「半グレ化」する北朝鮮のストリートチルドレンたち 全ては生き延びるために・・・
北朝鮮では、ホームレスのことをコチェビ(コッチェビ)と総称するが、ストリートチルドレンのことを指すことが多い。
筆者は、1998年から1年間、中国延吉市の延辺大学に留学したが、経済難まっ最終の北朝鮮から川を越えてやってきたコチェビたちは、延吉市内の至る場所で見られた。
そのほとんどが両親を亡くして天涯孤独の身になったり、親から捨てられた子供たちだった。彼らは中国人や韓国人に物乞いをして金をため、それを資金にして北朝鮮で行商をする子供もいた。彼らの詳しい実態については拙著「コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記」でも書いたが、いずれにせよコチェビたちは、北朝鮮の経済失政の犠牲者だった。
2000年代からは、中国内でコチェビを含む脱北者に対する取り締まりが厳しくなり、姿は見られなくなった。中国という生命線を失ったコチェビたちは、北朝鮮国内で徘徊するが、マイナス20度の酷寒のなかで野宿することも珍しくない。
また、北朝鮮国内では「国民全員が平等に生きている」という社会主義の面子を守りたい北朝鮮当局によって捕まえられて、施設に強制収容された。
そんな当局の「コチェビ狩り」にもめげず、彼らは北朝鮮国内でしたたかに生き延びてきた。そして、最近では「半グレ化」しつつあるという。
もともと、ほとんどのコチェビたちは、人が多く集まる市場や駅前で物乞いをしながら、その日暮らしをしていた。しかし、徐々に集団化し窃盗などに手を染めるようになった。盗品を売り飛ばす販路を構築するなど横のネットワークもますます巧妙化しているが、なによりも彼らの強盗手段が、ますます大胆になっているという。
コチェビたちの「半グレ化」は、北朝鮮住民にとっては厄介だろう。しかし、日々の生活のなかで何かと理由を付けて収奪しようとする北朝鮮当局の方がもっと厄介だ。また、ほとんどのコチェビは孤児だが、なかには、家計のために昼には学校に通い、夜には窃盗をするなどその動機も様々だ。
北朝鮮当局にめげず、時には出し抜きながら、社会を生き延びるたくましいコチェビたち。住民たちも何らかのシンパシーを感じているのかも知れない。