フランスにある世界最高レベルの自動車ミュージアムで貴重なレーシングカーに酔いしれる。
モータースポーツ発祥の地、フランス。世界三大レースの一つ「ル・マン24時間耐久レース」が開催され、最高峰の自動車レースに冠するタイトル「グランプリ」もフランス発祥。さらにはF1など世界中のモータースポーツの規定などを定める「国際自動車連盟(FIA)」の本拠地は首都パリにある。フランスはモータースポーツを語る上で歴史上、重要な役割を担っている国だ。そのフランスを代表する自動車ミュージアム「フランス国立自動車博物館」を訪れた。
フランス東部の田舎町にある巨大博物館
「ルノー」「プジョー」「シトロエン」など多くの自動車メーカーを有し、モータースポーツでも多大な影響力を誇ってきた国、フランスの「国立自動車博物館」は実はパリにもル・マンにもない。スイス、ドイツ国境に近いフランス東部の町、ミュルーズの街中に存在する。
ミュルーズまではパリからTGVの直通列車でも3時間ほどかかってしまうので、フランスへの観光ついでに行くにはちょっと不便な場所にある。どちらかというとスイス観光の際にバーゼルから訪れるのがベストかもしれない(バーゼルから鉄道で30分程度)。とても行きにくい立地だが、このミュージアムは自動車ファン、モータースポーツファンは是非とも訪れる価値のあるスポットだ。というのも、ここに所蔵される貴重なクラシックカーやレーシングカーはなんとおよそ500台。半日どころでは時間が足りないくらい膨大な量のコレクションが自慢だ。
元々、アルザスの地域は紡績・繊維産業で栄えた工業地帯であり、南西にはコーヒーミルなどを製造する金属工業メーカーから発展した「プジョー」のお膝元であるソショーの街がある。実はこのミュージアムはアルザスの繊維産業で財を成したシュルンプ兄弟が「ブガッティ」のクラシックカーをコレクションしていたことにルーツがあり、彼らが破産した後にフランスがその価値を評価し、国立博物館としてオープンした。
膨大なF1マシンやルマン・カーも展示
巨大な敷地に溢れんばかりに並べられたクラシックカー。その中には「ブガッティ」の貴重なクルマの数々が目を引く。フランス車が多く所蔵されているものの、「メルセデス・ベンツ」などのドイツ車、「フェラーリ」「アルファロメオ」などのイタリア車も数多く所蔵。かつての「グランプリ」や「ル・マン」での歴史に敬意を払った形のコレクションだ。
いくつかのエリアに分かれた館内にはF1を代表とするレーシングカーを展示する「モーターレーシングエリア」がある。ここのコレクションが凄い。その全体写真を撮るだけでもここを訪れる価値があるだろう。
1950年に「F1世界選手権」が開始する以前の「グランプリ」マシンから「ル・マン24時間耐久レース」の名車まで1台1台が宝の山である。近年のF1では「ルノー」「ウィリアムズ・ルノー」「マクラーレン・プジョー」「ジョーダン・プジョー」などフランスの自動車メーカーのマシンを多数展示。
また、ル・マンカーではリアウイングに可変フラップを装着した「ポルシェ908」が目を引く。このマシンは1969年に富士スピードウェイの「日本グランプリ」でも滝レーシングから出走経験があり、60年代後半、ル・マンでの優勝はないものの、「ポルシェ」のル・マン19回制覇へとつながる礎を築いたマシンだ。
フランスのル・マンカーでは1978年の「ル・マン24時間」を戦ったルノー・スポールの「アルピーヌ・ルノーA442A」が展示。優勝したのは「アルピーヌ・ルノーA442B」の2号車なので優勝マシンではないが、ルノーがF1に進出する前にル・マンで一花咲かせた時代の貴重なマシンである。
館内にはラリーカーも展示され、スポーツカー、クラシックカー、レーシングカーとあらゆるジャンルのクルマが楽しめる。わざわざ行く価値のあるミュージアムといえよう。ミュールーズ駅からはトラム(路面電車)で10分ほど。「自動車博物館駅(Musee de l’Auto)」の目の前と好アクセス。フランスの田舎町の雰囲気を楽しみながら、1日かけて訪れてみてはいかがだろう。