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英国の女性は大酒飲み、EU離脱で医療は崩壊 いつでも病院で診てもらえる日本は天国だ

木村正人在英国際ジャーナリスト
パブを訪れるジョンソン首相(当時)。英国の女性は大酒飲み?(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

■英国女性の26%が一度に6杯飲酒

[ロンドン発]英国の女性はデンマークと並んで大酒飲みであることが経済協力開発機構(OECD)の「図表でみる医療 2023」で分かった。英国女性の26%が一度に6杯以上(60グラム以上の純エタノール)のアルコール飲料を飲んでおり、調査対象の33カ国平均(12%)の倍以上だと英大衆紙デーリー・メール(11月7日付)が報じている。

「図表でみる医療 2023」によると女性の大酒飲みは英国、デンマーク各26%、ルクセンブルク24%、ドイツ22%、米国21%の順。男性の大酒飲みはルーマニア55%、デンマーク49%、ルクセンブルク46%、英国45%、ドイツ39%。全体ではデンマーク37%、ルーマニア36%、ルクセンブルク、英国各35%、ドイツ30%だった。日本は調査対象に含まれていない。

「飲酒は働き盛りの世代において世界的に死亡や障害の主な原因だ。多量の飲酒は心臓病や脳卒中、肝硬変、特定のがんの主要な危険因子だが、低・中程度でさえこれらの疾患の長期的リスクを増大させる。飲酒は他のどの精神作用物質よりも多くの交通事故や傷害、暴力、殺人、自殺、精神障害の原因となっており、特に若年層でその傾向が顕著だ」(OECD)

■イングランドのアルコール依存症患者は推定60万人超

2021年のOECD加盟国全体のアルコール消費量は1人平均8.6リットルで11年の8.9リットルから減少した。ラトビアとリトアニアの消費量が最も多く、12リットル超。チェコ、エストニア、オーストリアがそれに続き、各11リットル超。トルコ、コスタリカ、イスラエル、コロンビアの消費量は5リットル未満と比較的少なかった。

英国の慈善団体「アルコール・チェンジ英国」によると、イングランドのアルコール依存症患者は推定60万人超で、このうち治療を受けているのはわずか18%。男性で8杯以上、女性で6杯以上、一度にアルコールを摂取している割合は英国の飲酒者のうち27%。20年には8974人がアルコール摂取で命を落としており、前年より18.6%も増えていた。

しかし05年以降、英国における全体的な飲酒量、飲酒する人の割合、飲酒する人1人当たりの飲酒量はすべて減少している。この傾向は特に若い飲酒者の間で顕著だという。収入が多い人ほど飲酒する傾向があり、最も恵まれた地域に住む人の9割が飲酒しているが、最も恵まれない地域に住む人の7割強しか飲酒していない。

■英国の医療の質は他の国々に比べて低い

医療と介護の改善を促す英国の慈善団体「キングス・ファンド」のヴィーナ・ローリー上級研究員は「OECD加盟国における医療の質とアウトカムの比較で英国は多くの面で他の国々に比べて低い。心血管疾患やがんといった主要な死因に関して英国は予防から早期診断・治療までの全経路で劣っている。回避可能な死亡率が高い」と指摘する。

「コロナ前の英国の平均余命は米国を除く比較対象国の中で特に女性の平均余命が低い。多くの国と同様、英国でもコロナにより死亡率が急上昇したが、その上昇幅は欧州諸国より高かった。政府は診療の待ち時間短縮に取り組むだけでなく、危険因子の肥満や喫煙を減らすことによって病気を予防するため政府を横断した野心的な行動が必要だ」と説く。

英国に比して日本の医療は随分、健全だ。20~22年のコロナ死亡率(10万人当たりの死者)は英国313人、米国、イタリア各325人、ドイツ200人、OECD38カ国平均225人だったのに対し、日本は46人。北欧ではコロナ対策が緩かったスウェーデンが214人、早い時期から厳格な対策をとり高齢者施設保護が充実していたノルウェーが38人と大きな開きが出た。

■英首相「TVに出演してコロナを注射したい」

65歳以上の高齢者が3割近くに達している日本は国内総生産(GDP)に占める医療支出の割合は11.5%とOECD加盟38カ国の中で4番目に高い。1位は米国16.6%、2位ドイツ12.7%、3位フランス12.1%。英国は6位の11.3%だった。政府支出に占める公的医療支出の割合は日本が22%とOECDの中で最も高かった。次いで米国、英国、アイルランドが各21%だった。

人口1000人当たりの病床数は韓国が最も多く12.8床、日本は2位で12.6床。英国2.4床、米国2.8床、OECD平均4.3床を圧倒していた。日本は病院支出に占める介護の割合が10%とOECD平均の3%に比べて高くなっていた。開業クリニックで電子カルテを利用している割合は100%を達成している先進国が多い中で日本は42%とデジタル化の遅れが目立った。

23万人超の死者を出した英国のコロナ対策を検証し、今後の教訓を得る独立の公的調査でボリス・ジョンソン首相時代に首相官邸首席補佐官を務めたエドワード・ウドニー・リスター上院議員は「ジョンソン氏はコロナが脅威でないことを世間に示すためにTVに出演してコロナを注射したいと官僚や顧問に提案していた」ことを明らかにした。

冗談にしてもとんでもない発言だ。ジョンソン氏はまた「再び都市封鎖を実施するくらいなら、死体が山積みになるのを待つと言っていた」という。ジョンソン氏は欧州連合(EU)強硬離脱派に担がれて首相になった。「政界の道化師」と呼ばれるお調子者に国の命運を委ねた有権者の自業自得と言うには、あまりに残酷すぎる。

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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