10年ぶりの24時間レースも。F1をはじめ2018年は要注目のレースイベントが目白押し!
少しずつ春の香りが漂い始め、2018年のモータースポーツイベントの開幕が近づいてきた。今年は好景気も後押ししてか、全国のサーキットで様々な新レースイベントが予定されている。また、既存のモータースポーツイベントも続々と新しい施策を準備しており、国内のモータースポーツは昨年以上に活況を見せそうだ。今回は今年要注目のレースイベントをご紹介しよう。
富士SUPER TEC 24時間レース
まず、今年最大の注目を集めそうなのが、富士スピードウェイ(静岡県)で6月に開催される「富士SUPER TEC24時間レース」だ。国内では北海道の十勝スピードウェイで開催されて以来、久しぶりの24時間耐久レースの開催である。
24時間耐久レースは市販車をベースに争うツーリングカー耐久レースの「スーパー耐久シリーズ」の1戦として開催される。同シリーズは1994年から2008年まで先述の十勝で24時間レースをシリーズの1戦として組み込んでいた歴史があり、実に10年ぶりの復活。また、富士スピードウェイは創業当初の1967年、68年に24時間耐久レースを開催していたことがあり、なんと50年ぶりとなる。
開催カテゴリーの「スーパー耐久シリーズ」はバラエティに富んだマシンが出場することが最大の魅力。本格的なレーシングカー仕様となるFIA GT3規定のフェラーリ488やメルセデスベンツAMG、ポルシェ911などのスーパーカーからマツダ・ロードスター、ホンダ・フィット、トヨタ・ヴィッツなどのコンパクトな車両まで、全部で8つのクラスに別れて混走する。参加選手はマシンのオーナーなど趣味としてレースを戦うジェントルマンレーサーが多いが、24時間レースでは通常のレース以上に交代ドライバーが必要となるため、SUPER GTに参戦するプロドライバーが数多く出場すると予想される。そういう意味でもお祭り感たっぷりの雰囲気になりそうだ。
そして、何と言っても魅力的なのはチケットの安さ。6月1日(金)に予選が行われ、6月2日(土)から3日(日)にかけて24時間の決勝が開催されるスケジュールだが、3日間通し券の前売り観戦券は4860円と発表されている(販売は3月22日から)。富士スピードウェイで車中泊して24時間楽しむのも、夜間は御殿場などの街を楽しむのも良いだろう。24時間レースらしい楽しみ方がある。
リーマンショック後に姿を消した24時間レースの再開は低迷していた国内モータースポーツの復活を表すトピックと言える。そういう意味でも「富士SUPER TEC24時間レース」はぜひ体験したいイベントだ。
鈴鹿10時間耐久レース SUZUKA 10H
鈴鹿サーキット(三重県)では8月にSUPER GTの1戦として開催されていた夏の耐久レース「鈴鹿1000km」をリニューアル。FIA GT3車両を中心とした国際色豊かな耐久レース「鈴鹿10時間耐久レース(SUZUKA 10H)」を新たに開催する。
このレースはバサースト12 時間(オーストラリア)、スパ24時間(ベルギー)、カリフォルニア8時間(アメリカ)を含む「インターコンチネンタルGTチャレンジ」の1戦として開催される。同シリーズはアウディ、ベントレー、メルセデスベンツ、マクラーレン、ポルシェの5メーカーがマニュファクチャラーズ(メーカー)のタイトルをかけて争う選手権で、ワークス級の強固な体制となったチームの参戦が期待されている。
海外勢を迎え撃つのは国内の「スーパー耐久シリーズ」「SUPER GT(GT300クラス)」に参戦するチームだ。FIA GT3車両だけでなく、SUPER GTのGT300クラス用に作られたJAF-GTと呼ばれる規定のマシンも出場する。国内から最初にエントリーを表明したのは昨年のGT300チャンピオン「GOODSMILE RACING with Team UKYO」のメルセデスAMG。元F1ドライバーの片山右京が監督を務め、人気ドライバーの谷口信輝、片岡龍也、そしてこちらも元F1の小林可夢偉がステアリングを握る。人気キャラの「初音ミク」のカラーリングを施し、国内屈指の人気を誇るチームが日本代表として戦うシーンは多くの人の関心を引きつけそうだ。
こちらもエントリーの詳細な発表はまだだが、鈴鹿サーキットは新イベント「SUZUKA 10H」を夏恒例のイベントとして定着させるべく、レースウィークを通じて様々な施策を行うと見られる。その詳細は3月10日(土)の記者会見で発表される予定になっている。
F1日本グランプリ
秋の毎年恒例イベントといえば、鈴鹿サーキット(三重県)で開催される「F1日本グランプリ」だ。今年は鈴鹿での開催が1987年の初開催から数えて30回目という節目の大会となる。
鈴鹿のF1は幾度となくワールドチャンピオン決定の舞台となったほか、アイルトン・セナとアラン・プロストの名勝負、鈴木亜久里、小林可夢偉の表彰台など国内問わず世界中のファンにドラマを提供してきたイベントだ。「SUZUKA」という地名がヨーロッパを中心に大都市並みの知名度を誇るのもF1が開催されていたからに他ならない。2007年、2008年と開催権を富士スピードウェイに一旦譲るも2009年から「日本グランプリ」の開催を再開。まさに鈴鹿の代名詞的なイベントになっている。これまでの総来場者数は、約776万人という規模。
近年は地上波テレビによるF1中継の消滅や日本人ドライバーの不在などが要因で観客動員数を減らしているが、鈴鹿の「F1日本グランプリ」は10年、20年と来場するリピーターが多く、親子孫の3世代に渡って楽しむファンも増えている。ここ数年は外国人向けにチケットを販売していることもあり、特にグランドスタンドでは外国人のファンが目立つ。熱狂的な国内のファンに負けじと応援コスチュームに身を包んで楽しむ海外のファンが来場し、年々インターナショナルな雰囲気を増しているのが特徴だ。
その理由の一つとして考えられるのが、他国のグランプリと比べて現役F1ドライバーが出演するステージイベントが多く、レースウィークにほぼ全てのドライバーの姿をコース内だけでなくイベント会場で見ることができること。世代を超えて、国籍や文化を超えて、F1という共通言語で通じ合うファンが集う場になってきている。近年、F1は変革期にあり、ネット上にはF1に対する厳しい意見も見られるが、ここにしかない雰囲気があるのがモータースポーツイベント「鈴鹿・F1日本グランプリ」である。
2016年のF1日本グランプリのファンの盛り上がりを紹介(F1公式YouTubeより)
鈴鹿サーキットは30回記念の「F1日本グランプリ」開催にあたり、記念ロゴを発表。そのプレスリリースで「30回記念大会ならではの企画をお客様に提供すべく準備を進めてまいりますとコメントしている。
MotoGP日本グランプリ
10月にはツインリンクもてぎ(栃木県)でオートバイレースの最高峰「ロードレース世界選手権」の「MotoGP日本グランプリ」が開催される。MotoGPは関東圏を中心に人気が回復しており、来場者数も増加傾向にある。既存のオートバイファンだけでなく、選手やレースそのものへの関心が高く、新しいファンが増えているのも大きな特徴と言える。
今年はその人気にさらに火がつきそうな要素がある。久しぶりの日本人MotoGPライダー、中上貴晶の凱旋レースとなるからだ。最高峰MotoGPクラスでは2004年の玉田誠以来、日本人選手の優勝が記録されていないが、Moto2(600cc)クラスで常に優勝争いを展開するなど活躍した中上への期待は大きい。ここ数年、長年MotoGPを見続けているファンはもちろん、ここ数年で興味を持ったファンにとっても、中上は感覚的には「自分の息子」のような存在だ。昨年は日本グランプリのMoto2クラスで地元ファンを前にポールポジションを獲得してみせるなど、完全に国内のファンの心を掌握している。
中上は現在26歳とMotoGPデビューの年齢としては決して若くはないが、闘争心溢れる目つきと優しい性格から同世代や若年層の関心を惹きつける魅力がある。ホンダのワークスライダーという好待遇の体制で1年目から活躍を見せることになれば、新しいファンも増えるに違いない。近年、モータースポーツの世界選手権で機会が少なくなってしまった日本を代表する選手を応援する楽しみ。久しぶりにそんな存在となり得るのが中上貴晶だ。応援フラッグの日の丸がツインリンクもてぎを埋め尽くすことになれば、最高のレースイベントになるに違いない。なお、近年のチケットの売れ行きはかなり好調であるため、観戦の計画は早めに立てた方が良いイベントになっている。
今回は4つの特別感があるイベントを取り上げたが、シリーズとしては「SUPER GT」がジェンソン・バトンの参戦もあり、人気・関心がさらに上昇しそう。また2019年のWRC(世界ラリー選手権)の招致に向けて、今年は11月にリハーサルイベントの開催も計画されている。2018年のモータースポーツは昨年以上に多くの観衆を集めて盛り上がりそうだ。