今度は元日本代表・齋藤学がKリーグに。移籍先・水原三星のお家事情とは?
名古屋グランパスの元日本代表である齋藤学が、韓国のプロサッカーリーグであるKリーグの水原三星に完全移籍するという。
2012年ロンドン五輪と2014年ブラジル・ワールドカップにも日本代表として参加した選手だけに、「完全移籍」がツイッターのトレンドにもなっていたが、日本のサッカーファンたちにとって気になるのは移籍先のことだろう。水原三星(スウォン・サムスン)はどんなチームで、どんな状況にあるのか。紹介したい。
水原三星はかつて、韓国でもっとも強く人気がある“Kリーグの顔”だった。
韓国が世界に誇る大企業であるサムスン電子を親会社にして産声を上げたチームは、1996年にリーグ加盟。1年目でリーグ準優勝、1998年には創設3年目でKリーグ制覇を成し遂げ、以降、リーグ優勝4回(98年、99年、2004年、2008年)、FAカップ優勝5回(2002年、2009年、2010年、2016年、2019年)を数える。AFCアジアチャンピオンズリーグの前身であるアジア・クラブ選手権も2度(2001年、2002年)制覇した。
初代監督にキム・ホ(96年〜2003年)、2代目監督にチャ・ボムグム(2004年〜2010年)と韓国サッカー界の名将たちが指揮官の座に座り、豊富な資金力をバックにGKチョン・ソンリョン(現川崎フロンターレ)、DFイ・ジョンス(元鹿島)、MFキム・ナミル(元神戸)、FWアン・ジョンファン(元横浜Fマリノス)など、韓国代表クラスを毎年のように獲得するその豪華さから「レアル・スウォン」と呼ばれた時期もあった。2010年には日本代表の高原直泰も所属した。
(参考記事:元日本代表から欧州組、有名タレントもそうだった!! 歴代の日本人Kリーガー通信簿)
ただ、現在のチームに当時の面影はない。ヨム・ギフンなど韓国代表経験者はいるものの、かつてのような大型補強に乗り出すことはない。
監督もソ・ジョンウォン、イ・イムセンとクラブの生え抜きたちが監督を務めているが、今季も韓国代表コーチ歴もあるパク・コナ監督が成績不振を理由に途中辞任。リーグ8位にあるチームを再浮上させるべく、昨季まで大邱(テグ)FCを率いたイ・ビョングン監督が、指揮官として戻ってきた。
もっとも、かつての名門凋落の原因は、監督や選手だけにあるのではない。クラブの運営体制にも原因があると言わざるを得ないだろう。
というのも、かつてはサムスン電子という大きな後ろ盾があったが、2014年から同じサムスン・グループ傘下の大手広告代理店『チェイルキフェク(第一企画)』がチームの運営母体に。
サムスン電子の管轄下にあった頃は年間300億ウォン(約30億円)以上だった支援金が、第一企画になってからは大幅縮小。2019年度は年間180億ウォン(約18億円)にまで減額している。そうした緊縮財政のせいで選手補強もままならない状態だった。
そんな中で齋藤の完全移籍が発表されただけに、韓国でもニュースになった。スポーツ・芸能メディアの『OSEN』も6月13日の朝の時点で、「水原三星、アジア枠でアタッカー齋藤の獲得が目前」と報じていたほどだ。
Kリーグ1は5月29日から一時中断されていたが、6月17日から再開。水原三星は6月19日に宿命のライバルであるFCソウル戦を迎える。
両クラブの対決は“スーパーマッチ”と呼ばれ、韓国のナショナルダービーとして有名。高原もこの“スーパーマッチ”でゴールを決めて、サポーターの心を掴んだ。移籍が発表されたばかりの齋藤が出場することはないかもしれないが、サポーターへのお披露目はあるかもしれない。
かつての常勝軍団から一転して、近年は優勝争いよりも下位グループに甘んじるクラブの行く末を案じる“グランブルー(水原三星サポーターたちの愛称)”たちは、齋藤が救世主になってくることを期待していることだろう。
近年のKリーグは日本人選手の活躍が目立つ。昨季はKリーグ1で邦本宣裕(全北現代)、Kリーグ2で石田雅俊(大田ハナシチズン)が存在感を示した。今季は天野純(蔚山現代)が大活躍中だ。
この流れに齋藤学がさらなる勢いをつけることを期待したい。