本も雑誌も漫画も電子書籍も読まない人、約三分の一
昨今よく見聞きする「本離れ」「読書離れ」。電子書籍へのシフト説や図書館の利用冊数の増加の動きなど、それを否定する話も多い。それでは紙媒体の各種印刷物、さらには電子書籍も含めた広義での本離れはどのような現状なのだろうか。2014年9月に発表した「国語に関する世論調査の結果」を元に確認していくことにする。
今項目では「電子書籍」を「書籍の電子化」だけでなく雑誌や漫画なども含めたものとして扱い、その上で電子書籍を利用しているか否かを尋ねている。電子書籍の利用者が紙媒体の本や漫画や雑誌を読んでいるかまでは尋ねていないが、別項目の調査項目では、電子書籍購読者のうち約3%しか「電子書籍のみしか読まず、紙媒体は読んでいない」との回答者はいない。実質的に「電子書籍利用者」は「紙媒体利用者」でもあると見なして良い。
電子書籍利用者は、漫画や雑誌も含めて17.2%。今件では有料・無料の別は尋ねていないので、購読ハードルの高い有料電子書籍利用者ならばさらに利用者は少なくなる。一方、電子書籍は読まないが紙媒体の本などは読む人は45.2%。見方を変えると6割強は紙媒体の本や雑誌、漫画を読んでいることになる。
興味深いのは灰色の部分、「紙の本・雑誌・漫画も電子書籍も読まない」の人。報告書では前提として「ふだん」との文言が用いられているが、あらゆる媒体の本、漫画、雑誌も日常では読まない人がこれだけ大勢いることになる。経年変化のデータが公開されていないのが残念だが、これだけ多くの人が本と無縁な状態にある。
このデータについて、世代別構成比を見たのが次のグラフ。
電子書籍の利用者が若年層ほど高いのは、視力の問題に加え、電子書籍を使える端末の普及率が若年層ほど高いから。また電子書籍化されている書籍などが、若年層向けのが多いのも一因。
他方、紙の本・雑誌・漫画「のみ」の動向は、意外にも世代別の差異はあまり無い。元々読書をたしなむ層は若年層ほど多く、その一部が電子書籍も利用し、紙媒体のみの層はどの世代も同程度の比率となっている。読書をする人のうち電子書籍も読む人は、若年層ほど多い次第である。
また、「紙媒体も電子書籍も、本は雑誌も漫画もあわせ、一切目を通していない」人は歳を経るほど増えていく。60代を超えると4割強もの人がその条件に合致することになる。今件はあくまでも本のみで、新聞やテレビなどは含まれていない。高齢層は視力などの身体的な理由を受け、新聞やテレビ、ラジオに傾注するようだ。
シニア層が従来型メディアの中でも、テレビやラジオ、新聞の利用性向が高い傾向にあることは他調査からも明らか。本離れがその一因にあるとする連動性も納得がいくというものだ。
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