きょう衆議院通過予定の2023年度予算案で、税収の大幅増!その謎に迫る
これまで衆議院で審議されていた2023年度予算政府案は、2月28日に衆議院本会議で採決が行われる予定で、与党の賛成多数で可決する見通しである。
過去最高の税収
2023年度予算政府案では、一般会計の税収が69兆4400億円と、過去最高となることを見込んでいる。これは、2022年度当初予算での65兆2350億円よりも4兆2050億円も多い。
2022年度当初予算成立後の税収実績を踏まえてアップデートした税収見積もりとして、2022年度第2次補正予算段階での税収があって、それは68兆3590億円と見込んでいるから、それよりもなお1兆0810億円も多い。
コロナ禍で景況がまだ十分に回復していない中で、2022年度から2023年度にかけて、1兆0810億円も税収が増えると見込んでいるのだが、それは「捕らぬ狸の皮算用」になりはしないだろうか。
それを確かめるべく、税収弾性値という指標で見てみよう。税収弾性値とは、名目成長率(名目GDP増加率)が1%上がると税収が何%増えるかを示す指標である。この値は、通常の政府の見通しでは1.1としている。税収弾性値が1.1であるとは、名目成長率が1%上がると税収が1.1%増えることを意味する。
政府は、2023年度予算案を2022年12月に閣議決定するのに合わせて、2023年度の経済見通しも示している。これによると、2023年度の名目成長率は、2.1%と見込んでいる。
他方、2023年度予算案の税収は、2022年度第2次補正予算後ベースと比べて1兆0810億円、率にして約1.6%増加すると見込んでいる。これで測ると、税収弾性値は0.74となる。1.1よりも低い。
もちろん、2023年度予算案は税収の見込み額を示したものであって、その額を超えて税収が入ることを否定しているわけではない。どちらかというと、手堅く入る税収を見込んで計上している。
そうみると、過去最高となると見込んでいる2023年度予算案の税収は、それなりに保守的に見込んだものということができよう。この増収は、ある税目で大幅に増税したからというわけではなく、経済が成長するのに合わせて税収が増える(自然増収)によるものといえる。
各税目の税収
では、2023年度予算案ではどの税目の税収が大きく増えると見込んでいるか。2022年度当初予算と比較して、最も大きく増えると見込んでいるのは消費税である。
消費税は、2022年度当初予算よりも1兆8110億円増えて、23兆3840億円となるとしている。消費税の標準税率が2019年10月に10%となって以降、コロナ禍に直面しながらも、堅調に増え続けている。消費税を増税したら、むしろ税収が減るというような現象は観察されないのである。
次いで大きく増えるのは、法人税である。法人税収は、2022年度当初予算より1兆2660億円増えて、14兆6020億円となると見込んでいる。
その次に大きく増えるのは、所得税である。所得税収は、2022年度当初予算より6660億円増えて、21兆0480億円となるとしている。今や、消費税収の方が所得税収よりも多いという税収構造になっている。
消費税、所得税、法人税という3つの基幹税の税収は、合わせて59兆0340億円となる。これら3つの税で、税収全体の約85%を占めている。
3つの基幹税以外で興味深いのは、関税である。関税は、3つの基幹税に次いで4番目に大きく増えると見込まれている。関税は、2022年度当初予算と比べて2970億円増えて、1兆1220億円と見込んでいる。関税が増える要因は、輸入品の価格が上がっていることが考えられる。
このようにして国民が納めた税収が、有効に活用されることを願う。
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