米国の日常生活の内訳を時間配分の点から詳しくさぐる
アメリカ合衆国労働省労働統計局では定期的に同国の国民の日常生活や就業状況などに関して多方面からの調査を成し、その統計結果を逐次公開情報として提供している。今回はその公開情報「American Time Use Survey」を用い、同国の大人たち(今件では15歳以上)が普段どのようなライフスタイルで生活しているのか、時間配分の上から年齢階層別などの属性別で詳しく確認する。
アメリカ合衆国の15歳以上の主要行動あたりの平均時間は次の通り。老若、夫婦独身、就業者無職を問わずで、しかも平日と休日を合算した上での平均値のため、全体的な平均動向把握のための指標であることに注意。
ライフスタイルに加え、日常生活における男女の役割の違いが見える結果となっている。
それでは年齢階層などの属性の違いで、行動性向にどれほどの違いが生じるのだろうか。公開データでは「ながら行動」に関わるものは無いが、主従事(その行為をメインとして実行した行動)に関する時間配分について、属性別の動向が掲載されている。それを確認する。
最初は年齢階層別に仕切り分けした上での男女別。
まず男性。睡眠時間は20歳未満が最も長く、次第に短くなっていく。就業で忙しくなり、睡眠時間を削っている実態がうかがえる。そして退職する人が増える年齢層になると少しずつ増加していく。実際にはこの「睡眠等」には寝ている時間以外に化粧や歯磨き、入浴なども含まれるのだが、大部分は睡眠。中堅層以降は歳を取るに連れて、身体維持のための生理的活動時間が長くなるようすがうかがえる。
食事や家事、買物の時間は若年層が一番少なく、歳を経るに連れて増加。大人になると自分のため、あるいは家族のために費やす時間が増える構造。育児・介護は子供がいる可能性が高い中堅層で長くなるが、それでも主従事時間としては1時間にも満たない。
仕事は中堅層で大体6時間を維持する。短いように見受けられるがこれは平日以外に休日も合わせた平均値であり、さらに未就業者も合算されている、その上「ながら行動」が別途存在しているのが要因。また教育・教養は若年層ほど長くなる。
雑談やテレビ鑑賞、スポーツなどは若年層が長めで就業年齢になると短くなり、中堅層以降は再び増加していく。
女性も行動性向に大きな違いはない。男性との違いを見ると、買物の時間はさほど変わらないが家事や育児・介護の時間は長く、仕事等の時間は短い(パートタイム勤労者の比率が高く、また専業主婦も多いのが要因)。雑談・テレビ・スポーツの時間も短めで、ながら行動はともかく主従事としての行動としては、家事や育児などに自らの娯楽的な時間を食われている実情がうかがえる。
年齢階層別ではなく、回答者の学歴別の仕切り分けも見ていく。これは学歴によってその人の生活様式がどのように変わりうるか(職業や収入、世帯構成など)を示唆する動向といえる。
高学歴者ほど睡眠などの時間、家事、雑談やテレビ鑑賞の時間は短くなり、食事や買い物、仕事等の時間は長くなる。高学歴になると収入を得るための行為により長い時間を割かざるを得なくなると考えればよいのだろうか。食事の時間が長くなるのは、高学歴者は高収入者となりやすく、その分食事の質も良くなる、ゆっくりと時間を取るようになるという結果かもしれない。他方、ほんの少しの違いではあるが、教育・教養の時間もまた、高学歴ほど長くなるのは注目に値する。
あくまでもこれらは平均値であり、それぞれの属性の全員が同じ行動様式を有しているわけではない。しかしながら個々の属性によってライフスタイルが微妙に差異を見せる結果が出ている点は、興味深いことに違いない。
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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。