シンプルに妄想チェックをする方法、そのキーワードは「天狗(てんぐ)」
インターネットの浸透とコミュニケーションサービス、特にソーシャルメディアの普及に伴い、過度の情報にさらされ、人々はついつい半ば無意識に、自分にとって都合の良い、耳触りの良い情報を選択してしまいがちとなる。それが娯楽関連、あるいは取るに足らないものならばさほど問題はなく、本人自身の範ちゅうに留まることになる。
しかし例えそれが妄言的なもの、個人や一部勢力の妄想的なものでも、内容が時節ネタ、政治関連、日常生活に影響を及ぼすような内容で、特定の対象をバッシングするものであり、それが口コミで第三者に広まると、大きな損失を不特定多数の人に与えることになる。その類の話は得てして、いわゆる「厨(中)二病」的な興味関心を刺激し、自分の不満を解消しうる内容であり、信じ込んでしまう魅力を有しているからだ。そしてその話が事実として伝えられることは、短期的には情報を発した・取得した人の自己満足・優越感を生み出すものであっても、中長期的には社会の上で大きな打撃、マイナスとなる。
そのような妄言に惑わされないための、極めてシンプルな方法が、「天狗(てんぐ)」への固有名詞の置き換え。伝えられてきた怪しげな話について、固有名詞部分を「天狗」に置き換えて、その話の筋道が通るよう(な戯言的な文章)であれば、それは多分に妄想でしかないということになる。
例えば
・アンネの日記を破くなんて、天狗のしたことに決まっている。
・大きな地震が起きたのは、天狗が秘密兵器を作動させたからだ。
・あの選挙で某議員が圧勝したのは、天狗が裏工作をして投票用紙を偽装工作した結果である。
・報告書の文字が似たような別の文字に差し替えられたのは、天狗が検索を避けるために行った。
という次第である。
これは元々インターネット上のスラングとして、何か困ったことが発生したら「天狗じゃ、天狗の仕業じゃ」と、アスキーアートと共に騒ぎ立てて茶化すというという切り口を活用したもの。
元々「天狗」は諸説あるものの民間信仰・伝承における神様、妖怪、魔物などに区分される伝説上の生き物。古来においては(当時の知識、技術では)理解しがたい事象が発生した時に、その「不可解な状態」による不安を強引にでも解消させるため、万能な「天狗」を想定し、それの仕業にすることで、自他共に納得させ、精神を安定させるという、自己防衛本能的な役割をも果たしていた。昔の人の知恵ともいえる。「狐(きつね)」や「河童(かっぱ)」なども良い例である。
今件手法は、それを応用したものに過ぎず、もちろん「天狗」を「狐」なり「河童」に代替しても特段問題は無い。むしろこの使い方は、言葉の本筋に合致したものといえる。
無論、すべての妄言にこれが当てはまるとは限らない。また「天狗」に置き換えて文章が成立するか否かの判断は、見聞きした本人自身が行う以上、万能な手法というわけでもない。しかし発想法としては非常に面白く、納得させられる話ではある。
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