Yahoo!ニュース

年金や医療も「社会全体よりも自分が第一」…社会保障への姿勢から見える自分本位の願望

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 「社会全体のためにはどうすべきか」と問われてもどうしても自分に有利な選択を…

社会保障で足りない財源をどこでやりくりするか

一人では無く集団で構成される社会の中で日々の生活を営む際には、自我の追及と共に社会全体を見越した考えが求められる。皆が皆、我がままを通していたのでは、社会全体が成り立たなくなってしまうからだ。しかし社会保障制度(健全な社会生活を営むため国や自治体が行うサポート・施策。主に年金、医療、介護、子育ての分野)に対する意見では、どうしても自分を中心に据えた答えが出てしまう。

次に示すのは日本生協連が2013年11月に発表した、日本の社会保障制度への意識や考え方に関する調査結果を基にしたグラフ。社会保障を支える財源が不足する中、どのようなやりくりをすべきかについて尋ねた結果の一部項目を、性別・世代別に集計したものだが、性別・世代別の「思惑」が良くわかる結果となっている。

↑ 今後、社会保障に必要な財源が増す中で、望ましいと考える対応(複数回答)
↑ 今後、社会保障に必要な財源が増す中で、望ましいと考える対応(複数回答)

増税の項目では男女別に見ると押し並べて男性の方が賛同率が高い。女性は家計を預かる場合が多く、税率の引き上げを直に受け止める場面が多々あることから、賛成しにくいのだろう。特にすぐさま大きな影響を受ける所得税、消費税では大差が出ている。

法人税などでは、大まかに見て若年層ほど同意率が低く、高齢者ほど高い。金銭上の生活のやりくりのしやすさ・しにくさ(要は懐が温かいか否か)がそのまま賛意の多い少ないにあらわれていると考えられる。特に消費税では年金受給が始まる60代以降になると、急に賛意率が上昇しているのが良い例だ。

他方、現状の財源で維持できるよう、社会保障の給付削減をするべきとの対応には、増税とは逆で、若年層ほど高く、高齢層ほど低い傾向が確認できる。これはひとえに、現在の自分が社会保障をどれだけ受けているか、その量によるもの。つまり高齢者ほど年金や足しげく通う病院の医療費補助など「現在」受けている社会保障が多いので、それを減らされる対応には賛成し難いという次第である。

高齢者が猛反発する「年金保険料は払いたくない」との考え方

属性別で見えてくる自分本位な動き。これは特に世代別で顕著なものとなる。次に示すのは、年金保険料に関する社会的風潮「(将来)年金はもらえないかもしれないので年金保険料は納付したくない」に対し、同意するか反対の意志を持つかを尋ねた結果。プラスほど「仕方ないよね、気持ちは分かる」、マイナスほど「許すまじ」の想いが強いことになる。

↑ 「年金はもらえないかもしれないので年金保険料は納付したくない」
↑ 「年金はもらえないかもしれないので年金保険料は納付したくない」

当然の話ではあるが、若年層ほど払いたくない人の割合が多く、受給世代に近づくに連れ、「支払わないなんてとんでもない」とする意見が増加する。特に現時点で年金を受給している60代以上は、自分達の受取額が減らされるかもしれない可能性は耐え難く、男女とも、とりわけ男性で強い反発を示している。

リソースは有限

社会保障に充てられるリソースは有限。地面を掘って沸いてくるわけでは無い。「あちらを立てればこちらが立たず」の言葉にある通り、何か特定の分野に注力すれば、他の分野のリソースを削る必要が生じてくる。受益対象者の間で激しい綱引きが行われるのは当然の話。そして世代別では概して高齢者の意見が優先されてしまいがち。上若年層は人数区分上(さらには政策の観点では投票率の上)で不利な立場にあるからだ。そして若者の不満は、さらに高まるばかりとなる。

また社会保障は十分過ぎる、求められていた分のサービスを提供しても、さらなる便益を求められるのが世の常である。その上、一般的な世情が正しい方向性、中長期的に見て多数の人に便益を示すものであるという保証はない。むしろ逆の方向を向いている可能性の方が高い。

施策を立案、実施する側の人達においては、難しく、厳しいかじ取りが必要とされることだろう。

■関連記事:

「全世代の負担増」が多数意見、だが…年金や育児などの社会保障の負担の今後

「今重要なのは年金と介護問題」「失業対策は若年層のみ問題視」…世代別の「重要と考える社会保障制度」をグラフ化してみる

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事