強力な緩和の殻に閉じこもる日本銀行
22日の金融政策決定会合では、金融政策の現状維持を「全員一致」で決定した。議論の紛糾もなかったようで、12時前に終了していた。
たしかに事前のメディアのアンケートなどでは現状維持との見方が大半であった。
また、15日にブルームバーグが「植田総裁発言と市場解釈にギャップ、日銀認識ほぼ変わらず-関係者」との記事が出ており、市場がやや勝手に解釈しており、日銀の考え方は全く変化していない点を強調していた。
事情に詳しい複数の関係者への取材とあったが、これは日銀のいわゆる執行部からのコメントであったものと推察される。同様の説明がいわゆるBOJウォッチャーなどにもなされていたと思われる。
ということで、予想通りの現状維持となった。その後の総裁会見も、9日の読売新聞の総裁インタビューなどはなかったかのような内容となっていた。日銀としてはスタンスを変更しているような素振りはまったく見せたくはないというスタンスであった。
それほど物価上昇への自信がないため、では当然なかろう。日銀はそれを賃金上昇に置き換えているが、消費者物価指数のサービス価格などの伸びをみても2%超えとなっている。名目でみてしまうと物価上昇率が高いため、名目賃金がマイナスになっていても、物価そのものも賃金も実質的には2%を超えてきているとの見方はできよう。
「わが国の景気は、緩やかに回復」し、物価も想定以上に上昇しているのにもかかわらず、次の一手は「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」と緩和してみていないというのはおかしいであろう。
少なくともここは「中立」に戻さなければいけない。
これについては政府も同意見とみられる。西村康稔経済産業相は19日の閣議後会見で、日銀の金融緩和は「時間を買う政策」だとの見解を改めて示した上で、世界的に物価が上昇する中で緩和は「どこかで終了し平常化していく」と述べていた。
そうであれば、少なくとも声明文の変更、つまりこれはいわゆるフォワードガイダンスの修正となるが、を行う必要がある。しかし、現在の日銀はそれを頑なに拒否し、強力な緩和の殻に閉じこもってしまった。
ガイダンスの変更は金融政策の方向を修正することになり、それによる影響を日銀は恐れているのであろうか。それとも何かしらの信念を貫こうとでもしているのか。
このままでは日米の金融政策の方向性の違いにより、円安が進む。その結果、コストプッシュ型の物価上昇を加速させ、国民生活にも影響を与えかねないのであるが。