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「日本の中小ブランドを守るためパリへ」テレビ番組スタイリストの女性の挑戦

鎮目博道テレビプロデューサー・演出・ライター。
(写真:アフロ)

「コロナ禍でどんどん展示会が中止になり、どこにも発表の機会がない中で、素敵なブランドが潰れていってしまうのは悲しすぎる」……そう考えたスタイリストの女性が行動を起こした。中小のアパレルブランドに声をかけ、ファッションの都、フランス・パリでブランド合同の展示会を開き、海外の知名度を上げることでブランドの生き残りを図るというのだ。

「私がいまリースしているブランドのデザイナーは、こだわりが強くコレクション系と言えるので、原料コストがかかっていて安くは売れません。そこで考えたのは、世界196カ国のどこかでその感性が認められたらな、ということです」

展示会に参加する(左)RBTXCO(中央)目覚めの一瞬前(右)Under the Skin(難波雅恵さん提供)
展示会に参加する(左)RBTXCO(中央)目覚めの一瞬前(右)Under the Skin(難波雅恵さん提供)

(左)HUNDRED COLOR(右)meagratia (難波雅恵さん提供)
(左)HUNDRED COLOR(右)meagratia (難波雅恵さん提供)

こう語るのは、スタイリスト事務所「株式会社SMKT」の社長・難波雅恵さん。多くのテレビ番組やタレントを手掛ける売れっ子スタイリストだ。あちこちの現場で「コロナ禍で資金繰りに詰まった。展示会も中止になってしまい出られない」という現場の悲鳴を聞いてきた。そして実際に有望な若手デザイナーの手掛ける素敵なブランドが閉鎖の憂き目に遭うのも経験した。そこでまず難波さんは去年3月末、原宿にPRルーム「プレスルームアートス」を立ち上げた。しかし、思うような成果はなかなか上がらなかったという。

「公的機関からも、“不要不急のお洋服は、不景気な日本ではなかなか結果がでませんので、支援は打ち切りです”と言われました。大手商社に相談しても“大手アパレルしか相手にできません”と言われて、かなり道はふさがれてしまいました。とはいえ、私がお世話になっているデザイナーが海外まで行く渡航費や展示会の費用を出すのはとても無理です。結局は資金がある大手ブランドしか生き残れないのだなと思いました」

難波雅恵さん(本人提供)
難波雅恵さん(本人提供)

そこで難波さんは、参加するブランド単独では捻出できない渡航費用や会場代も「みんなで協力すればなんとかなる」と考えた。いろいろな困難はあったものの、なんとかファッションウィーク中の1月19日~24日に、5つのブランド合同でパリで展示会を開くことにしたのだ。

「日本は感性がいい国。日本で頑張っているブランドさんや生地屋さんなどがいることをまずは知ってもらい、パリにルイ・ヴィトンを買いにいくように、世界中から日本に服を買いに来てもらえるようにしたいのです」

今後3年の間にニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、イタリアなどでも合同の展示会を開いていくつもりだという。

テレビ業界をこれまで盛り上げてきたスタイリストの女性の、世界に向けた「日本のファッション救済計画」に、私はテレビマンとして拍手を送りたいし、応援したい気持ちでいっぱいだ。

テレビプロデューサー・演出・ライター。

92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教を取材した後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島やアメリカ同時多発テロなどを取材。またABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、テレビ・動画制作のみならず、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)

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