Yahoo!ニュース

Google、着実に伸びている広告以外の収入:ハードウェアとの融合は進むのか

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Alphabetは2017年10月26日、傘下のGoogleの2017年第3四半期(7~9月)の決算を発表した。

毎度のモバイルとYouTubeが絶好調。伸びる広告以外の収入

 Alphabetの2017年第3四半期の連結売上高は前年同期比24%増の277億7,200万ドル(約3兆円)で、純利益は33%増の67億3,200万ドル(約8,000億円)。

 Alphabetの売上の99%以上がGoogleだ。そのGoogleの売上高は前年同期比19%増で274億7,200万ドルで、純利益は37%増の67億3,200万ドルと過去最高だった。Google事業にはGoogleの検索やYouTube、Android、アプリ、クラウド、Google Play、ハードウェアなどが含まれる。特にモバイル向けの広告とYouTubeが絶好調なことも例年通りである。

 Googleを支える広告収入は同21%増の240億6,500万ドルで、Googleの売上の約88%を占めている。従来からの広告依存のGoogleの売上構造は変わっていないものの、以前は90%以上が広告の売上だった。最近では、Google Play、YouTube Red、「Google Home」などハードウェアなど広告以外の売上が増加している。年々少しずつだが広告以外の売上が増加しており、Googleの収益構造が着実に変わろうとしている。

Googleの売上と広告収入(Alphabet発表資料を元に作成)
Googleの売上と広告収入(Alphabet発表資料を元に作成)
その他売上高と損失の推移(Alphabet発表資料を元に作成)
その他売上高と損失の推移(Alphabet発表資料を元に作成)

「それ以外の事業」はGoogle Fiber、Calico、Nest、Verily、GV、Google Capital、Xなど多額の投資が必要な事業だ。売上高は前年同期比53%増の34億500万ドルだったが、営業損失は8億1,200万ドルの赤字。売上高の伸びは好調だが、まだ赤字は続くだろう。

スマホ「Pixel 2」の予約も好調

 GoogleのピチャイCEOは今回の業績発表で「素晴らしい3か月だった」と振り返った。たしかに前期は欧州連合(EU)の欧州委員会が2017年6月に独禁法違反で24億2,000万ユーロ(約3,000億円)と過去最高額の制裁金を科した。このコストがかかってしまい、純利益は28%減少した。だが今期はそのような外部要因もなく順調で、素晴らしいものだったろう。

 さらに、Googleが2017年10月に発表した最新スマホ「Pixel 2 XL」についても「予約数は昨年の2倍以上で、多くの国での販売を予定している」とコメント。日本では販売未定だが、「Pixel 2」シリーズも順調であることをアピール。

進むハードとソフトの融合

 Googleは2017年9月には台湾のスマホメーカーで初期からAndroidスマホを製造してきたHTCとハードウェア部門の人材を約11億ドル(約1,300億円)で買収することを明らかにしている。そのことについてもピチャイCEOは「ハードウェアとソフトウェアの統合は新しいコンピューティングを加速していく」と述べている。

 現在、アメリカでは従来のようなWebベースだけのソフトウェアや人工知能関連のサービスは飽和しつつある。Googleの動向を見ても、開発したソフトウェアやサービスとハードウェアの組み合わせでの提供が求められていることがわかる。消費者の手元に届くのは製品(プロダクト)であり、それはハードウェアである。ハードのデザインから設計、開発、そしてサービスとしてのソフトウェア、アプリまで一気通貫して提供していく時代になるのかもしれない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事