民間人が兵士を集団で暴行…北朝鮮「風紀びん乱」の末期症状
北朝鮮の両江道(リャンガンド)で先月24日、兵士3人が民間人により集団暴行を受ける事件が発生した。
デイリーNKの現地情報筋によると3人は道内の三水(サムス)郡に駐屯する第10軍団の所属だ。彼らは27日の「戦勝節」(朝鮮戦争の休戦記念日)を前に物資調達に出かけた際、郡内の村で空腹のあまり豚肉を盗んだところを、安全部(警察)が組織した民間人の糾察隊(取り締まり班)に見つかった。
3人は抵抗したが、相手が悪かった。糾察隊の隊員5人は軍の特殊部隊出身で、3人を叩きのめし、郡の安全部に引き渡した。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為)
安全部は窃盗容疑で逮捕された兵士らの名前と階級、所属などはもちろん、村で窃盗行為を働いた背景に対しても調査を進め、所属部隊の担当指揮官を呼び、兵士らの身柄を引き渡したという。
北朝鮮は通常、国家的祝日や記念日の前後には全国に特別警備を指示し、この期間中にはいっさいの事件・事故の発生を許容しない。この期間に、国家や個人の財産を毀損したり盗んだりする行為を防止するために、各工場や企業所の従業員や労農赤衛兵、安全部糾察隊が動員される。
何より社会安全省(警察庁)は、各地の安全部と糾察隊員によるパトロールを強化し、異常な行為や危険動向を取り締まり統制することに努めるが、兵士が集団暴行に遭った今回の事件もその延長線で発生したわけだ。
両江道安全局(警察本部)は最近、特殊部隊出身の糾察隊員を大幅に増やし、国境封鎖や地域間移動の取り締まりに動員するなど、住民統制に活用しているとされる。
情報筋は「今回の暴行事件は兵士らの処遇がひどいことが背景にある」とし、「政府が記念日の特別配給に少しだけ神経を使っていれば、飢えた兵士たちが村で盗みを働くことも、糾察隊に暴行されることもなかっただろう」と話した。
一方、安全部の糾察隊員らが兵士に集団暴行を加えた事実が知られるとともに、暴行を受けた兵士らが所属する部隊と三水郡安全部との間には微妙な緊張感が漂っているという。