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有料の電子新聞に対する新規購読希望者は1割にも満たない

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ インターネットで配信される有料の電子新聞にはどれほどの需要があるのか。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・新規に有料の電子新聞を購読したいと考えている人は1割足らず。

・20代~50代では1割強が有料の電子新聞を購読希望。

・紙の新聞とのセットでも購読したくない人が過半数。電子新聞部分が無料ならとの人が18.6%。

新規の有料購読希望者は1割足らず

インターネットで公開されている電子化された新聞「電子新聞」。新聞社側は紙の新聞同様、定期有料購読によるビジネスモデルを望んでいるようだが、読者側はどれほど購読したいと考えているのだろうか。新聞通信調査会が2018年1月に発表した「メディアに関する世論調査」(※)の結果を基に確認する。

今調査対象母集団では7割足らずが頻度は問わず、そして4割強が毎日、インターネット経由でニュースを閲覧している。

↑ インターネットニュースの閲覧状況
↑ インターネットニュースの閲覧状況

この「ニュース」とは有料・無料を問わず、また新聞社配信のニュースとは限らない。そこで、有料かつ新聞社配信のものとなる、有料の電子新聞を知っているか、そして読みたいか・すでに読んでいるか否かを聞いた結果が次のグラフ。あくまでも有料版に限定した話であることに注意。

↑ 有料電子新聞の認知度と利用意向(2017年度、属性別)
↑ 有料電子新聞の認知度と利用意向(2017年度、属性別)

現在利用している人は2.1%。今後利用したいと考えている人は9.5%。一方で利用したくないとの意見は65.5%。知らない人も2割強存在する。元々興味関心が薄いことから気にも留めていなかった人が多数いるのだろうが、仮に現在「知らない」に該当する人の半数が好意派に転じても、現状では全体の2割強しか有料電子新聞を用いる・用いたい人がいない計算になる。何らかの仕組みの変化や工夫を凝らさずに、もしも紙の新聞を全廃し、電子版のみに切り替えたら、どれだけ「購読者」は残るだろうか。朝刊や夕刊の閲読者率(68.9%)をそのまま新聞購読者率と仮定した場合には、およそ1/3に減少する計算となる。

属性別に見ると、男女別では男性の方が積極的、そして年齢階層別では20代から50代までは押し並べて同じような動きを示している。恐らくは仕事で使う機会が多いことが主要因だと考えられる。もっとも見方を変えると、認知度がそれなりに高いこれらの年齢階層でも、現状では1割強しか利用に好意的な人がいないことになる。

経年推移での確認

電子新聞の認知度、利用意向について経年推移を確認したのが次の図。ただし読み方に注意が必要となる。

↑ 電子新聞の認知度と利用意向(択一)(2013年度から「有料の電子新聞」の利用意向に変更)
↑ 電子新聞の認知度と利用意向(択一)(2013年度から「有料の電子新聞」の利用意向に変更)

グラフ題名に注意書きがあるが、2012年度までは単に電子新聞との設問だったのに対し、2013年度からは有料の電子新聞に限定した問いとなっている。そのため2013年度からは「現在非利用だが利用したい」の回答率が大きく落ち、その分「利用したくない」人が増えている。

単なる電子新聞と有料の電子新聞との仕切り分けには留意が必要だが、それでもなお認知度の上では着実に世の中に浸透を続けている(ここ数年では「知らない」が減少せず、頭打ちだが)。他方、有料版と明記した上での設問はまだ5年分なのでぶれが生じている可能性はあるが、利用したくない人の値の増加と、利用したい人の減少がほぼ同時期に起きており、有料の電子新聞でも「新聞離れ」が生じている(「利用したくない」は「知らない」では無く、知った上で拒否をしていることに注意)。これでまだ「現在利用中」の人が増えていれば救いはあるのだが。

「知らない」人が存在を知れば利用意向を持つようになるのではとの考えもある。しかし繰り返し有料電子版の存在の周知が行われている現状で、なおその存在を知らない人は、元々有料コンテンツ、新聞記事にはさほど興味が無く、たとえその存在を知ったとしても、「利用したい」「利用中」に移行する可能性はさほど高く無い。

紙の新聞とのセットならおいくらで?

有料の電子新聞の販売スタイルとしては、現在紙の新聞を購読している人にも手をつけやすいよう、そして新聞の新規購読検討者にはお値打ち感をアピールできるよう、「紙の新聞と一緒ならば、有料の電子新聞は安く提供します」との様式が主流となっている。有料の電子新聞は物理的な形として残らないので、紙の新聞と同額では損をしているように思えることからの配慮もあるのだろう。

そこで、紙の新聞とのセット価格として、有料の電子新聞はいくら上乗せするスタイルなら購読してもよいと考えられているのだろうか。上記にある「有料の電子新聞は知らない」とした人も含めた、全員に聞いた結果。

↑ (有料の)電子新聞の許容購読料(紙の新聞とセットで購読する場合)(2017年度)
↑ (有料の)電子新聞の許容購読料(紙の新聞とセットで購読する場合)(2017年度)

「無料」、つまり紙の新聞を購読すれば無料で、本来は有料の電子新聞も購読できるという選択肢があるにも関わらず、購読したくないとの意見が過半数を占めている。新聞そのものを購読していない人に加え、電子新聞になじめない人もいるのだろう。無料なら権利だけでももらっておいた方が、と考える人はもう少しいるような気もするのだが(今調査対象母集団では月ぎめで紙の新聞を購読している人は70.6%なので、「すでに紙の新聞を購読しているが、本来有料の電子新聞を無料で利用できるとしても、必要無いと考えている人」が1割以上いることになる)。

無料ならと考える人は18.6%、何らかの金額を上乗せすれば紙の新聞とセットで有料の電子新聞を購読してもよいと考えている人は21.1%。非常に厳しい結果に違いない。

■関連記事:

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※メディアに関する世論調査

直近分となる第10回は2017年11月2日から11月21日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法によって行われたもので、有効回答数は3169人。有効回答者の属性は男性1526人・女性1643人、18~19歳63人・20代274人・30代422人・40代567人・50代504人・60代601人・70代以上738人。過去の調査もほぼ同じ条件で行われている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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