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薬の新しい受け取り方が4月から導入 「リフィル処方箋」について

倉原優呼吸器内科医
(提供:イメージマート)

2022年4月から「リフィル処方箋」の制度が導入されます。リフィル処方箋とは、一定期間内に反復使用できる処方箋のことです。これまでは医師が決めた日数分の薬をもらえましたが、リフィル処方箋は定められた期間内・回数内であれば同じ処方箋を使って、医師の診療なしで繰り返し薬をもらえる仕組みです。

化粧品を使っている人はイメージが湧くと思いますが、「リフィル」は「補充する」という意味です。つまりリフィル処方箋は、1つの処方箋で「おかわり」ができるということです。

リフィル処方箋導入の背景と概要

患者さんに検査や治療をおこなった際の診療報酬の点数は、原則として2年に一度改定されます。今回の改定で、リフィル処方箋の導入が決定しました。

慢性疾患で長期間同じ処方を続けている患者さんの中には、コロナ禍の現在、できるだけ受診頻度を減らしたい人もいます。医師から処方される薬の日数は近年徐々に延びており、31日以上の処方箋は全体の34.7%にのぼります(図1)。私も、安定している患者さんに薬を長期処方することがあります。

図1. 処方日数別の処方割合(参考資料1より引用)
図1. 処方日数別の処方割合(参考資料1より引用)

リフィル処方箋制度は、欧米ではかなり前から導入されており、諸外国とようやく足並みがそろうことになります。

リフィル処方箋制度の概要は表1のようになります。「おかわり」の使用回数の上限は3回までです。

表1. リフィル処方箋制度の概要(筆者作成)
表1. リフィル処方箋制度の概要(筆者作成)

実際に使われるリフィル処方箋は図2のようになります。

図2. リフィル処方箋(見やすいよう縮尺等を変更して筆者作成)
図2. リフィル処方箋(見やすいよう縮尺等を変更して筆者作成)

リフィル処方箋の対象として想定されるのは、生活習慣病を含めた慢性疾患で長期に安定したケースです。病態が安定していない患者さんが、リフィル処方箋を希望しているからといって安易に発行することはできません。「普段この病院に来ていないけど、とりあえず診察なしでこの薬をください」なんてのもダメです。

私たち医師は患者さんの病状をふまえて処方日数を決めています。「医学的に30日処方で問題ない」と考えた患者さんの病状が安定している場合に、30日処方を3回まで繰り返してよいとするのがリフィル処方箋です。

しかし、中には90日などの長期処方を受けている患者さんもいます。これをリフィル処方箋にして30日処方×3回にすると、患者さんはこれまで3か月に1回薬局に訪れていたのに、1か月に1回行かなければならないことになります。そのため、全ての患者さんにメリットがある制度ではありません。

リフィル処方箋のメリット(表2)

上述したように、医師の診察なしにこれまでと同じ薬が入手できるため、処方箋をもらうためだけの「おくすり受診」を抑制することができます

また、国の医療費抑制につながります。現在、処方箋だけを取りに来る場合であっても、基本的には診察ありきになりますので、再診料や外来管理加算などの保険点数が算定されます。これは医療機関にとっての収益になりますが、安定している慢性疾患の患者さんにおいては、削減可能な医療費ではないかという指摘もありました。

さらに、残薬問題の解決につながります。薬剤師による残薬確認がこまめにできることから、「家に1か月分の薬が余っています」という事態を減らせるでしょう。

表2. リフィル処方箋のメリットとデメリット(筆者作成)
表2. リフィル処方箋のメリットとデメリット(筆者作成)

リフィル処方箋のデメリット(表2)

医師の診察が入らないため、病状の悪化が見過ごされ、医療事故につながる可能性があります。また、医師と患者が面会する機会が減るわけですから、当然双方に誤解が生まれるかもしれません。その代わりに薬剤師が患者の経過を観察する必要性があり、薬剤師が担う医療責任はさらに大きくなります。医療機関と薬局の連携、すなわち医薬連携が十分とは言えない状況でこの制度を導入することは早計という意見もあります。

また、重要なこととして、受診回数が減るので、医療機関の収益が低下します。外来診療が収益源となっている医療機関にとってリフィル処方箋を導入するメリットは少ないでしょう。

なお、投薬量に限度が定められている医薬品(麻薬、向精神薬)や湿布薬については、リフィル処方箋による投薬を行うことはできません。

まとめ

実際にリフィル処方箋制度の運用が始まってみないと何とも言えませんが、広く普及するかどうかはまだ分かりません。

遠方から通わなければならない慢性疾患の患者さんにとってはありがたい制度かもしれませんが、外来診療が収益源となっているクリニックの減収は必至です。となると、リフィル処方箋の運用を避けたいと思う医療機関が多いのでは、という懸念があります。

医薬連携を十分に取ることができれば、良い制度になるかもしれません。医療機関にとって活用しやすい制度になるよう期待しています。

(参考)

(1) 医薬品の適切な使用の推進(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000863579.pdf

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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