SpaceX、64機の超小型衛星専用打ち上げを実施。競合2社のレーダー衛星に宇宙葬衛星も
SpaceXは、回収したFalcon 9ロケット機体による3度目の再利用打ち上げを日本時間11月29日未明に実施する。Falcon 9の衛星搭載数としては最大の64機を搭載する。中には、注目されている小型の合成開口レーダー(SAR)衛星の競合する2社の衛星や、IoT衛星、遺骨を収納した宇宙葬衛星、ミイラの臓腑を収めるカノプス壺を模したアート衛星などだ。
打ち上げは10月から何度も延期されたが、日本時間11月29日午前3時31分47秒12月2日午前3時32分12月4日午前3時32分にカリフォルニア州のヴァンデンバーグ空軍基地から打ち上げられる予定だ。このFalcon 9ロケットには、SpaceFlight(スペースフライト)社による衛星放出機構のSSO-A: SmallSat Expressが搭載される。SSO-Aは多数の超小型衛星を収納し、高度550キロメートルの目的の軌道に放出する機構だ。※11月28日9:30に新たな打ち上げ予定日時を追記しました。※12月3日に新たな打ち上げ予定時刻を追記しました。
搭載された衛星はすべてマイクロサット、またはキューブサットなどの超小型衛星。大型の衛星を打ち上げる際の余剰能力を利用して超小型衛星を搭載する“ピギーバック”ではなく、超小型衛星で大型ロケットの打ち上げ機会を分け合う“ライドシェア”形式の打ち上げとなる。
超小型衛星の中で注目されるのが、2社の合成開口レーダー(SAR)衛星だ。SAR衛星はレーダーで地上を観測する地球球観測衛星の一種で、光学地球観測衛星と異なり夜間や雲がかかっている天候でも観測が可能だ。地震や洪水などの大規模な災害の後にいち早く被害状況を観測する、土地の利用状況を観測して開発管理を行うなど多様な用途が期待されている。しかし、高性能なこれまでのSAR衛星は電波の発信、受信に大型のアンテナや大きな電力を必要とするため、小型化が難しかった。昨今では、展開式のアンテナで衛星本体を100キログラム以下に軽量化し、開発コストを低減して多数の同型SAR衛星を打ち上げ、高頻度の観測を行う超小型SAR衛星コンステレーションの開発が世界で進んでいる。
Falcon 9に搭載される2社のうちフィンランド拠点のICEYE社は、2018年1月に重量100キログラム以下の超小型SAR衛星打ち上げに成功したスタートアップだ。フィンランド政府とEUの支援を受け、2019年末までに全9機の衛星を打ち上げることを目標としている。
もう1社のXバンドSAR衛星を展開するCapella Spaceは、今回が初の打ち上げとなる。衛星本体の重量は35キログラムで、アンテナを展開すると8平方メートルのサイズになるという。初号機のデナリは試験衛星で解像度は1メートル程度だが、2019年初頭にインドのPSLVロケットで2号機セコイアを、2019年後半にはさらに6機の衛星を打ち上げ、解像度50センチメートル程度を目指すとしている。
超小型衛星で宇宙葬、アート衛星も
今回の打ち上げでは、地球観測衛星のような実用衛星ばかりでなく、宇宙を新たな表現の場として利用する衛星も含まれている。エリジウムスペース社のElysium Star 2衛星は、故人の遺灰の一部や髪の毛、記念品などを納めて打上げられる宇宙葬専用衛星だ。衛星はおよそ2年間、地球を周回し、その後に大気圏に再突入する。この「流れ星供養」の宇宙葬は日本からも申し込みが可能だ。
さらに、ロサンゼルスカウンティ美術館(LACMA)によるアート衛星エノクの打ち上げも行われる。エノクは古代エジプトでミイラを作るときに取り出した臓器を保存した“カノプス壺”の形をしている。壺は1967年に初のアフリカ系アメリカ人宇宙飛行士として選抜され、スペースシャトルの操縦技術開発に貢献しながら、30代で事故で亡くなったロバート・ヘンリー・ローレンス・ジュニアの魂を込めた、というコンセプトとなっている。
エノク衛星のカノプス壺はローレンス宇宙飛行士の胸像を形どっており、福岡の神社が神道式で清め、ローレンス宇宙飛行士の魂が込められていると認定したという。
レーダー衛星から宇宙アートまで幅広い衛星を搭載した超小型衛星専用のライドシェア打ち上げは、Falcon 9だけでなくさまざまな大型ロケットで行われるようになってきた。2017年2月にはインドのPSLVロケットが1回で104機の衛星を打ち上げたほか、2019年にはフランスのアリアンスペース社がヴェガロケットにSSMSと呼ばれる専用の衛星ディスペンサーを搭載し、80機以上の衛星を打ち上げる予定だ。