時速340kmからたった6秒で60kmに!MotoGPマシンの凄さをブレンボが分析
MotoGP第3戦アメリカズGPに際して、ブレーキシステムサプライヤーのbrembo(ブレンボ)から興味深いデータが発表されたので紹介したい。
1周当りのブレーキングが最も多いコース
アメリカズGPの舞台はテキサス州オースティンにある「サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)」で、MotoGP世界選手権とF1の両方を開催する世界でも数少ないサーキットのひとつとなっている。
COTAは1周5.513kmのロングコースでバックストレートは約1.2kmと長くMotoGPマシンのトップスピードは350km/h近くに達する。計20のコーナーの中には鋭角的に曲がり込むセクションもあり、最大高低差41mとテクニカルなレイアウトが特徴だ。
MotoGPライダー全員を支援しているブレンボのエンジニアによると、COTAはブレーキシステムにとってミドルレベル(5段階中3)の難易度のコースであり、世界選手権の中では最長のコースではないが1周あたりのブレーキングセクションは最も多いとのこと。
データによると、ライダーは1周あたり37秒間ブレーキをかけているが、これはセパンの39秒間に次ぐ値で、ライダーが2分毎に約36kgの入力を加えていることを意味している。
6秒間で280km/h分減速する
中でも特徴的なのはストレートの後に設置された3カ所(ターン1、11、12)の鋭角コーナーだ。COTAには12のブレーキングセクションがあるが、この3カ所が最もハードブレーキングを要求される。特にターン12は最も過酷で、時速339km/hから6.3秒間ブレーキをかけて63km/hまで減速する。距離にして323mのブレーキング区間は世界選手権では2番目に長く、その間の平均減速度は1.5G。ブレーキレバー入力も6.1kgと最大だ。
一方でその他のコーナーに関しては、1つは中程度の難易度で残りの8つは「ブレーキングシステムに軽い挑戦をもたらすだけ」ということだ。
実際に操作するライダーがどう感じているかは分からないが、減速度が0.5Gから0.7Gの間で変化する比較的緩いブレーキング区間も多いため、1週当りの平均ピーク減速度は0.98Gと世界選手権の中ではザクセンリンクに次いで低い値となっているようだ。
ちなみに3番目にハードにターン11では制動距離は200mと短く減速度は1.4Gだが、それでもポルシェ911 GT3 RS 4.0による100km/hから0km/hの減速時より高い数値ということだ。
減速度1.5Gという凄さ
減速度1.5Gということは重力加速度の1.5倍、つまりMotoGPマシンのフルブレーキング時には体重の1.5倍の重さがかかってくるということ。自分の体重が65kgとすると、毎回100kgの巨漢に背中からのしかかられるようなものだ。それがコース1周の中に何カ所も出てくる。そう考えると、MotoGPライダーのテクニックはもちろんだが、体力・筋力も相当なものだ。
俄然興味が湧いてきたのでちょっと調べてみたが、MotoGPのフルブレーキング時の減速度が1.5Gであるのに対し、F1は軽く4Gを超えるらしい。そこが2輪と4輪の大きな違いで、さすが4つの図太いタイヤの踏ん張りと6点式シートベルトで支えられているからこそできる芸当と言える。
それでも一般の乗用車はフルブレーキング時でも約0.8G程度であることを考えると、やはりMotoGPマシンとそれを操るライダーは凄い。ちなみに最大平均加速度で比べるとF1とMotoGPは同じぐらいで1.5G程度のようだ。
詳しいデータはブレンボのリリース資料を見てほしいが、このように数値化して示してくれるとMotoGPライダーが各コーナーでどういうブレーキングをしているかが手に取るように分かるし、その凄さも想像しながらレース観戦することでMotoGPがさらに面白くなってくるはずだ。ということで、次回はぜひブレーキングに注目してみてほしい。