ボールに魔法をかける平野美宇 0.02秒のタイミング精度で振り抜くバックハンドで今夜決勝の舞台へ
東京五輪2020卓球女子団体準決勝、日本vs香港。平野美宇はダブルスとシングルスに出場し、いずれもストレートで勝利し、日本の決勝進出を決めた。
平野の試合で目を引いたのが、サービスを出す前に静止したとき、何かを語るように口が動いていたことだ。おそらく、注意点や気の持ち方を自分に言い聞かせていたのだろうが、その姿はあたかも、小さなボールを意のままに操る魔法の呪文を唱えているようだった。
その厳かな儀式が終わると一転、全身を使ってボールに回転をかけて送り出し、返ってきたボールの上がりっぱなを思いっきりバックハンドで振り抜く。2017年アジア選手権で中国選手3人をごぼう抜きで優勝して世界を驚愕させたバックハンドだ。
卓球台の近くで相手の攻撃ボールをその軌道を約45度で横切るように打つこの打法は、最大の回転がかかる反面、空振りのリスクが非常に大きい。スイングのタイミングは約0.02秒の誤差しか許されない(筆者の概算による)。
そうした人間能力の際でなされるプレーは、常人からはまさに魔法にしか見えない。しかしそれは魔法でも何でもない。リオ五輪でライバルの伊藤美誠がスポットライトを浴びて大活躍するのを暗い観客席から見つめた屈辱による努力の賜物なのだ。
そして平野は今夜、石川佳純も伊藤もリオで経験できなかった夢の決勝の舞台に彼女らと共に立つ。相手は陳夢、孫穎莎、王曼昱という〝全員レジェンド“のチームだ。
その大舞台で平野は、どんな魔法を見せてくれるのだろうか。