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なぜ台風14号はUターン?秋雨前線と一体化して連休は広範囲で大雨に:気象予報士解説

植松愛実気象予報士・防災士・野菜ソムリエ
21日9時の予想天気図(気象庁HPより)。南下する秋雨前線にUターン台風が一体化

21日は梅雨前線が北陸~関東北部付近まで南下し、前線上の低気圧の雨雲がかかる石川県~東北や、Uターンしてくる台風14号が近づく九州北部を中心に大雨となるでしょう。(10時51分追記:石川県の輪島市・珠洲市・能登町に大雨特別警報が発表されました。キキクルで自分のいる場所の危険度を確認して身の安全を守ってください。)

台風14号と秋雨前線は一体化しながら南下し、22日(日・祝)になると大雨エリアが拡大しますが、23日(月・振休)には乾いた晴れになるところが多くなる見込み。
なぜ台風14号はUターンしてくるのか、連休中と連休明けの天気も含め気象予報士が解説します。

台風由来の暖湿気が合流!21日は前線の活動が活発に

21日(左)朝、(中)昼過ぎ、(右)夜の天気分布予報(気象庁HPを元に作成。
21日(左)朝、(中)昼過ぎ、(右)夜の天気分布予報(気象庁HPを元に作成。

21日は秋雨前線付近に向かってさらに暖湿気が強く流れ込み、すでに20日から大雨になっている石川県~東北にさらに100ミリ以上の雨が降りそうです。
台風14号は前線に取り込まれながら温帯低気圧に変わる見通しで、この低気圧に近い九州北部でも雨の量が多くなるほか、長崎県の壱岐・対馬では夜にかけて風が強くなるでしょう。
また、前線に向かう暖湿気の影響で、夜は中国・四国でも雨が強まるおそれがあります。

一方、東海~関東では晴れ間があり、東京や名古屋で35度以上の猛暑日になりそうです。

なぜUターン?実は季節が進んでいる証

台風情報(気象庁HPより)
台風情報(気象庁HPより)

そもそも、秋の台風というのは日本付近でUターンすることの方が多いです。
日本の南の海上までは貿易風(下図の水色矢印)や太平洋高気圧の縁(ふち)を回る時計回りの風(オレンジ色矢印)に流されて北西方向に進み、日本付近まで来ると今度は偏西風(黄色矢印)に流され、まるで右折するように東へ進むためです。

秋に台風がUターンしやすい理由(筆者作成)
秋に台風がUターンしやすい理由(筆者作成)

では逆に、なぜ夏の台風がUターンしないかと言うと、偏西風が日本付近を吹いていないから。
夏の間、偏西風はかなり北の方を吹いていて、秋になるとようやく日本付近まで南下してくるのです。
つまり、台風がUターンするようになるのは、季節が進んでいる証と言えます。

(ちなみにやや専門的な話ですが、偏西風は暖気と寒気の境目を吹いていて、地上における暖気と寒気の境目は秋雨前線になるので、偏西風は秋雨前線の上空あたりを吹いていることになります。)

大雨は22日まで、23日は乾いた晴天多く

22日(日・祝)は全国的に雨で、秋雨前線が太平洋側まで南下して大雨エリアが拡大します。さらに台風14号から変わる低気圧が通過する北陸~東北で再び激しく降りそうです。

一方、23日(月・振休)になると、秋雨前線は本州よりも南まで下がり、北日本以外は乾いた晴れに。気温が30度以上のところが多いため「秋らしい」とは言えないかもしれませんが、ようやく少ししのぎやすくなるでしょう。

来週後半はまた前線と熱帯低気圧…?

週間予報(気象庁HPを元に作成)。
週間予報(気象庁HPを元に作成)。

連休が明けたあと、来週の後半には再び広い範囲で雨マークが並び、前線が太平洋側にかかりそうです。

しかも、このタイミングでまた熱帯低気圧が北上してきて、暖かく湿った空気が送り込まれるおそれも…。

連休明けもこまめな気象情報の確認が欠かせなくなりそうです。

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気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

気象予報士・防災士として講演・執筆を行う傍ら、野菜ソムリエ・食育インストラクター・薬膳マイスターとして出張料理人(一般家庭での作り置き代行)としても活動。NHK・民放各局で気象キャスターを歴任し、報道の現場や防災、気候変動・地球温暖化に関する最新情報にも詳しい。著書に『天気予報活用ハンドブック~四季から読み解く気象災害』(竹下愛実名義・共著)がある。

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