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「LINE電話」と「楽天でんわ」をビジネス利用で比較する

横山信弘経営コラムニスト
「LINE電話」と「楽天でんわ」をビジネス利用する場合……

「LINE電話」がスタート

3月17日、有料通話サービス「LINE電話」のサービスがスタートしました。(当面はAndroid版のみ。iOS版は近日発表) 「LINE電話」の詳しいレビューは他記事に譲るとして、本記事では、先に発表された「楽天でんわ」と比較し、ビジネスで活用する場合、どちらがどのようなシチュエーションで有利かを考察したいと思います。

そもそもスマートフォンをビジネス上、誰が持つのかと考えた場合、

「経営者」

「営業」

の2パターンと考えます。特に「営業」は外回りをするうえで、通話以外に地図アプリの利用や、メールの添付ファイルを外出先で確認する、訪問先のサイト事前確認などの必要性から、「ガラケー」よりも「スマホ」のほうが便利だと言えます。

「保守サービス」や「現場の点検作業」に関わる職種の人にも「スマートフォン」が必要かは意見が分かれるところ。保守メンテナンス等に特殊なアプリが必要であれば、支給すればよいと考えます。いずれにしても、外出をほとんどしない人が、会社からスマートフォンや携帯電話を支給されることは考えにくく、もし支給するとしても機能制限した「ガラケー」で充分。機能無限大の遊び端末「スマホ」をそのまま従業員に渡すとデメリットが多いため、スマホをビジネス活用する人口が最も多いのは「営業」と定義づけし、本記事は書きたいと思います。(※なお、本記事は経営者の視点で書いています)

ビジネス上、どんな通話が理想なのか?

私は経営コンサルタントとして、経営者から「通信コスト」に関する相談も受けます。しかし問題は「通信コスト」のみではありません。

<営業の電話にかかる2つの問題>

●1回あたりの通話料

●長電話による時間の浪費

「長電話による時間の浪費」は、大きな問題です。お客様と接触できる時間は、対面であろうが電話であろうが限られています。特殊な業界を除き、ほとんどの場合「日中」です。私はコンサルタントとして、この日中の顧客接触可能時間を最大限活用するよう指導していますので、必要に迫られた場合は仕方がありませんが、1回の電話で20分も30分も電話で話していると、いたずらに時間を浪費させるだけです。

「重要ー緊急マトリックス」で考えた場合、「重要でないAND緊急」の仕事に振り回されることなく、「重要AND緊急でない」活動をどれぐらいできるか、です。営業が緊急の顧客対応をする場合は、計算に入れません。経営者が見るべきは、営業が将来の見込み客を獲得するための「種まき活動」です。緊急の用事があっての電話ではなく、

「私、●●商事の▲▲と申します。こんにちは、先日のイベントで名刺交換をさせていただきました。あのときは当社のブースまでお越しくださり、ありがとうございました……」

という「ご挨拶電話」をどれぐらいするか、をマネジメントしてもらいたいと思います。こういった電話はきわめて短時間で終わることが多いですし、反対に短くしなければなりません。「種まき活動」の時点で、相手に電話を切らせず「売り込みトーク」を長々としてしまうと、お客様は拒否反応を示します。将来の見込み客にしていくため「単純接触」で終わらせないといけないのです。

「LINE電話」か「楽天でんわ」か?

電話を短くするコツは、物理的に短くしかできないシチュエーションを考えることです。次の3パターンで考えていきます。

(1)固定電話(営業)― 固定電話(お客様)

(2)携帯電話(営業)― 固定電話(お客様)

(3)携帯電話(営業)― 携帯電話(お客様)

まず、お客様と親密にならない限り、お客様の携帯電話の番号を知ることは難しいですから(3)は対象外。(1)のパターンは長電話になる確率が高くなりますから(2)を考えます。

外出先で移動中にお客様の固定電話へ電話する、というシチュエーションです。営業は忙しいですから、移動中、歩いているとき、待合せの時間などの、ちょっとした「すきま時間」を利用して、前述した「ご挨拶電話」をするのです。このこまめさが、将来の見込み客を作っていくのに絶対に不可欠なことです。

ということは、「携帯電話(営業)― 固定電話(お客様)」で通話料金が安いサービスが使い勝手よいという結論になります。当然、「ご挨拶電話」ですから「通話品質」に神経を尖らせる必要はありません。

●LINE電話 …… 2円/分(30日プランの場合)

●楽天でんわ  …… 10.5円/30秒

●LTE対応スマートフォンの一般的な通話料 ……21円/30秒

「LINE電話」はIP電話であり、「楽天でんわ」等と比較して、通話品質は落ちるだろうと言われています。しかし上記のような外出先での「ご挨拶電話」の場合は、通話品質を考慮しません。ということは「LINE電話」を使用したほうが断然安くなることがわかります。

今回は注目されている「LINE電話」「楽天でんわ」を取り上げて比較しました。他にも多くの通話サービスがあり、それぞれに料金体系が異なります。いずれにしても、このように「利用シチュエーション」によって今後はサービスを使い分けることが大切となってくるでしょう。

「LINE電話」「楽天でんわ」の本当の脅威

そもそも論となりますが、通話アプリやサービスを考えるよりも、経営コンサルタントの視点で考えた場合、本当に仕事上スマホが必要なのか。必要なら誰が仕事上で使うべきか。どのシチュエーションで使うべきかを考えたほうが、通話コストの総量を抑えることができます。仕事の効率化にもつながります。

●社内にいるのに会社から支給されたスマホでお客先に電話している

●会社から携帯電話が支給されないので、会社の固定電話からしかお客様に電話せず、営業がなかなか外出しない

現場でコンサルティングをしていると、こういった問題のほうがよほど目につきます。サービスの中身よりも、運用の問題です。ビジネスで活用する場合も、プライベートで活用する場合も、表面的な料金プランに惑わされず、どのような相手に、どれぐらいの時間、どのような品質レベルの通話を頻繁にしているか、を考えたら、「LINE電話」が良いのか「楽天でんわ」がベターなのか、それとも他サービスが良いのか、答えが見つかると思います。

いずれにしても、基本料金を支払うことなく、少々手間がかかってもアプリをダウンロードするだけで、とりあえず使えるサービスが登場してきたことは事実です。しかも「LINE電話」「楽天でんわ」はいずれも知名度が高く、市場に浸透しやすいネーミング。他にも多くの通話サービスがありますが、複雑な料金プランを目にしただけで、一般的な企業経営者、管理部は辟易するものです。現場で多くの経営者、管理本部と接しているとわかります。「結局、何が安いのかさっぱりわからない」というのが本音なのです。「LINE電話」「楽天でんわ」等は、「わかりやすさ」「導入しやすさ」といった意味でも、既存の通信キャリア、サービス事業者にとって大きな脅威になることは間違いないと思います。

(※参考記事:LINEを利用した「すごい仕事術」3つのポイント

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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