県勢初に107年ぶり優勝!歴史的快挙の連続だった23年の甲子園! 関東勢の復権は来年も続くのか?
2023年もあとわずか。高校野球シーズンは秋の明治神宮大会を終えて、新しいシーズンを待つ。今年も甲子園は、さまざまな名勝負、名シーンに彩られた。大阪桐蔭を軸にした近畿勢中心の優勝争いから、今季はセンバツが山梨学院、夏の選手権が慶応(神奈川)と、関東勢に栄冠がもたらされた。
山梨学院は日程に恵まれずも投打がっちり
センバツ優勝の山梨学院は、秋の関東大会王者ながら、これまでは実力に比して早期敗退が多く、優勝を予想した人は少なかった。例年より4校増の記念大会で1回戦が4試合あり、ここに入った山梨学院は、日程的にかなり不利な状況でもあった。しかし大会に入ると投打ががっちり噛み合い、準々決勝で作新学院(栃木)を12-3で圧倒すると、準決勝では広陵(広島)との息詰まる接戦を制した。1-1で迎えた9回に一挙5点を奪うと、投げては鉄腕エースの林謙吾(3年)が、10安打されながらも粘りの投球で完投勝ちした。
6勝しての優勝はセンバツ史上初の快挙
決勝は、準決勝で大阪桐蔭を破り、意気上がる報徳学園(兵庫)との対戦。地元の大応援をものともせず、中盤に大量7点を奪って、「逆転の報徳」のお株を奪った。山梨勢はこれまで甲子園で決勝進出すらなく、初の決勝で県勢の悲願を達成した。快挙はこれだけではない。センバツで6勝しての優勝は史上初で、このままの出場形態なら、「6勝優勝」は、5年に一度しかない記念大会に限られる。
吉田監督は2県で優勝空白解消
率いる吉田洸二監督(54)は、清峰(長崎)を14年前のセンバツで初優勝に導いている。この優勝も長崎勢初の快挙であり、吉田監督は、異なる2県で県勢にとって初優勝、つまり甲子園優勝空白を解消した。今後、このような指導者が現れることは考えにくい。また林は一人で6勝のセンバツ1大会最多勝。開幕戦に登場した山梨学院は後攻だったため、林は大会の最初の一球と最後の一球を投げたことになる。メンバーを一新した新チームも粘りは健在で、関東大会準優勝まで勝ち上がり、来春は連覇の期待が懸かる。
慶応は広陵をタイブレークで振り切る
夏は、大阪桐蔭が履正社とのライバル対決に敗れるなど、地方大会から波乱が相次ぐ中、本大会では、慶応が大躍進した。3回戦で広陵の追い上げを堪え、タイブレークで振り切ると、準々決勝では沖縄尚学に逆転勝ち。準決勝では土浦日大(茨城)を、エース・小宅雅己(2年)が完封し、決勝では連覇を狙う仙台育英(宮城)との対戦となった。センバツでは初戦(2回戦)で当たり、タイブレークでサヨナラ負けをした因縁の相手だ。
仙台育英との決勝では夏の決勝初の先頭弾
スタンドは慶応ファンで埋め尽くされ、開始早々からボルテージが最高潮に達する。1番・丸田湊斗(3年)が、夏の決勝史上初の先頭打者アーチを放ったのだ。相手の須江航監督(40)が「この試合の大勢を決めた」と唸る一発で勢いづいた慶応は、仙台育英の繰り出す速球派右腕を攻略し、5回に一挙5点を奪って意気消沈させた。大声援に平常心を失った仙台育英の選手たちには気の毒な場面(交錯した外野手の落球)もあり、改めて甲子園のすごさを再認識させられた次第。声出し応援が認められなかった昨年では、考えられないようなシーンだった。
史上最長ブランクでの慶応の優勝
仙台育英の連覇を8-2の大差で阻んだ慶応の優勝は、実に107年ぶり。もちろん甲子園史上最長のブランクの優勝だ。森林貴彦監督(50)は「実力プラスアルファのものが出せた。多くの方に支えてもらって、この結果がある」と、先人や全国のファンに感謝の言葉を並べた。敗れた仙台育英も、優勝インタビューの間、須江監督を先頭にベンチで整列して拍手し、勝者を称えていた。これが甲子園の高校野球である。そして慶応の前回優勝は、甲子園が誕生する前の出来事であった。
甲子園誕生100年の来年も関東勢優位?
来年は甲子園が誕生して100年になる。夏の決勝を戦った慶応と仙台育英の新チームは秋は県大会の段階で敗れ、センバツ出場は絶望的となっている。神宮大会では星稜(石川)が優勝したが、関東王者の作新学院が準優勝。大阪桐蔭を破った関東一(東京)が4強と、関東勢の実力は高い。神奈川大会で慶応を破った桐光学園の出場も可能性がある。大阪桐蔭以外の近畿勢がやや小粒だった印象から、関東勢優位の流れは、来年も続きそうな気がする。