【パリ無差別テロ】「イスラム国(IS)」VSアルカイダの勢力争いが激化する
乗員乗客224人が死亡したエジプト・シナイ半島でのロシア旅客機爆破テロ、死者130人を出したパリ同時多発テロで、国際テロの本家本元アルカイダのお株を奪った過激派組織「イスラム国(IS)」。
その向こうを張るように20日、アフリカ西部マリの首都バマコでアルカイダ系武装集団が高級ホテル「ラディソンブル」に押し入り、銃を乱射した。宿泊客や従業員ら約170人が人質になり、軍治安部隊が突入。少なくとも18人が死亡した。
アルカイダ系「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」と、分派組織「アル・ムラービトゥーン」が犯行声明を出した。「アル・ムラービトゥーン」は昨年7月、マリ北部でのフランス軍部隊を標的とした自爆テロも自認している。
上のマップは英紙デーリー・テレグラフを参考に筆者が作成した世界のジハーディスト(聖戦士)勢力図だ。アルカイダ系(青色)はISの関連組織(オレンジ色)に押されていることが分かる。マリはアルカイダ勢力圏だ。
アルカイダはイスラム教スンニ派から出てきた過激派で、ISは元をたどれば「イラクのアルカイダ」だ。本家のアルカイダより、分家のISの方が今や完全に主導権を握っている。
アルカイダの標的は欧米諸国で、国際テロを輸出することでイスラム世界から欧米の影響力を排除するのを目標に掲げてきた。これに対してISは「イラクのアルカイダ」時代から自らの勢力を拡大するためシーア派との宗派抗争を引き起こし、本家から注意されている。
シリアのアサド大統領がスンニ派を弾圧したことから、「スンニ派を守るために戦え」「イスラム国を建国する」という錦の御旗を掲げたISに資金も人も集まり始める。
アルカイダ指導者がパキスタンとアフガニスタンの国境に隠れて、時折、メッセージを出すだけなのに対し、ISはソーシャルメディアを通じてアサド大統領の軍や欧米と戦う姿を強烈にアピール。
IS最高指導者アブバクル・バグダディのカリフ(イスラム社会の最高指導者)就任と、米国が主導するIS空爆で支持が一気に拡大した。
アルカイダは命令・指揮系統が厳格なのに対し、ISは連携を優先させ、世界各地に「イスラム国の州」を設置したことから、ISに参加する過激派組織が相次いだ。
ISは、シリアやイラクで油田地帯を占拠し、原油などを密売して利益を得ているとされる。銀行から資金を強奪、遺跡の古美術品密輸も行っている。
シリアやイラクの支配地域で「課税」したり、密輸業者から利益の一部をピンはねしたりしている。中東地域での宗派対立の高まりを背景に、海外からの資金提供が増えているとも言われている。
中間派でISになびきそうな過激派組織も多いため、アルカイダは今後、巻き返しを図る可能性が強いとみられている。
(おわり)