企業のメディアとしてのTikTok【USパートナーシップ責任者インタビュー】
アップルが発表した、「2018年ベスト(Best of 2018)」で、ショートムービーアプリ「TikTok」が日本の無料アプリランキング1位になった。ユーザー数は全世界で5億人を突破し、いま最も勢いのあるサービスの一つであることは間違いない。
昨年から本格化した広告でも、コカコーラ、グリコのポッキー、チュッパチャップス、Y!mobileやソフトバンクといった広告主がこの1年でTikTokに広告を出稿している。
コンテンツホルダーもTikTokの持つ若いユーザーに注目し始めている。音楽ではストリーミングサービスのAWAが提携。スポーツでは10月に卓球のTリーグの公式PRパートナーになる事を発表し、11月にはNBAとグローバルコンテンツパートナーシップ締結が世界のスポーツ界で大きなニュースになった。国内ではサッカーのJリーグやバスケットボールのBリーグ、フリーライドスキー・スノーボードのFreeride World Tourが公認アカウントを開設してコンテンツを投稿している。
TikTokのメインユーザーである10代・20代の若者へのリーチは、全ての企業やコンテンツホルダーはにとっての関心事だと言っても過言ではない。
コンテンツホルダーが知っておくべき、TikTokのプラットフォームとしての特徴や、他のSNSとの違いを、TikTokの親会社、BytedanceのUSコンテンツパートナーシップ責任者、マイケル・モドン氏に聞いた。
全ての人に見たい、作りたいコンテンツがある場所
--TikTokはどのような特徴があるプラットフォームなのでしょうか?
「TikTokは15秒という短いタテ型のスマートフォン動画配信プラットフォームです。
テクノロジーによって各ユーザーに配信されるコンテンツが最適化されていて、音楽が好きな人には音楽のコンテンツを、スポーツが好きな人にはスポーツのコンテンツを提供するのが大きな特徴です。
また、ユーザーのクリエイティビティに フォーカスしているところも他の動画プラットフォームと違うところです。TikTokはすべての人のクリエイティビティと自己表現を促すプラットフォームであり、誰でもクリエイターになれるアプリでありたいと考えています。そのために、新しいフィルターや動画編集ツールを次々開発しています。
様々な価値観を持つユーザーそれぞれが素晴らしいと思っていること、楽しいと思っていること、エキサイティングだと思っていることを表現する場でありたいと思っています。
すべての人にとって、見たいコンテンツがあり、作りたいコンテンツがある場所とエコシステムをつくること。ユーザーの全てが自分らしさを表現できて、 スマートフォンを開いた時に 楽しい気分になれる場所を作るというのが私たちのゴールです。」
TikTokにとっての良いコンテンツ
--どういうコンテンツが、TikTokに適しているのでしょうか?
「一般的に言えるのは、タテ型で、最初の2秒で何の動画か分かるコンテンツです。
また、TikTokでは、イイねを押す、シェアする、他の人が使った音楽を使って動画を作る、など、ユーザーのアクションによって全てのユーザーの好みに合ったコンテンツが配信されるのが大きな特徴です。
ユーザーがコンテンツを作ってそれを他のユーザーが盛り上げていくことで、良いコンテンツが決まっていきます。
質の高いコンテンツを作るだけでは十分でなく、ユーザーをいかに巻き込めるかが重要なのです。
例えば、アメリカの深夜番組のコメディアン、Jimmy FallonはTikTokの使い方をとても良く理解しています。」
Jimmy FallonのTikTokアカウント:
「彼は#TumbleweedChallenge!とハッシュタグをつけて、「Tumbleweed」つまり風で道端を転がる雑草のようにゴロゴロ転がるという”お題”を視聴者に出しました。
結果、15000人もの人がこの真似をして動画を投稿し、合わせて1500万回近く視聴されました。」
コンテンツホルダーとのパートナーシップ
--TikTokは現在のところ個人が発信するショートビデオ配信プラットフォームという印象が強いです。企業アカウントが発信するコンテンツも今後増やしていく予定なのでしょうか?
「確かに、現在は個人のユーザー数のほうが圧倒的に多いです。
今後は、プラットフォームとして競争力を高めるために、メディア、広告主、スポーツチームなどのコンテンツホルダーに提供してもらうコンテンツも増やしていきたいと考えています。」
--海外ではどういった企業とパートナーシップを結んでいるのでしょうか?
「美容、ファッション、コメディ、スポーツ、旅などあらゆる種類のコンテンツホルダーがTikTokで配信しています。
具体的には、先日グローバルパートナーシップを発表したNBA、MTV、女性向けファッションマガジンのCosmopolitan、スペイン語の放送ネットワークであるTelemundo、コメディのメディアFunny or Die、ロサンゼルスフィルムフェスティバル、コンピュータサイエンスの領域で女性のキャリア支援をしているGirls Who Codeなどがありますね。
昨年の平昌オリンピックでは、アメリカのオリンピック放送局であるNBCと協力して、TikTokのインフルエンサーを現地に派遣して大会レポートをしてもらったりもしました。
コンテンツホルダーにとって、TikTokによって18-24歳の若いユーザーとのタッチポイントが作れるのは大きな魅力になっています。
また、TikTokの強みはエンジニアリングです。機械学習でユーザーの好みに合わせてコンテンツが配信されるので、それぞれのジャンルに興味がある人に配信されるところも、コンテンツホルダーにとってはメリットになると思います。
私たちのエンジニアリングチームは フィルターやレンズ 、ARなど、ユニークな機能をたくさん開発しています。TikTokのエンジニアリングの力をコンテンツホルダーに提供して、共に成長していきたいと思っています。」
--日本でも昨年TリーグがTikTokのパートナーになり、JリーグやBリーグも公認アカウントを開設しました。今後TikTokアカウントを運用する企業は増えてくると思いますが、企業側はどういったことを考える必要がありますか?
「スポーツは注力していきたい分野の一つです。スポーツに限らず、多様なコンテンツホルダーとパートナーシップを組み、その成長を促すことは私たちにとっても 非常に重要だと思っています。
TikTokのユーザーコミュニティの中で存在感を出していくために最も重要なのは、まずそれぞれのコンテンツホルダーがどういった目標を持っていて、何を達成したいかを明らかにすることです。
その上で、プラットフォームの特徴や背景にあるテクノロジーをしっかりと理解してもらい、ユーザーが何を望んでいるのか、どんなコンテンツを上げればそこにフィットするのかを話し合います。
この最初のステップの ディスカッションとすり合わせが、良いパートナーシップを結ぶ上で非常に大切です。
何を伝えようとしているのか。伝えたいことを表すために動画の最初の2秒で何を撮るのか。それをよく考えて、クリエイティビティを発揮し、それぞれのやり方を発見することが重要です。
正解は1つではありません。
--アメリカで既にTikTokを使ったコンテンツ配信で成功していると言える企業があれば教えてください。
「アメリカのパートナー企業は日々、この新しいショートビデオプラットフォームに適した発信方法を模索しています。
NBAのようなコンテンツホルダーは、既にinstagramやTwitterやYouTubeで多くのフォロワーを抱えています。ソーシャルメディアの運用チームも存在し、新しいプラットフォームのオーディエンスに対して、どういったコンテンツを作るかという戦略を立てる組織があります。
私たちは、成長し続ける世界中のTikTokのコミュニティのために、ブランドやメディア企業と提携するための創造的なアプローチ方法を検討しています。
パートナーとして、コンテンツホルダーがTikTokの中でファンを獲得し、成長するサポートをする必要があると考えています。」