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日本大学広報部に対する公開質問状

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
24日に関西学院大学に再提出予定の回答書で日本大学は明確な釈明ができるのか?(写真:ロイター/アフロ)

 22日に悪質タックルの当事者である宮川泰介選手が謝罪および説明会見を行った。そこで語られた事実関係は、これまで日本大学が説明してきた内容とは明確に食い違うものだった。24日に改めて日本大学から関西学院大学に回答書が再提出されるわけだが、どんな内容になるにせよ宮川選手の発言がしっかり反映された上で論証されたものでなければ、誰しもが納得できないだろう。

 今回の会見で判明したことだが、同席した弁護士の説明では、アメフト部とは別の立場で大学本部および大学総務部が宮川選手親子を呼んで聞き取り調査を行っているということだ。あくまで回答書は両大学のアメフト部間でのやりとりになるわけだから、アメフト部、宮川選手双方から聞き取り調査を行った立場から、日本大学として今回の事案の真相について調査結果を明らかにする責任があるのではないだろうか。

 それを踏まえた上で、昨夜宮川選手の会見に関する公式コメントを発表した同大広報部に対し、公開質問状というかたちで彼らが説明すべき点を考えてみたい。

 1)まず根本的なことだが、昨夜の公式コメントはあまりに抽象的すぎるという点だ。広報部としてのコメントなのか、それとも大学としてのものなのか、はたまたアメフト部のものなのかが判然としていない。

 コメントの中には『本学といたしまして、大変申し訳なく思います』とある一方で、後半部分には主語が曖昧な『言葉足らずであったことを心苦しく思います』や『コミュニケーションが不足していたことにつきまして、反省いたしております』が登場する。やはり心苦しく思い、反省しているのが誰なのかを明確にすべきではないか。

 2)昨夜の公式コメントでは『コーチから「1プレー目で(相手の)QBをつぶせ」という言葉があったことは事実です』とした上で、改めて内田前監督が違反プレーを指示した事実がないと説明している。だが会見上での宮川選手はこの発言以外にも、「相手のQBがケガをして秋の試合に出られなかったらこっちの得だろう」(コーチ)、「これは本当にやらなければならないぞ」(コーチ)、「やらなきゃ意味ないよ」(前監督)──などの発言があったことも明らかにしている。

 これらの発言は明らかに「つぶせ=ケガをさせろ」に繋がるものと受け取られかねないが、それらの発言についての事実関係はどうなっているのか。また前監督やコーチは、プレーの中で相手選手をケガさせても構わないという考えで発言していたのか。

 3)今回の宮川選手の説明で、コーチの伝言を伝えた先輩選手やコーチの指示を一緒に聞いた同じポジションのチームメイト、さらに試合後の前監督の発言を聞いている多くの選手がいることが判明した。大学側は聞き取り調査をするにあたり、そうした選手たちも調査の対象とし前回の回答書に盛り込んでいたのか。

 もしそうでないとしたら今回の宮川選手の説明を聞いた上で、新しい回答書には選手たちの聞き取り調査が反映されているのか。

 4)大学側の主張通り違反プレーの指示がなかったとしても、宮川選手はすでにQBがパスを投げ終えていたのを理解した上で、悪質タックルを敢行している。それでも退場処分になるまでプレーを続行させたということは、前監督が違反プレーを容認したということか。

 また容認したとするならば、アメフトの指導者として絶対に看過できない悪質なタックルをしながら容認した理由は何だったのか。

 5)宮川選手親子は被害者の選手に直接謝罪したい旨を大学側に伝えたところ控えるように指示されたとしている。その事実関係は確認できているのか。もしそれが正しいとすれば、その理由は何なのか。

 6)宮川選手は会見で悪質タックルをするに至った経緯を関係者の発言を交えて説明している。アメフト部の聞き取り調査を踏まえ、それらの事実関係は確認できているのか。

 もし仮に宮川選手の発言に虚偽があったと確認された場合、大学として法的措置も踏まえ何らかの対策を考えているのか。

 7)すでに内田前監督の辞任は受理されているが、すべての聞き取り調査を踏まえた上で大学としてアメフト部に対し何らかの措置を考えているのか。また今後の指導体制について大学が介入することはないのか。

 こうした疑問点がある中、23日夜になって内田前監督と井上奨コーチが出席し緊急会見が行われた。1時間半以上に及んだ会見となったが、違反プレーの指示に繋がるような発言を否定した上で、宮川選手を悪質タックルに追い込んでしまった指導のつたなさが原因だったという弁解に終始し、最後まで釈然とする発言を聞くことはできなかった。

 両者の語彙の無さも手伝って会見は終始押し問答のようなやりとりになってしまったが、結局その内容は前回の回答書を踏襲するかたちでしかなかった。ならば関西学院大学に回答書を提出した時点でこのような説明会見を実施していればよかったはずだし、そうしておけば宮川選手も会見を行わずに済んでいたかもしれない。2人が口を揃えて「アメフトを続けてほしい」と発言したことは、むしろ空々しくさえ感じられた。

 さらに会見の最後に第三者委員会の設置を明らかにしているが、前回の回答書を受理した関西学院大学の反応を確認した上で第三者委員会を設置していれば、第三者委員会の見解で新しい回答書を提出できていたはずだ。残念ながら新しい回答書に選手たちの聞き取り調査が反映されているのか疑念しか残らない。

 いずれにせよ今後は第三者委員会に調査を委ねながら、アメフト部に任せるのではなく日本大学本体が主導していくべきだろう。その中でいまだ釈然としない疑問点を明確にしながら、関西学院大学および被害者選手とその家族が納得できるだけの説明を尽くしていくしか解決の道はないように思う。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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