住宅は一戸建てから共同・高層化の時代へ
比率の上で増える共同住宅、減る長屋建てや一戸建て
日本は国土が狭く、居住環境の良い場所はさらに限られるため、住宅が高層化されていく。昨今では過疎化が進みインフラや商業地帯の集中など、周辺環境の便宜性などを考慮した結果として、特定地域への居住を望む人が増え、ますます共同住宅化・高層化が進んでいる。その実態を総務省統計局の「住宅・土地統計調査」から探る。
住宅の建て方には一軒家こと「一戸建て」、木造平屋で基本的に1階建の建物が複数に分かれて2軒以上の居住区画を持ち、それぞれ独立した玄関を持つ「長屋建て」、そしてアパートやマンションなどの「共同住宅」などが存在する。個々の住宅様式の戸数比率の推移を見比べたのが次のグラフ。
1958年には2割近くを占めていた長屋建てだが、直近の2013年では3%を切っている。一方、1958年当時は5.6%しかなかった共同住宅は4割以上に達しており、一戸建てに迫る勢いを見せている。一戸建ての価格の上昇、あるいは「手に届きにくい」存在になったのか、それとも居住に関するライフスタイルに変化が生じたのかはこのグラフからだけではわからないが、住宅の建築様式に大きな動きがあることは確か。「一戸建てとマンション、同じ条件ならどちらを手にしたい?」にて解説しているが、一戸建て・共同住宅それぞれに長所・短所があるものの、昨今ではセキュリティの問題や管理の容易さから、共同住宅の方がお手軽さの点で評価されていることは否めない。
増える共同住宅の中身は?
それでは増加する「共同住宅」では、どのような変化が見られるのだろうか。階数別の住宅数推移を見ると、1・2階建の「低層アパート・マンション」形式の伸びが緩やかなのに対し、3~5階の中層、6階以上の高層共同住宅が大きく伸びている。とりわけ15階建以上の高層共同住宅は、元々数が少なかったのも一因だが、著しい増加率を示している。
3~5階の中層共同住宅は一定数ずつ順調に、6階以上の高層共同住宅は加速度的に伸びている。2003年には高層共同住宅は1・2階の低層共同住宅の数を抜き、中層に迫る勢い。その分3~5階の中層住宅の伸びは大人しくなりつつある。
これをさらに細かく区分し、全体に占める割合でグラフを生成したのが次の図。
・1~2階の低層平屋建て型の共同住宅は比率的には減少中(※絶対数は緩やかながらも増加)
・3~5階の中層共同住宅のピークは1993年。以後は緩やかに比率が減少している(※絶対数は増加)
・6~10階の高層共同住宅だけでなく、11~14階、さらには15階以上の高高層共同住宅も着実に割合を増加させている。
賃貸物件・分譲マンションの需要としては「交通の便が良い」「駅に近い」などの立地条件の良さを求める声が大きい。そのような好条件の場所に少しでも多くの物件を確保するためには、必然的に高層化が必要となる。自然の摂理により、高層共同住宅の戸数が増加しているのだろう。
高層(共同)住宅では、6階以上は義務、3階から5階建ては努力目標としてエレベーターの設置が義務付けられている。また入居者の高齢化に伴い、エレベーターを含めたバリアフリー対策の需要も急増中。共同住宅も含め空き家が増えている昨今、住宅を提供する側は少しでも良い条件を揃えなければ、入居者不足に陥る。
今後さらに共同住宅の高層化が続けば、高層共同住宅ならではの環境整備の拡充が求められ、セールスポイントにもなるに違いない。
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