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Choose Life Projectへの資金提供で立憲民主に政治資金規正法違反の疑いも

立岩陽一郎InFact編集長

Choose Life Project(以下、CLP)は、立憲から2020年3月以降に広告代理店や制作会社を通じて「番組制作費」として約1500万円の資金援助を受けていたと、同団体のサイトで公表した。 

援助を行った立憲民主党(以下、立憲)も、当時幹事長を務めていた福山哲郎議員の名前で支援の事実を認めるコメントを発表した。

その詳しい経緯は様々な記事で確認して欲しいが、実はこれで一件落着とはいかない。説明は食い違う上に、法的な問題も有るからだ。

その後、福山議員の事務所に具体的な支援の状況を問うたところ、支払いは以下の4回との回答があった。

  • 2020年 8月7日 4,475,390円
  • 2020年 9月4日 5、637,090円
  • 2020年10月9日 2,511,420円
  • 2020年10月9日 2,384,370円

総額で1500万円余。何れも「動画制作または企画広報費」として支払ったという。CLPは約1500万円の支援を得ていたとしており、その説明と矛盾しない。

しかし、細かく見るとCLPと立憲の説明には食い違いが有る。CLPは支援について以下の様に説明している。

「政党から資金援助を受ける形ではなく、市民の手によって支えられるメディアこそが求められているという実感から、2020年7月に、CLPの理念をまとめ法人化し、「公共メディアを作る」としてクラウドファンディングを開始しました。その後、立憲民主党に資金提供の終了をお願いし、終了しました」

つまり、あくまで立ち上げまでの期間に支援を受けたという説明だ。

ところで、3000万円以上を集めたクラウドファンディングは2020年7月から9月にかけて実施されている。これは立憲からの資金提供の時期と重なる。重なるというより、正確には8月から10月と、立憲からの支援の方が後になっている。

勿論、クラウドファンディングで得られる資金は実施後に直ぐ受け取れるわけではない。しかし立憲の説明が正しいとなると、「政党から資金援助を受ける形ではなく、市民の手によって支えられるメディア」という説明とは矛盾する。正しくは、「政党と市民の双方から支援を受けるメディア」となるからだ。

更に立憲には法的な問題も指摘できる。立憲の2020年の政治資金収支報告書を見ると、以下のようになっている。

このうちの博報堂に10月9日に支払われた2件。これが立憲が認めた支払いの2件にあたる。博報堂は取材に対して、「取引さまとの取引内容の詳細については、守秘義務もございますので、本件に関わらず弊社からお答えすることはできません」としながらも、「立憲民主党さんにご確認いただけますでしょうか」と回答し、事実上、介在の事実を認めている。

立憲は1月6日に発表した説明で、「番組制作を支援した」としている。これは当然、番組制作を依頼したということではない。CLPも「資金提供を受けていた」と認めている。記載のあった10月9日の博報堂への2件の支払いは「企画広報費」となっているが、その全額がCLPに支払われている可能性が高い。つまり、CLPへの支払いを隠すために博報堂に支払ったとの疑惑が拭えない。

博報堂は取材に対して、「弊社から制作会社に対して支払っています。制作会社がどちらにどう支払うかは制作会社の判断です。弊社ではわかりません」と回答している。因みにこの制作会社は立憲との関係の深いことが指摘されている東京都内の会社だ。

つまり、政治資金収支報告上に記載が確認されている博報堂への支出は虚偽記載にあたる疑いが有るということだ。

これについて福山議員の事務所は以下のように答えている。

「統括を行う広告代理店を通じて制作会社に制作依頼を行うことは商慣習であり、かつ本件は取引実態がありますので、政治資金収支報告書への記載は正確なものです」

勿論、「企画広報費」を広告代理店を通じて依頼することは「商慣行」であり、それに異論は無い。しかし普通に考えたらCLPへの支出は「寄付」だ。

立憲にはこの年、政党交付金として41億円余、立法事務費として2億9000万円余の税金も入っていることを指摘しておく。そうした税金がCLPの支援に使われてはいないのか?そこも説明が必要だ。

CLPの佐治洋・共同代表は、説明責任を果たしたうえで速やかに辞任し、CLPの解散も含め検討すると表明しているが、現段階で行われている説明は十分とは言えない。

この問題は、エッセイストの小島慶子さんやジャーナリストの津田大介さんらCLPの番組に出演していた5人が抗議声明の形で公表して明らかになった。CLPや立憲が自主的に明らかにしたものではない点も重要だ。

この問題を巡っては様々な意見が出ている。CLPを擁護する意見も多い。意見は自由だが、先ずは事実を踏まえる必要が有る。

(修正)当初の記事で「8月7日と9月4日の支出については政治資金収支報告書上で確認できない。これは2020年9月の国民民主党などの合流による新党結成の前ということで記載が無いと思われるが、何かしらの形で記録に残すべきだ」としていましたが、解散分に記載が残されていました。指摘を頂き、確認をした上で修正させて頂きます。この点については私のミスです。立憲の関係者にお詫びします。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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