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2021年の金融市場を振り返る(4月~6月)

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

4月

 1日から消費税の総額表示が義務化された。

 5日に日銀は「中央銀行デジタル通貨に関する実証実験の開始について」をサイトにアップし、デジタル通貨の実証実験を開始したことを表明。

 6日に国際通貨基金(IMF)は改定した世界経済見通しを発表し、このなかで2021年の世界の経済成長率見通しを6.0%とした。6%の経済成長が実現すれば現行のIMF統計で遡れる1980年以降で最高となる(10月に改訂された数値は5.9%)。

 9日に日銀の黒田総裁は在任期間が2940日となり、歴代2位に並ぶ。

 16日に日米首脳会談が行われた。共同声明で台湾について明記されたのは50年ぶり。

 21日にカナダ銀行(中央銀行)は金融政策決定会合で、国債の購入を減額すること(テーパリング)を決めた。

 26日のロンドン金属取引所(LEM)の銅相場は約10年ぶり高値に上昇した。

 27日にアルケゴス・キャピタル・マネジメントのポジション崩壊に絡む損失は、野村ホールディングスとスイスのUBSグループが合わせて37億ドル(約4000億円)余りを公表し、世界の銀行の合計が100億ドルを突破した。

5月

 2日に三菱UFJ銀行と三井住友銀行は、現金自動預け払い機(ATM)を共同運営する方向で最終調整に入ったと読売新聞が報じた。

 8日に、米最大の石油パイプラインであるコロニアル・パイプラインがランサムウエア攻撃を受けた。その後、パイプラインへサイバー攻撃を仕掛けたダークサイドは、身代金を受け取ったあとに暗号資産を盗まれて活動停止した。

 10日に米国の5年物ブレークイーブン・レートは一時2.7327%と、2008年のピークを上回って2006年以来の高水準を付けた。

 10日、財務省は国債などの残高を合計した「国の借金」が2020年度末で過去最大の1216兆4634億円に達したと発表した。

 12日に発表された米国の4月の消費者物価指数は前年同月比4.2%の上昇となり、2008年以来の大幅な伸び率となった。

 13日には4月の米卸売物価指数が発表され、前年同月比では6.2%もの上昇となり、2010年の統計改定以来の大幅な伸びとなった。

 18日に発表された日本の2022年のGDPは前年度比4.6%減となり、落ち込み幅はリーマン・ショックがあった2008年度の3.6%減を超え、戦後最悪となった。

 3度目となる緊急事態宣言が発令。4月25日から5月31日まで東京都、京都府、大阪府、兵庫県に当初発令され、5月12日から愛知県、福岡県が、5月16日からは北海道、岡山県、広島県が加わった。

 17日に日銀が発表した4月の国内企業物価指数は前年同月比で3.6%の上昇となった。2014年9月以来、およそ6年半ぶりの高い水準。

 28日に米商務省が発表した4月の個人所得・消費統計では、食品・エネルギーを除くコア個人消費支出(PCE)価格指数が前年同月比3.1%上昇し、1992年7月以来の大幅な伸びを記録した。

6月

 1日の債券市場で10年国債の直近発行されたいわゆるカレントものと呼ばれる銘柄は、日本相互証券で一日を通して取引が成立しなかった。日中取引なしというのは新発の10年国債としては2020年6月29日以来。この日は10年債のカレントだけでなく、5年債、20年債、40年債のカレントも出合いがなかった。

 国連食糧農業機関(FAO)が算出する世界食料価格指数は5月、2011年9月以来の高水準となり、過去10年で最長となる12か月連続の上昇を記録した。

 5日の日銀によるETFの買入はゼロとなった。これは2013年に日銀が量的・質的緩和、いわゆる異次元緩和を導入してからは初のことになる。

 8日に中米エルサルバドルの議会は代表的な暗号資産(仮想通貨)のビットコインを法定通貨にする法案を賛成多数で可決した。ビットコインの法定通貨の採用は世界で初となる。

 金融機関の国際ルールを協議するバーゼル銀行監督委員会は10日、銀行によるビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の保有を規制する案を公表した。銀行がビットコインなどの仮想通貨を保有する場合に、それにかかわるリスクウエートと呼ばれる数値を1250%という極めて高い水準に設定することを提案。

 10日に米労働省が発表した5月の消費者物価上昇率は前年同月比5.0%となり、2008年8月以来約13年ぶりの高さとなった。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数の上昇率は5月に前年同月比3.8%とこちらは1992年6月以来の伸びに。

 11日~13日に第47回先進国首脳会議(G7サミット)がイギリス・コーンウォールで開催。

 15日に米労働省が発表した5月の卸売物価指数は前年同月比で6.6%上昇し、2010年11月以来10年6カ月ぶりの大きな伸びとなった。

 16日のFOMC後の会見でパウエル議長は、国債などを買い入れる量的緩和の縮小(テーパリング)の開始に関して、経済データを確認したうえで具体的な議論に入る考えを示した。

 28日にロバート・ルービン元米財務長官は、米国のインフレ率が高止まりする「大きなリスク」が存在するとの見方を示し、政策当局者に対し注意を払って過熱を回避するよう呼び掛けた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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