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V候補一角の琉球ゴールデンキングスが今季初黒星 チームを目覚めさせた原点回帰

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
京都ハンナリーズ戦で今シーズン初黒星を喫した琉球ゴールデンキングス(筆者撮影)

 Bリーグは17日、2018-19シーズンの第3節が行われ、開幕から無傷の4連勝を続けていた琉球ゴールデンキングスが京都ハンナリーズに89-94で敗れ、今シーズン初黒星を喫した。

 敵地で迎えた同試合だったが、主導権を握ったのはキングスだった。立ち上がりから見事なボール回しから確率の高いシュートを決めていき試合を優位に進めると、一定リードを保ちながら48-40で前半を終えた。

 ところが後半に入ると、徐々にハンナリーズの反撃を受け始める。地元ブースターの声援にも助けられデイヴィッド・サイモン選手、ジュリアン・マブンガ選手を中心に次々にシュートを沈められ、徐々に点差は縮まり試合は大接戦へと移行。そして第4クォーターに入り遂にハンナリーズにリードを許してしまった。それでも残り時間1分を切っても2点差以内の激しい攻防を続けたものの、最後はハンナリーズに逃げ切られてしまった。

 今シーズンのキングスは、開幕前から優勝候補の一角に挙げられる存在だった。オフに橋本竜馬選手、並里成選手という実績あるベテランPGを補強し、Bリーグ最強のディフェンス力に加え、多彩なオフェンス能力を得ることに成功した。シーズン開幕前に参戦したアーリーカップ、テリフィック12(アジアリーグ主催の国際大会)でもそれぞれ優勝を飾り、その実力を遺憾なく発揮していた。

 シーズンに入っても順調に勝利を挙げ、第2節を終えた時点で栃木ブレックス、アルバルク東京とならび無傷の4連勝スタートを切っていた。一方でこの日対戦したハンナリーズは、開幕前の不祥事で永吉佑也選手が1年間の公式戦出場停止処分を受け、さらに外国籍選手のサイモン選手がチームに合流して1ヶ月未満という状況で、決して万全のチーム状態ではなかった。ハンナリーズの善戦があったのは間違いないが、両チームを比較すればキングスが勝利をものにしなければならなかった試合だったはずだ。

 試合後の佐々宣央HCは、以下のように分析している。

 「先週(の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦)も含めて、やっぱりディフェンスのところがしっくりきていないというか、チームルールが守りきれないという状況が…。それは結局自分の甘さなんですけど、チームを徹底させられていないというところで。相手のシュートが入らなかったら勝てるみたいな試合になったりだとか、相手次第になっちゃってるところがあります。

 得点はとれているというのがなんかこう…。う~ん…。まあいいのか…。ターンオーバーが実際今日は多かったというのが、(オフェンスの)選択としてもあまり良くなかったので。リバウンドはこれだけ上回っている(38対28)ということで、ポゼションのところも、そこでターンオーバーしてしまってポゼションゲームにもできないっていう歯がゆい試合ですね。先週の名古屋戦でその時にもっと危機感を持ってやらならければならなかったのに、まだ危機感が持てなかったことで、そこをしっかり修正してやっていきたいと思います」

 佐々HCの言葉からも明らかなように、チームは開幕から白星を積み重ねていたが、コーチ自身は前節から試合内容にまったく納得していなかったようだ。確かに第2節のドルフィンズとの第1戦は接戦に持ち込まれており、決して佐々HCは自分たちの戦いができているとは感じていなかった。

 それは特にディフェンスだ。昨シーズンのキングスは、平均失点が67.7点でリーグ1位と鉄壁のディフェンスを誇っていたが、佐々HCが指摘するように、先週のドルフィンズ戦第1戦では87点を許し、今回のハンナリーズ戦でも94点を献上してしまった。同HCが「チームルールが守りきれない」とするのは、その点だ。

 さらに佐々HCは、現在のチーム状況を説明してくれている。

 「(前回のドルフィンズ戦から)練習自体は結構準備できたんですけど、試合になってきてしまうと、今年(新加入)のメンバー…、まあジェフ(エアーズ選手)とか、並里とか、竜馬もアグレッシブにエナジー出してやってくれているんですけれども、細かい指示が飛んでっちゃうというところがあるので、まあ情熱的にはやってほしいですけど、情熱は出しながらも冷静に判断できるという部分がこのチームには欠けている部分があったので。

 ディフェンスのターンオーバーって数字には出ないですけど、こっちからすると(選手たちが)すごく違うことをやりまくっているという試合だったので、やはりそこは勝ちゲームに相応しくなかったなと思います。

 プレシーズンの時って他のチームもできあがってきていない状況で、こっちもこのメンバーでどういうシステムでやっていくのか、生かしていくのかを試しながらやっていく中で、一番大事なのは個々の『こいつ、こういうプレーが得意だな』というのを積み上げていって…。それはできてきていると思います。

 あとここからの作業は、より自分たちが危機感を持って修正しないといけないかなっというところで今になっているので、特にディフェンスのところですね。なのでそこの部分を見つめ直して練習からしっかりやって…。まあ練習が少ない中でも、ゲームの中でもそれができるように今シーズンはやっていかないといけないというのがチームとしての質だと思うので、そこが大きなカギになると思います」

 佐々HCの思いは選手たちもしっかり共有している。キングス一筋7年目で、チームキャプテンを務める岸本隆一選手は、以下のように話している。

 「今日(の試合)に限らずなんですけど、自分たちは昨シーズンよりオフェンスがスムーズになってて点数はとれているんですけど、やはり昨シーズンから積み上げてきたディフェンスという部分ができなかったというのがあります。前節もハイスコアなゲームをやっていて勝ち切れてはいたんですけど、遅かれ早かれ今日のようなゲームになってしまったのは、いい方を変えれば今日でよかったなと、ここで学んでいって、もっともっとチームとしてよくなっていかなきゃいけないと思います。自分たちはディフェンスを厳しくやるというのがコンセプトなんだと気づかせてくれたゲームだったかなと思います。

 今日のゲームを踏まえ(危機感が)生まれたと思います。なんかこう、勝ちが転がってくるみたいな感覚でやっていた部分が多かったと思うので、やっはり自分たちでディフェンスをしっかりやって、小さい積み重ねというか、そういうジャブみたいなものが結果的に自分たちの勝ちに繋げてきたという部分があると思うので、何もせずに勝ちが転がってくることはないんだなというのを考えさせられるゲームだったかなと思います」

 もちろん60試合を戦うシーズンを全勝で終わらすことなど不可能だ。その中でチームとして敗北から如何に学ぶかが、重要になってくる。ただ今回の敗北に関して佐々HCは、「今日の敗北に関してはマイナスでしかないと僕は思っていますね」と言い切る。そして「やりきったら新たな反省が生まれてくるじゃないですか。できなかったね、という反省を積み重ねちゃうと何も残らないですからね」と続ける。決してハンナリーズを見下しているのではない。そうした厳しい言葉は、本気でリーグ王者を目指しているからこそ、チームに対して妥協を許さない同HCの意識の高さに他ならないのだ。

 これからもチームの質を上げていくため、佐々HCは「選手とコーチの勝負ですね。そこは我慢強くいかないといけないと思うし、選手もコーチに対して信じられるか、られないかというのがある。そこはシーズンを通して研ぎ澄ませていくという作業ですね」と話す。キングスにとってもまだシーズンは始まったばかり。その本領を発揮するのはもう少し先になりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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