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【韓国】地下鉄車内で「ただシャツで汗を拭いた」男性が性犯罪容疑者に ありえない「告発理由」と「捜査」

ソウル地下鉄の様子。写真はイメージ(写真:Paylessimages/イメージマート)

出勤途中のソウル地下鉄車内。

席がなく、つり革の下に立っていた男性はスマホでゲームをしていた。手のひらに汗をかいていたから、指先をシャツのすそで拭いた。

すると……。

ただそれだけで、目の前に座っていた女性に刑事告訴された。理由は「男性が目の前で15回を自身の下半身を触っていた」。

しかも女性はあらぬ疑いを告訴するために、断りなく男性の姿を3秒間動画で撮影していた。それを警察に提出された。

結果、自身は取り調べを受ける羽目に。

じつのところ、通報者女性の「動機」はただひとつだった。

”キモいと感じた”――。

そんな出来事が27日に韓国で報じられた。同日の大手ポータルサイト「Daum」のデイリーアクセスランキング30位入りはしなかったものの、大手日刊紙「東亜日報」「中央日報」ほか大手経済紙「毎日経済」系のニュースチャンネルなどが伝えた。

(ニュースを報じる韓国の「MBN」)

男性が出来事をネット上の有名掲示板に書き込んだら…

男性は「汗を拭いた」日からしばらく経った頃、警察から「地下鉄車内での公然わいせつ罪」で告訴されていると連絡を受けた。

怒り、驚き、事の詳細を韓国内の大手掲示板に書き込んだ。「名誉毀損だ」と。そして「弁護士を選任し、法的に強く対応する」とした。

すると、どうやってこれを知ったか、告発者たる女性本人から掲示板のメッセージ機能を通じて直接連絡があった。そこには告発者の女性本人の電話番号が残されており、直接通話した。

女性は、驚くべき内容を口にした。

「よく思い出してみると、何もなかったかもしれません。ただその一日が、気を遣うことが多くなりそうなキツい状況でした。目に見える場所で(他人が)上の服を掌で触れる行動が不快で、誰かを告訴したくなり、何の理由もなく申告しました。誰かの人生を台無しにしようとしてやったことではありません」

つまりは、”機嫌が悪かった”うえに”なんとなくキモかったから”、告訴までしたのだと。

冤罪どころか、八つ当たりだったのだ。

無実の証拠を示すも、警察側は強引な尋問

話を報じた韓国メディア、そしてSNSで詳細を伝えた韓国性犯罪名誉毀損相談センターが問題視したのは、その後の警察の対応にもあった。

女性が「機嫌が悪くて誰かを告発したかった」と口にしたにもかかわらず、取り調べを実施。

男性側は自身のスマートフォン内から以下の証拠を提出した。

「該当する時間帯に両手を使う対戦型のスマホゲームをしていた記録」

「その前後に自分自身の彼女にカカオトーク(メッセンジャー)でやりとりしていた記録」

また映像でもこれだけの「疑いなし」の証拠が揃っていたのだという。

告発した女性が撮影した3秒の動画には、シャツで指先を拭く場面すらなく、「ゲームをする本人」だけが写っていた。

より尺の長い、地下鉄運営会社側が提供した車内の防犯カメラでも「問題なし」

それでも、取調べ時に特別司法警察官から「許しがたい、偏った捜査」(相談センター)という質問があったのだ。

――普通、手に汗を書いたら手のひら全体を拭かなければならないが、シャツの下の方で指を拭いた理由がありますか?

「手全体に汗をかいていたわけではありませんから」

――あえてその指を、性器に近いシャツの裾のほうで拭いた理由がありますか?

「どこで拭いたのかもはっきりと覚えていません。でも(女性が撮影した動画をキャプチャした)写真に、私の両手が何をしているのか写っていませんか(スマホで対戦型ゲームをしている)?」

さらに続く「酷な質問」

その後に、警察官は座っている男性にわざと目を合わせ、こう口にしたのだという。

――地下鉄は人々が利用する公共の場所だということを知っていますか?

「はい。知っています」

――被疑者はシャツの裾の部分で手を拭いたといいますが、地下鉄の中で他者に見えるように、その部分を15回ほど続けて触る場面を見たら、どう感じるでしょうか。

「誤解されるような状況に見えるのかもしれませんが、まったくそういった意図はありませんでした。(提出された)動画はとても短いです。私が仮に15回も連続で触れていたのなら、私自身が性的に興奮している姿を目撃されていたでしょうが、そうではありません」

――だとしたら、地下鉄の座席に座っているのに、目の前で繰り返し該当部分に触れる行動を見たらどう思うでしょうか?

「相手の座っていた位置のせいで誤解したのではないかと思います」

――その女性の立場だったらどう思ったでしょう?

「露骨に性的な行為を行ったわけではないので、気にかけなかったと思います」

――女性が座っている場所に近づいて、本人の性的欲求を満たすために行ったのではないですか?

「まったく違います。ゲームに集中して無意識に汗を拭いたり、服の端を触ったりしたのだと思います。特にその時は、カバンを肩から斜めにかけていた状況だったので、服の端を触ったのだと思います」

女性側が罪に問われる可能性も

さらに警察は、取り調べの後日にもしつこく本人の地下鉄での行動を潜伏捜査。問題なしとし、不起訴が決まったのだという。

男性は「MBニュース」に対し「取り調べを待つ日々、人生が壊れてしまうような恐怖を感じた。私のような経験をする人が他に出ないことを願う」とコメントした。

これを報じたニュース番組では出演者全員が女性と警察に対し大きな怒りを表した。コメンテーターとして出演した弁護士は強い口調でこう口にしている。

「場合によっては告発者の女性の方を『他者の意図的な無断撮影』や『明らかに犯罪ではないと分かっているのに告訴したこと』で罪に問える可能性がある」。

韓国性犯罪名誉毀損相談センターも同様に、公式フェイスブック上で「許せない」という姿勢を示した。

「公然淫乱罪は、強姦罪などのように相手に性的羞恥心をわざとに感じさせる必要がなく、その行為だけで『犯罪に該当するかの余地』に対するものだ。しかしこの事件の捜査官は、男性の行動が日常のなかで起きうる行為であり、決して自慰的な意味があるものとみなされないにもかかわらず、女性がどう感じるかを男性に押し付けた。客観的な捜査方法ではない。恣意的な解釈で男性の行為を犯罪化しようとするなど、悪ふざけを強要する偏った捜査を行った」

同センターは2020年8月にオープン。まずは無料で冤罪の相談を受け、必要に応じて格安の料金で弁護士を選任している。

(了)

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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