オールトの雲より彼方に「天体を永久拘束する領域」を発見!太陽系は予想より遥かに巨大である可能性
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「太陽系の拡張?3.8光年彼方の安定点」というテーマで解説していきます。
2024年6月にアメリカの二人の研究者チームが公表した論文によると、銀河内を浮遊する惑星サイズの天体(自由浮遊惑星)を太陽の重力で拘束可能な点が、太陽から3.8光年も彼方にて発見されたようです。
一般的に太陽の重力で拘束された天体が存在する領域を「太陽系」と呼びますが、今回の研究によれば、太陽系の果ては3.81光年も彼方に存在することになります。
本記事では本題と深く関連する「ラグランジュ点」という概念についておさらいし、その後新発見の話題について触れていきます。
●ラグランジュ点とは
一般に、2つの天体A,Bが円形で公転し合っている状況下で、A,Bより遥かに低質量の天体Cが重力的に安定して存在できる点が現れます。
この点を天体A-天体B系の「ラグランジュ点」と呼びます。
一般にラグランジュ点は特定の場所に、5つ存在します。L1,L2,L3は大きな天体AとBを結ぶ直線上にあり、L4,L5は図のような位置にあります。
特にL4とL5はトロヤ点と呼ばれ、ここに安定して存在する天体群があれば、それは「トロヤ群」と呼ばれます。
天体A,Bが公転しても、公転にあわせてラグランジュ点も移動するため、結果的にラグランジュ点の天体A,Bを基準とした相対的な位置は変わりません。
○太陽系内のラグランジュ点の具体例
太陽系においてもラグランジュ点は実在し、大きな意味を持っています。
特に話題に上がりやすいラグランジュ点をいくつか紹介します。
まず「太陽-地球系のL2」です。L2は地球から太陽の反対側に約150万kmの位置にあります。
太陽からみて地球より遠くにある物体は、通常は地球よりも長い公転周期を持ちますが、L2では同じ方向からの地球の重力も上乗せされるため、結果的に物体の公転周期は地球と等しくなります。
反対にL1では、太陽からのより強い重力を地球の重力で一部相殺されるため、こちらも結果的に公転周期が地球と等しくなります。
太陽-地球系のL2は、常に地球によって太陽からの放射物が遮られ、さらに地球からの距離も遠く、様々な影響を受けにくいため、遠方の宇宙空間を観測するのに非常に適していると言えます。
実際、今ホットなジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡もこの太陽-地球系のL2にて、厳密にはL2を周回するようなハロー軌道を描きながら観測を行っています。
続いて「太陽-木星系のトロヤ点(L4,L5)」も紹介します。
これらの点は木星とともに太陽の周りを公転します。
一般的にトロヤ点はL1,L2,L3よりも安定したラグランジュ点であり、ここに存在する天体は長期間にわたって安定した軌道を維持します。
太陽-木星系のトロヤ点には、現時点で合計1万個以上の小惑星(トロヤ群)が存在することがわかっています。
●「銀河系中心と太陽」の系のラグランジュ点を発見
2024年6月にアメリカの二人の研究者チームが公表した論文によると、銀河内を浮遊する惑星サイズの天体(自由浮遊惑星)を太陽の重力で拘束可能な点が、太陽から3.8光年も彼方にて発見されたようです。
このような点は2点あり、太陽を基準として一方は天の川銀河中心方向へ3.81光年彼方に、もう一方はその反対方向に3.81光年彼方にあります。
これは天の川銀河中心と太陽の系のラグランジュ点(L1,L2)と言えます。
相対的な速度が比較的遅い自由浮遊惑星がこの点に接近してきた場合、極めて長期間にわたってそれを捉えることができる可能性があります。
一般的に太陽の重力で拘束された天体が存在する領域を「太陽系」と呼びますが、今回の研究によれば、太陽系の果ては3.81光年も彼方に存在することになります。
○捉えられた天体のその後
自由浮遊惑星がこのようなラグランジュ点に進入した場合、天の川銀河中心部に対する公転周期が太陽と同期し、その状態を約1億年間保ちます。
その後数十億年かけて、太陽系の内部領域に侵入してくる可能性があるそうです。
木星サイズの自由浮遊惑星が侵入してきて、地球の公転軌道を乱し、生命にも多大な影響を与える可能性も否定はできません。
しかしそのようなことが起こる可能性は当然低く、仮にL1やL2に自由浮遊惑星が拘束されても、それらが必ずしも太陽系の内部領域に侵入してくるわけではありません。
なぜならこれらの点が存在する3.81光年彼方というのは、太陽系から最も近い恒星系ケンタウルス座α星(4.3光年)にかなり近いからです。
そのため捉えられた天体は、太陽系とケンタウルス座α星の両方の重力的な影響を受け、2星系間を行き来する可能性があります。
○L1,L2の天体は発見できるか?
自由浮遊惑星はほとんど光を発しないため、3.81光年も彼方にあるそのような天体を直接検出するのは非常に難しそうです。
しかし現在も進化し続ける最高性能の観測機器で自由浮遊惑星を優先的に探す領域として、今回のL1やL2は絶好の対象となるかもしれません。
なお今回の結果は太陽系が天の川銀河中心を円軌道で公転すると仮定し、かつ標準的なダークマターの理解を織り込んでシミュレーションを行って得られたものです。
より詳細な情報を織り込んださらに正確な分析により、今回お伝えした内容が変化する可能性が十分にあることにご注意ください。