が近づいているときなどこうした対策をして備えてみることが大事です。

博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授

東京慈恵会医科大学卒業。同大講師を経て、1986年東京で日本初の女性クリニックを開設。2007年厚生労働省健康大使(~2017年)。2008-2010年、ハーバード大学大学院ヘルスコミュニケーション研究室客員研究員。日本医科大学医学教育センター特任教授(~2022年3月)。復興庁心の健康サポート事業統括責任者(~2014年)。被災地調査論文で2016年日本ストレス学会賞受賞。日本生活習慣病予防協会理事。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。医学生時代父親の病気のため歌手活動で生活費を捻出しテレビドラマの主題歌など歌う。医師となり中止していたジャズライブを再開。

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