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早明戦快勝。明治大学の隙がなさ過ぎる会見。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
「寮内での洗濯は部屋ごとに」を徹底。私生活でも規律遵守を求める(筆者撮影)

 明治大学ラグビー部は12月1日、東京・秩父宮ラグビー場で早稲田大学との関東大学ラグビー対抗戦A最終節(早明戦)戦を全勝同士で実施。36―7で快勝した。

 序盤こそ早稲田大学の齋藤直人キャプテン、岸岡智樹の司令塔団にキックでスペースをえぐられたものの、自陣の防御局面で耐え続け、前半15分頃のファーストスクラムで相手の反則を誘発。まもなくロックの箸本龍雅の先制トライなどで7―0とした。

 以後も早稲田大学の献身的な防御にわずかずつ亀裂を入れるようにボールを継続。箸本らフォワード陣がフットワークを活かしてタックラーの芯から逃れるなか、勢いのついたところでスタンドオフの山沢京平が大外へ鋭いパスを放つ。時間を追うごとにカウンターからの攻撃も際立ち、10-7とリードして迎えた後半2、8分に連続トライ。終盤にもだめを押し、対抗戦優勝を決めた。

 試合後、明治大学の田中澄憲監督と武井日向キャプテンが会見。試合内容と同様、隙のなさを示した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

田中

「25年ぶりの全勝対決。最高の舞台が整ったと思います。前半の我慢比べに耐え、勝ってこういうスコアに繋げられた。15人が粘り強くアタック、ディフェンスと、当たり前のことを当たり前にできた結果だと思います」

武井

「25年ぶりの全勝同士での伝統の一戦。チームで楽しみにしていて、このプレッシャーに負けずに戦えたところにチームの成長を感じました。15人が役割を果たせた結果が勝利に結びついたと思います」

――プレッシャーを楽しめた、とは。また、序盤こそ相手が好判断によりスペースを攻略。明治大学が防ぎ切りました。

武井

「プレッシャーが続くビッグゲームのなかで普段通りにプレーできるというのが、去年の明治大学でもなかなかできなかったこと。去年、優勝したことも含め、そういう経験が根付いてきたのかなと思います。

 ディフェンスでは役割を果たす。ひとりひとりが粘り強くいつも通りのことを。タックルしたらすぐに起き上がってセットをする。そういう普段通りの準備ができたから、こういう結果に繋がったのかなと思います」

――試合中盤からカウンターアタックを増やした。

武井

「特に指示はなかった。ひとりひとりの判断で、行けると思ったら行く。(スクラムハーフの飯沼)蓮、(スタンドオフの山沢)京平が状況判断をしてアタックができたこともよかった。ひとりひとりが(味方の判断に)リアクションをしていこうと準備していた。パニックにならなかったことがよかった」

――前半のキックの蹴り合いについて。ハーフタイムにどんな指示を。

田中

「前半の入りはいいものじゃなかったと思います。特にハイパントを上げられた時に誰が捕ればいいのか、いいコミュニケーションが取れていなかった。あそこは多分、雲山(弘貴、フルバック)が緊張していたので…。徐々に(相手の)ハイパントの精度も落ちてきたので、(明治大学が)カウンターのできる種類のキックになった。自分たちのペースを掴みだしたのかなと思います。(ハーフタイムは)誰が(相手のキックを)捕るのかを明確にして、入りの10分のペナルティをマネジメントしようと、後半へ入っていました」

――前半はフェーズを重ねながら接戦だった。

武井

「前半、厳しい展開になることは予想できていたので、そのなかでも自信にしているフィジカルが通用しているとポジティブに捉えて。後半は相手が疲れてきたところで、そのフィジカルが活かせた」

――相手の疲れはどこで感じたか。

武井

「正直、疲れていたかはあれですがこちらが(後半開始早々に)2本、捕った後に早稲田大学のメンタル的に『あぁ』となっているのが見て取れた。メンタルの部分から崩していけたのは、勝利に大きく影響したと思います」

――倒れた後にすぐ起き上がれる要因は。

武井

「大舞台でもいつもやっていることが出る。練習からリアクションは特に意識しています。僕自身、どんな練習であってもすぐに起き上がる。こんな練習だからどうしようとかではなく、常にそういうこと(素早い起き上がり)を考えながら練習している」

――箸本龍雅選手と武井日向選手について。

田中

「箸本は――前回も話しましたが――自分の成長に貪欲。プレーも、自分の成長を感じながら楽しくやっているイメージでしょうか。これからもまだまだ伸びる選手だと思います。

 武井はこのチームのスタイルそのまんまじゃないかなと。リアクションとか、タックルしてすぐに起き上がるとか…。昔の明治大学だとこういう(大差がついた)試合ではあと1、2本、取られてもおかしくなかったところ、最後まで(自陣ゴールラインを)切らさない集中力(があった)。武井(の存在)がいい影響を与えていると思います」

――フォワード戦の評価。

田中

「プレッシャーは十分にかけられていた。ただメンバーが代わってからスクラムがうまく組めていなかったので、成長をさせる部分という意味では、リザーブメンバーのスクラム、ラインアウトです。トータル23人で戦えるチームになるよう突き詰めたい」

武井

「スクラムでプレッシャーをかけられたんですけど、ペナルティを1本してしまった。そういう部分はこれから改善していかなきゃいけない。1個のミスがこれからの大学選手権ではキーになってくる。隙を与えない。その部分を追求していけたら」

――大学選手権連覇に向けて。

武井

「きょうの試合は通過点。まだ目標は達成していないです。今季のチームで日本一になることに意味があるので、『真価(チームスローガン)』を体現していきたいです。この3週間、選手権への準備と言うよりももっと成長していきたい。現状に満足することなく、3週間の過ごし方をしっかりしていきたいです」

 両軍は全国大学選手権へ12月21日の準々決勝から参加。明治大学は2年季連続14回目、早稲田大学は11季ぶり16回目の優勝を目指す。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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