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「米軍の対北先制攻撃準備完了!」米メディアが米軍の攻撃シナリオを一斉報道

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
米国の戦略爆撃機「B-52]

 トランプ大統領が11日に「北朝鮮が賢明でない行動をした場合、軍事的解決策が完全に出来ている。可能ではないと思っていることが起きるだろう。北朝鮮は気を確かに持って、我々の言うことに耳を貸すべきだ。そうでなければ、米国によって苦痛を強いられた一部国家(イラク)のような苦痛をなめることになるだろう」とツイートしたことでニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなど米メディア(12日付)は一斉に軍事専門家らのコメントを引用し、米国による対北軍事攻撃シナリオを伝えていた。

 ニューヨーク・タイムズには対北攻撃のシナリオとして幾つかのオプションが挙げられていた。

 一つは、一回限りの軍事アクションで、トランプ大統領が命令を下せば、北朝鮮の20あるミサイル基地のうち一か所だけを選別し、戦略爆撃機「B-1B」で叩くオプションだ。しかし、専門家はこの方法は金正恩委員長を刺激し、北朝鮮軍が韓国や日本に向けた兵器を向けることのリスクを挙げていた。

 次に、北朝鮮が試験発射した中長距離弾道ミサイル「火星12号」をTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)やグアムのミサイル防衛システムを利用して、迎撃するオプションである。

 このオプションならば、一度の攻撃で北朝鮮の挑発意思を砕き、核兵器を破棄するよう金委員長を圧迫することができるという。しかし、仮に迎撃に失敗すれば、米国は北朝鮮に弱点を見せ、今後北朝鮮がミサイル発射を乱発し、米国を脅かす副作用が想定されるとのことである。

 北朝鮮との全面戦争を想定した奇襲攻撃のオプションもある。

 奇襲攻撃を掛けた場合、北朝鮮の報復が予想されるためこの場合は、最初から戦略爆撃機と原子力空母が合同で空襲攻撃する作戦となる。北朝鮮が反撃してきた場合は、朝鮮半島周辺に配置されている駆逐艦からトマホークミサイルを発射し、またグアムと日本に配置されている戦略爆撃機で総攻撃する。

 新アメリカ安全保障センター上級研究員のジェリー・ヘンドリックス退役海軍大佐はこの場合、ステルス戦闘機「F-22」と「F-35」,同じくステルス核戦略爆撃機「B-2」と韓国及び日本の戦闘機「F-15」と「F-16」が合同作戦を行う。このオプションは北朝鮮が駐韓米軍と駐日米軍基地に向け報復攻撃に出ることで多くの民間人の犠牲を伴う。

 CIAや特殊部隊によって金正恩政権を交代させるオプションもある。

(参考資料:始動した米CIAの極秘「金正恩除去作戦」

 所謂、特殊部隊による「金正恩斬首」と核施設の破壊である。この計画を成功させるため米特殊部隊は「30分以内ですべての作戦を終え、(北朝鮮から)撤収する訓練を行っている」と同紙は伝えている。また、サイバー攻撃という手もある。サイバー攻撃を仕掛け、北朝鮮のミサイル発射システムを麻痺させる案である。

 一方、ワシントン・ポストは米太平洋司令部が11日に「グアムのB-1B爆撃機は命令が下れば、『今夜でも戦える』任務を遂行するため待機中」とツイッターしたことを取り上げ、「今夜でも戦える」は太平洋司令部のスローガンで、「今すぐに戦闘になっても勝利できる準備態勢を意味している」、と報じている。

(参考資料:北朝鮮に対する米軍の先制攻撃はいつでも可能な状態

 同紙は、このツイートをトランプ大統領が自身のツイートに引用したのは「北朝鮮を攻撃する準備ができていることを意味する」と伝え、何よりも「B―1B」を強調したことは対北先制攻撃シナリオを排除できないことのシグナルであると分析している。また、「米軍は朝鮮半島近距離から多様な軍事手段を持っている」として「原子力潜水艦もそのうちの一つである」と紹介している。

 「ウォールストリート」(WSJ)は地上軍と戦車、野砲、戦闘機、戦艦、潜水艦など部分別に南北の軍事力を比較し「中国の介入と核兵器使用という二つの変数を除外すれば、米韓連合軍の勝利は確実である」と報じている。

 戦争が勃発すれば、米軍が制空権と制海権を掌握し、北朝鮮の在来式兵器も米韓連合軍の先端兵器によって圧倒されると予想している。また、北朝鮮がミサイル砲撃に出たとしても、これもやはりパトリオットで相当部分迎撃できるとしている。

 ウォールストリート・ジャーナル(WST)は「北朝鮮が政権終末になる戦争の危険を冒すかは不透明だが、北朝鮮が先制攻撃しても、米国が先制攻撃しても、ソウルを中心に大量の人命被害の発生は避けられない」としている。

 米空軍合同参謀本部次長のポストにあったトーマス・マッカーニ予備役中将はFOXビジネスインサイダーとのインタビューで「金正恩がソウルを砲撃すれば、米空軍の核爆撃機による「クロム・ドーム」作戦で北朝鮮は地球上から消えてしまうだろう」と語っていた。さらに同氏は「米国の先制攻撃に北朝鮮が反撃すれば、金正恩の残りの人生は15分しか残らない」として「北朝鮮はこうしたことを知っているので米国の先制攻撃に反撃できないだろう」と付け加えていた。

 一方、CNNは米国と同盟国が先制攻撃に出れば、無垢の市民が十字砲火にさらされ双方で無数の死傷者が発生するので、米軍の軍事作戦は「戦闘初期の段階で輪郭が現れる迅速で多面的な攻撃で構成されることになる」との専門家のコメントを紹介していた。

(参考資料:「1994年の米朝開戦危機」はどうやって回避されたのか? カーター元大統領の「訪朝報告」

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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