佳子様に喝采、大学中退しての再受験、志を貫いて!
大学を早期に中退することには経済的、将来的にも大きなリスクを伴う。しかし志を持っての進路変更としては恥ずべき事ではなく、その障害を軽減する対策と、社会としての擁護が必要である。
2014年9月11日に、秋篠宮ご夫妻の次女佳子さまが一昨年入学された学習院大学文学部教育学科を中退し、国際基督教大学(ICU)のAO入試を10月に受験されるということが発表されました。すでに8月31日付けで学習院大学は退学されたという事です。
内部進学した学習院大学を中退してまでも、叶えたい志があられたものと察せられます。実現される事を切に願う次第です。ところで佳子さまに限らず大学を中退する人は少なくは有りません。その理由としては親の経済的理由、そして自分の適正とのミスマッチ、さらに学力不足です。大学では入試という選考を行っているわけですから、学力不足を克服して入学しているはずです。しかしながら入学試験が必ずしも必要な学力を評価していない現実が有ります。これは大学側の問題です。たとえば神戸大学工学部電気電子工学科の入試科目の場合、大学センター試験と、その後の2次試験の結果で評価されますが、他大学に比較して、若干ですが国語、社会での評点のウェイトが高い結果となっています。この微妙な配点でさえ、予備校の綿密な入試結果の解析は見逃さず、他大学に比較して明らかに国語、社会の得点に秀でた、逆に言えば数学、物理での得点が低い学生が入学しています。恐らく大学によっては極端に学力のミスマッチが起こっているでしょう。このミスマッチは適正のミスマッチにも大きく影響し、本人の適正や志向とは異なる大学への入学を強いられる結果となります。以前から問題となっている偏差値による輪切りの結果です。これは幾分緩和される傾向に有りますが、ある意味、素直な学生が増えた結果なのか、親や高校の進路指導のもとで少なからず存在します。
本人の適正や志向の変化に伴って、早期に進路変更することは好ましいと考えられます。これからの長い人生にとって、1年、2年の遠回りは大きな問題とはなり得ないでしょう。大きな問題は中退ではなく、事実上の休学状態の学生です。近年、大学にとって何がしかの原因で、大学生活になじめず、講義等大学に足を運ばない学生が増えて来ています。特に問題となっているのは2つのタイプの学生です。
一つは、いわゆる仮面浪人と言われるタイプです。これは学生本人にとっては大きな問題ではないかもしれません。仮面浪人とは大学に入学しながら、他の大学の受験勉強を行い入試に備える学生です。まったく講義には出ず、ほとんどの場合、入学と同時に何らかの理由付けをして休学届けを提出し、正式に欠席する学生です。本人にとっては保険のようなものでしょうが、その学生が入学したために、他の意欲ある学生が入学する機会を閉ざしていることは少なからず問題となるでしょう。
もう一つは学校生活になじめず、鬱病等の精神疾患を患い、講義等出席から徐々に遠ざかっていくタイプです。講義に出席しない学生は以前から少なから在籍してました。また、それが原因で留年する学生も相当数いたのです。現在との大きな違いは勉学意欲をなくす以上に社会生活自体に意欲をなくしている事です。アルバイトに精を出すでもなく、趣味等に没頭するでもなく、悪い意味での「適当」に生活しているのです。「ボッチ」という言葉が有るように、人付き合いが苦手な学生が多くなったのも一つの原因ですが、やはり根幹は適正や志向のミスマッチであると考えられます。大学入学前の数年間で自分の適性と志向を十分考えた上での進路選択であるべきですが、必ずしもその選択が正しいとは限らないでしょう。また、すべての学生にとって、その数年間が十分であるとは限りません。その場合、進路変更を容易に行え得る事、少なくともその決定を阻害する要因を取り除く事が必要でしょう。現実には入学後の進路変更は、ほとんどの場合、中退を伴い、大学であれば再試験を受ける事になり、希望が叶う保証は何もありません。また家族を含む世間一般の評価からは必ずしも「中退」という言葉は芳しく有りません。したがってその障害は経済的、将来的なリスク以上に大きいのです。入学後、早期のうちでの中退を伴う進路変更のハードルを下げる事は重要な課題であると考えられます。
今回の佳子さまの決断と、その決断を評価された秋篠宮家、および天皇陛下には敬意を表するとともに、この行為が進路変更のハードルを下げることにつながるよう期待して止みません。